ティラノサウルスの先祖はアジアで生まれ、北米に渡ったとする研究結果が報告される

2025年5月18日(日)20時0分 カラパイア


ティラノサウルス Credit: Pedro Salas and Sergey Krasovskiy.


 白亜紀、現在の北米大陸にあたる地域の王者、最も有名な恐竜「ティラノサウルス・レックス」は、元々はアジアで誕生した可能性があるという。


 生まれはアジア、育ちは北米とでもいうべきこの新説は、国際的な研究チームが、ティラノサウルス類とメガラプトル類の分布パターンを解析して導かれたものだ。


 それによると、T・レックスの祖先は7000万年以上前、当時存在した陸橋を渡ってアジアから北米にたどり着き、北米の環境に応じて進化を遂げたという。


 またこの研究では、ティラノサウルス類やメガラプトル類があれほどの巨体になれた理由についても考察している。


 その背景には、9200万年に温暖化極大期のピークに達した気候がだんだんと寒冷化し始めたことがあるそうだ。


この研究は『Royal Society Open Science[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.242238]』(2025年5月7日付)に掲載された。


ティラノサウルス・レックスの先祖はどこ生まれ?


 今回の研究の中心人物であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのカシアス・モリソン氏はティラノサウルス・レックスの出身地を巡って、激しい論争が現在も繰り広げられているという。


T・レックスの地理的起源は激しい議論の的となっています。古生物学者の間では、その祖先がアジアから来たのか、それとも北米から来たのかで見解が分かれるのです(カシアス・モリソン氏)


 たとえば、ニューメキシコ州で発見されたT・レックスよりも3〜5百万年古い親戚の化石は、この頂点捕食者の起源が北米大陸にあるだろうことを示唆する証拠とされた。


 だが今回の研究では、この説に真っ向から反対している。モリソン氏らの説によると、T・レックスの祖先は、アジアから北米にやってきたのだという。



image credit:Pixabay


T・レックスはアジア出身であることを示す証拠


 モリソン氏らは、ティラノサウルス類とその近縁であるメガラプトル類の広がりを探るため、化石・系統樹・地理・気候に関連するデータを数理モデルで解析している。


 その結果わかったのは、メガラプトル類が約1億2000万年前にアジアで誕生し、その後ヨーロッパを経由して、現在のアフリカ・南アメリカ・南極のもととなったゴンドワナ大陸全域へ広がっただろうということだ。


 さらにT・レックスの祖先は、7000万年以上前に大陸同士をつないでいた陸橋を渡り、アジアから北米へとやってきたことも推測されている。この地で進化して誕生したのが、T・レックスということだ。



白亜紀の温暖化極大期(Cretaceous Thermal Maximum)以降における北半球と南半球の恐竜の進化を描いたイメージ/Credit: Pedro Salas and Sergey Krasovskiy


それぞれの地で独自の進化を遂げた巨大な捕食恐竜


 それぞれの地でティラノサウルス類とメガラプトル類は独自の進化を遂げた。


 ティラノサウルスの最大の武器はその強力な噛みつきであるが、メガラプトル類は人の身長ほどもあるの長い腕と最大35cmに達するツメだ。


 この進化の違いは、両者が獲物としていた動物に応じたものである可能性があるという。


 T・レックスが主に狙ったのは、トリケラトプス、エドモントサウルス、アンキロサウルスなどララミディア大陸(白亜紀後期に北米西部に存在した大陸)に生息していた恐竜たちだ。


その一方、メガラプトル類が狩っていたのは、ゴンドワナ大陸南部(現在の南米)に生息していた竜脚類だ。



メガラプトルの復元予想スケッチ図 Alexander Thomas Lovegrove[https://commons.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Alex.lovegrove&action=edit&redlink=1] / WIKI commons[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Megaraptor_namunhuaiquii.jpg] CC BY-SA 4.0


寒冷化とともに巨大化したティラノサウルスとメガラプトル


 興味深いのは、どちらのグループも白亜紀の温暖化極大期(Cretaceous Thermal Maximum)が9200万年前にピークに達した後、気候が冷えたのとほぼ同時期に巨大化が進んだことだ。


 このことは、それまで食物連鎖の頂点に君臨したカルカロドントサウルス科が絶滅したことで生じた生態学的な”空白”を埋めるようにして、両グループが進化したことを示唆しているという。


 たとえば、メガラプトル類がまだ進化の初期段階にあった1億2000万年前、彼らはさまざまな恐竜たちの中で特に目立つところない1種でしかなかった。だがゴンドワナ大陸が分裂すると、その環境に適応するために進化し、白亜紀末期には全長10mの巨体に進化している。


 それはティラノサウルスも同じで、T・レックスならばアフリカゾウに匹敵する9トンを超える巨体[https://karapaia.com/archives/52333772.html]があった。


 研究チームのチャーリー・シェーラー氏は、「彼らがあれほど巨大化したのは、9000万年前に絶滅したやはり巨大なカルカロドントサウルス類の生態的障壁が取り除かれたからでしょう」と述べている。


 またT・レックスやメガラプトル類は 羽毛や恒温動物に近い体のおかげで、寒冷な気候に適応しやすかった可能性もあるとのことだ。


 この研究は『Royal Society Open Science[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.242238]』(2025年5月7日付)に掲載された。


References: T. rex’s direct ancestor crossed from Asia to North America[https://www.ucl.ac.uk/news/2025/may/t-rexs-direct-ancestor-crossed-asia-north-america] / Rise of the king: Gondwanan origins and evolution of megaraptoran dinosaurs[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.242238]

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