まるで絵本の中の出来事だ... ポストに届いた本物の「葉書」が話題に→差出人に話を聞いた

2021年5月20日(木)20時0分 Jタウンネット

「ポストに葉っぱが入っていた」

そんな絵本のようなシチュエーションが、ツイッターで話題となっている。

これは、慶應義塾大学環境情報学部の石川初教授による、2021年5月13日のツイートだ。

ポストに「葉っぱ」が入っていた、という石川教授。それも、風で舞い込んでしまった落ち葉......というわけではない。

葉っぱには切手が貼られ、消印まで押してある。

つまり、この葉っぱは郵便物として、石川教授のもとに届けられたということだ。

この投稿に、ツイッターでは

「送り主は、狸か狐ですな」
「えっトトロ?」
「コレがホントの『葉書』」
「何これ素敵過ぎる」
「すごい こんなことできるんや」

といった反応が寄せられている。

この「葉書」は一体何なのだろう。Jタウンネット記者が取材した。

学生5人で実施

実はこの葉っぱの「葉書」は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(藤沢市)で石川教授が担当する授業「SBC入門」に参加する学生たちが用意したもの。

この授業は「新たなキャンパスの計画、デザイン、運営を自分たちの力でつくること」を目的としたもので、SBCとはStudent Built Campusの頭文字。その中で行われた「たらようの木プロジェクト」の一環で、この葉っぱの葉書が石川教授宛に送られた。

Jタウンネット記者は、同プロジェクトを企画・実施している総合政策学部3年の北村 理紗さん(21)を取材し、詳しい話を聞いた。

「たらようの木プロジェクト」は、キャンパスの一角にある「βヴィレッジ」という施設を創造的に使うことを課題としたグループワークの中で生まれた。

メンバーは北村さんの他、2年生3人、1年生1人の計5人。

「SBCを、関わる人たちの心の拠り所にしたい」

と考え、SBCの象徴として「多羅葉」の木をキャンパス内に植えようと計画している。多羅葉は葉に文字を書くことができ、葉書の語源になったと言われる木だ。

このプロジェクトを企画した経緯について、北村さんは、以下のように語った。

「SBC内には、OB・OG棟があったり、マイゼミと呼ばれる卒業生によるゼミがあったりと、現役生、卒業生、教職員がSBCを通じてゆるくつながっています。
一方で、コロナウイルスの影響で人が出入りしにくくなったり、学生に広く知られていないことが原因なのか、人気(ひとけ)がなかったりしています。
そこで私たちは、多羅葉の木を育ててSBCの象徴を作り、人々が葉っぱを使って自分の想いを表現する機会を設けることで、より多くの人がSBCを訪れたり、愛着を持ったりするのではないかと考えました。ここには、SBCに関わる人みんなで『守るもの』を、そして世代を超えた関わりを作りたいという思いがありました」

自分の思いを表現する機会として、葉っぱを実際に手紙として使い、キャンパス内で保管しておくそう。人々は、自分が書きたい相手・年(未来)に向けて自由にメッセージを書くことができる、という想定だ。

今回話題になった石川教授に届いた「葉っぱ」は、プロジェクトを実施するにあたって、本当に届くのか、どのくらい持つのか、等の実験のために送られたもの。

他にも、同講義の受講者や教員、計6人に葉っぱの葉書を送ったとのことだった。

葉っぱに字を書くのには、なんと針を使用したとのこと。

「多羅葉の葉は、葉っぱに傷をつけると、時間差で傷跡が黒く浮かび上がってくる特徴があります。その特徴を利用して、針で文字を書きました」(北村さん)

大変だったのは「多羅葉」の葉の入手

葉っぱを葉書として送るという今回の実験には、いろいろと大変なことがあったという。北村さんは

「まず、多羅葉の葉を入手することが大変でした」

と話す。

「インターネットで、神社に生えていることが多いとの情報が書かれていたので、キャンパス付近の寺院を探しましたが、見当たりませんでした。また、周辺の植木屋さんにも問い合わせたのですが、販売していませんでした。そのため、ひとまずメルカリで購入し、実験用として使用しました。その後問い合わせた所の知り合いの方が多羅葉の木を保有しているとの連絡をいただくことができました」(北村さん)

実験を行って印象的だったのは、石川教授のように多羅葉の葉を受け取った人たちから「嬉しい」というコメントがあったこと。

「授業内で数回プロジェクトについての発表をしたのですが、回を重ねるごとに受講生や先生方の多くがこのプロジェクトのことを楽しみにしてくださっていて、自分も葉書を送りたいとの声がとても多くありました」(北村さん)

今回の実験についてはインターネットで調べ、すでに送ったことがある人の経験談を参考に、葉っぱに切手を貼ってポストに投函。しかし、今回送った葉が郵便局指定の最小サイズが14センチ×9センチ以下であり、この方法ではダメだったということを、送付後にツイッターのコメントを見て知ったという。

「郵便局の便宜で届けてくださったことが分かり、感謝の気持ちと、気づかずに送ったことを申し訳なく思っております」(北村さん)

今後は問題なく送れるよう、様々な工夫を検討しているそうだ。

実験の結果として、正しい送り方や、葉を長持ちさせる加工方法がわかった。プロジェクトの今後としては、

「私たちだけではなく、他の人たちも出せるように葉を集めつつ、木を育てる準備をしていきます。
また、学校内にポストを作って学生がいつでも手紙を送ることができるようにしたり、木の周りに手紙を飾る押し花を作るための花を植える『フワラープロジェクト』のイベントを開催しようと考えています。
そしてこのような活動を続けることで、地域の方とのコミュニティを作っていくことができたらと思っています」

と北村さん。

石川教授に「たらようの葉書」が届いたというツイートには、18日夕時点で10万を超えるいいねが寄せられるなど大きな話題となっている。こういった反響については

「私たち自身も最初は葉っぱに文字が書けること、そしてそれを実際に送れることを発見した時には大変驚きました。しかし、ここまで多くの方からの反響があるとは予想外でした。
多様な方々からの多くのコメントを拝見し、新たなアイデアを得ることができたり、改善すべき点を発見したりしました。
何より、多くの人が興味を持つということがわかり、企画の実施に対してのモチベーションがより一層増しました」

とコメントした。

Jタウンネット

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