感染症対策の国際ルール「パンデミック条約」、WHO総会で採択…アメリカは欠席
2025年5月20日(火)19時15分 読売新聞
ジュネーブで開かれたWHOの総会であいさつするテドロス事務局長(19日)=AP
【ジュネーブ=船越翔】感染症対策の新たな国際ルールとなる「パンデミック条約」が20日、ジュネーブで開かれた世界保健機関(WHO)の年次総会で採択された。新型コロナウイルスの感染拡大の教訓を基に、医薬品の配分など国際連携の強化を盛り込んだ。条約の詳細な制度設計を進め、各国は発効に向けた署名や批准などの手続きに入る。
20日午前、総会に参加したWHO加盟国が全会一致で採択した。今年1月にWHOからの脱退を表明した米国は欠席した。WHOの条約策定は、2003年に採択された「たばこ規制枠組み条約」以来となる。
条約は感染者が7億7000万人を超えた新型コロナ禍を踏まえ、WHO加盟国が22年から策定に向けた議論を続けてきた。各国に世界的な感染症流行の防止に向けた計画を策定するよう求め、途上国に対して医薬品の製造技術やノウハウの移転を進めることを明記した。
感染症対策に関する研究成果の共有やワクチンなどの予防接種の強化のほか、製薬企業が病原体のサンプルや遺伝情報などを迅速に手に入れる見返りとして、開発した医薬品の一部をWHOに提供する仕組みも導入する。
条約の採択を受け、WHOは条約の運用方法などの検討を本格化させる。ただ、製薬企業の条約への参加条件など議論が進んでいない項目も残っており、専門家からは条約が発効するまでには数年かかるとの見方も出ている。