不登校になる4つの理由を専門家が解説。卒業に関する「誤解」は意外と多い?「公立の小中学校なら、たとえ1日も通えなくても…」

2025年5月19日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

文部科学省によると、令和5年度の小・中学校における不登校児童生徒数は34万6,482人で過去最多となったそう。しかし、自身も不登校経験者である不登校ジャーナリスト・石井しこうさんは、「学校へ行っても行かなくても、結果的にはあまり関係ありませんでした」と語ります。そこで今回は石井さんの著書『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』から一部を抜粋しお届けします。

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不登校の理由は4つのケースに大別される


不登校の理由を、自分の言葉で語れるまでは「10年かかる」とも言われています。世間が思うほど不登校の理由は単純ではありません。

理由がわからないのは「モヤモヤする」という人のために「わからない」の中身を解説したいと思います。4つぐらいに大別されます。

ケース1 いじめを受けていたことが「恥ずかしくて言えない」場合。いじめを受けることは恥ではありませんが、暴力を受けると人は羞恥心を植えつけられてしまう。言葉にしようとしても羞恥心が邪魔をして言葉にしづらく、表面的な感情としては「自分でもわからないなあ」と思うようです。

ケース2 恐怖心によって「気持ちが感じとれない」か「物理的に思い出せない」という場合。教師からの叱責や同級生からいじめを受けた際、これ以上、心が傷つかないよう感情にフタをする場合があります。ケース1とも似ていますが、気持ちが感じとれない、あるいはその期間の記憶がないため言葉にすることができません。

「周囲に理解されない」「整理がつかない」


ケース3 「周囲に理解されない」と思っている場合。心に傷を受けたときほど、わがままだと思われるのではないかと本人は不安になります。周囲に理解される言葉が見つからない、自分の気持ちを説明できる言葉が見つからないと思うと、「自分でもよくわからないんだ」と感じるようです。

ケース4 複雑に絡み合った不登校理由に「整理がつかない」という場合。不登校は、学校、勉強、友人関係、特性など、いろんなことが重なって起きます。それらを紐解くことが難しく「わからない(解読できない)」と感じることもあります。

子どもたちが、短い言葉で心境を説明すると、すべて「わからない」になることも。

4つのケースのいくつかが絡み合っている人もいました。では、この「モヤモヤした気持ち」はどうすればいいのか。私はムリに言葉にする必要はないと思うのです。説明も相手が納得しそうな言葉で、適当にすませていいのです。

語りたくなったら、自分が信頼できる人に、自分のタイミングで語る。急がなくていいのです。

しこうポイント!
ムリに言葉にしなくてもいい

こんなに学校に行っていない自分が、卒業できるか心配です


結論から言います。あなたが不登校をしてから、かつ卒業したい気持ちがあり、公立の小中学校に在籍しているなら、学校へ1日も通わずとも校長判断で卒業することができます。通わなくても卒業できる、私が不登校になってから一番、驚いたことでした。「そんなに大事なことは先に言ってくれよ!」と強く思ったものです。なので、もう一度言います。

公立の小・中学校は、1日も通わずに「校長判断」で卒業できます。


(写真提供:Photo AC)

実際に私も中学3年間はまるまる1年間、授業を受けずに卒業しました。取材したなかでは、小学校に数回通っただけで卒業し、中学校は1度も通わず卒業した人はたくさんいました。

では、学校へ行かずになぜ卒業できるのか。理由は不登校の子にも進学する権利を保障する必要があるからです。校長先生は生徒の卒業を認めず「除籍」することもできます。しかし除籍した場合、その生徒は中学・高校への進学が困難になります。たまたま学校に合わなかったことを理由に、新たな学びの機会までは奪ってはいけない、というのが「1日も通わずに卒業できる理由」なのです。

卒業式に関する誤解はたくさんある


なお「1日も通わずに卒業できる」という事実を知らない大人は大勢います。卒業するためには「出席日数が必要だ」「ある程度、勉強する必要がある」などと言う人もいますが、それはまちがいです。

また卒業式に関する誤解はたくさんあります。まず卒業証書。この証書というのは儀式用の書類であり、とくに意味はありません。卒業証書を「親が受け取る」「郵送で受け取る」「受け取らない」、どの方法でも、卒業自体は揺らぎません。

法的には校長が卒業を認めれば、卒業とみなされます。卒業式に出るか出ないか、卒業アルバムに載るか否かも自分で決めて大丈夫です。

ただ残念なことに、授業やテストを受けないと「卒業させないぞ」とすごむ校長先生や学校が存在します。こういった場合は、弁護士会がやっている無料電話相談「子どもの人権110番(東京弁護士会 03・3503・0110)」に連絡してみてください。きっと解決できるはずです。

ちなみに東京都や岐阜県は公立高校の入試で内申書の「欠席の記録」欄を廃止しました。欠席による差別をなくすためです。出席日数で左右されない教育制度を大人たちも作ろうとしています。

しこうポイント!
公立の小・中学校は、1日も通わずに「校長判断」で卒業できます

※本稿は、『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』(大和書房)の一部を再編集したものです。

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