「AIロボットが日本人科学者29人を殺害」!? 2018年に世界が騙されたフェイクニュース5選

2019年2月12日(火)12時0分 tocana

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 ここ数年、「フェイクニュース(偽ニュース)」という言葉を実によく耳にする。科学誌「Science」に発表されたMIT(米マサチューセッツ工科大学)の研究によると、Twitter上では「嘘は真実よりも早く、広範囲に広がる」という。


 真実は1,000人以上にはなかなか届かないが、フェイクニュースの場合、拡散度合いが早いものは、1,000人に広がればあっという間に10万人もの人々に届くらしい。虚偽のニュースには、政治的な意図を持って拡散されたものが多いが、ここでは、硬軟取り揃えて、2018年の話題を中心にフェイクニュースを見てみたい。


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1.「災難は終わった。慌ただしくホワイトハウスを去るトランプ」


 これはごく最近のフェイクニュースだ。


 2019年1月、偽りの「ワシントン・ポスト」紙が作られ、ホワイトハウスのある米ワシントンD.C.の中心地で配布された。また同時に、偽ワシントン・ポストの電子版「My-Washingtonpost.com」も立ち上げられ、トランプ退陣のニュースを報じた。


 ほとんどのメディア関係者は、これがフェイクニュースだとすぐわかり、本物の「ワシントン・ポスト」紙も声明でこのニュースを打ち消した。しかし、偽新聞読者の一部が、トランプ退陣を信じて大喜びし、SNSでこのニュースを拡散した。


 奇妙なことに、この偽新聞を作成したグループは、新聞の日付を2019年5月1日付としていた。そしてこの偽新聞には、「架空の『ワシントン・ポスト』紙による今後起きる出来事の不気味な予測」というタイトルの記事も含まれていた。この手の込んだフェイクニュースを作り出したのは、作家のオンネシャ・ロイチュッドフリ、L.A.カウフマン、および「トリックスター活動家」のイエス・メンだと伝えられている。


2.「テロ組織ISは、バラク・オバマが設立した」


 これは、大統領選挙戦の時にトランプ陣営が拡散した代表的なフェイクニュースなのだが、いまだに多くの人がこの情報を信じている。この噂の始まりは、トランプがある演説で、「ISISはオバマ氏に敬意を抱いている。オバマ氏こそISISの創設者だ」と述べ、ニュース専門局米CNBCのテレビ番組でも「オバマ氏は間違いなくISISの創設者だ」という発言があったと言われている。


 また類似のフェイクニュースには「オバマはケニア国籍のイスラム教徒だ」というものがあり、これは2008年の民主党予備選挙でオバマ陣営を不利にするためにばら撒かれたとされている。本件は、いったん拡散したフェイクニュースの訂正がいかに難しいかを示す典型例だ。2018年時点でも、アメリカ人の中には、オバマは外国生まれのイスラム教徒だと固く信じている人々が存在する(ちなみにオバマ大統領は米・ハワイ生まれのキリスト教徒)。


 当初オバマは、この類のフェイクニュースには対応しない姿勢であったが、あまりにも多くの米国国民がこの情報を信じてしまったことから、ついにハワイでの出生証明書を公開するに至った。


3.「米国のファーストレディ、メラニア・トランプには替え玉がいる」


「メラニア・トランプ替え玉説」は当初、冗談としてネット上で拡散された。しかし、それはすぐに本格的な陰謀論へと転化した。


 この「偽メラニア・トランプ」を最初に広めたのは、アンドレア・バートンというフェイスブックユーザーである。バートンは最初の投稿で、900万を超えるビューを記録した。


 噂を広めた人々は、この主張をより説得力のあるものにするために、意図的にボケたり、歪んだりしたメラニア・トランプのビデオや写真を使った。しかし、これらの画像が実際にメラニア・トランプであることは簡単に検証され、替え玉説は明確に否定されている。


4.「4台のAIロボットが日本人科学者を29人殺害した」


 これは日本ではほとんど報じられなかったが、米国では今でも信じている人がいるというフェイクニュースである。


 2018年12月、ソーシャルメディアのユーザーは「AIロボットが日本で29人の科学者を殺した」とのニュースを短いビデオと共に拡散し始めた。このビデオは、2018年2月、環境問題研究者かつUFO研究者のリンダ・モールトン・ハウが、ロサンゼルスで行ったプレゼンテーションである。ハウはそのプレゼンテーションで、主にAIの危険性、そしてエイリアンとの遭遇、アブダクションについて語った。


 そして、ハウはプレゼンテーションの初めにこう述べている。「今週、日本のトップのロボット企業で、軍用に開発されている4台のロボットが研究室で29人の人間を殺す事件がありました。恐ろしいことには、ラボの作業員が2台のロボットを停止させて3台目のロボットを分解したが、4台目が自分自身を復元し始めたことです」。そしてハウはこう続けた。


「このニュースは決して公にはならないでしょう。これを公表することで、ロボティクス企業は多くのものを失うし、何より日本政府がAIロボットの兵士を欲しがっているからです」


 ハウはその情報の出所、殺人があった研究室の名前、殺害された科学者の名前を特定しなかったが、この情報は米国のSF愛好者間で一気に拡散した。しかし、その裏を取る者は誰もいなかった。このニュースはハウがプレゼンテーションで、聴衆の興味をつかむために使ったフェイクニュースだった可能性も否定できない。


5.「トランプ大統領は米国民にチャイニーズ・レストランをボイコットするようにツイッターで呼びかけた」


 2019年1月9日、宗教関係のニュースを主に扱っているオンラインメディアの「Patheos」は、トランプ大統領が米中の貿易戦争について述べたカンファレンスで、アメリカ人に中華料理店のボイコットをするようツイッターで促したという記事を掲載した。内容は「アメリカ人は、中華レストランでテイクアウトを頼むことをやめなければいけない。また中華料理店では、金を払わずに立ち去れ」というものである。


 しかし、この記事は本当のニュースではなく、事実、トランプ大統領もそのような内容のツイートはしていなかった。上で表示されているトランプのツイートは偽物で、オンラインで入手できる「偽ツイッター作成アプリ」を使った可能性があるという。


「Patheos」は一般的に宗教や霊性について語る“真面目な”メディアであるが、コンテンツには風刺的なブログもあり、この記事はブログとして掲載されていたという。しかし、これがツイートされるや、あまりにも“あり得そう”な話だったことから、冗談とは受け取られず、真実として拡散されてしまったようだ。これが冗談でなく、本気と受け取られたのもトランプの“人徳”なのかもしれない。
(文=三橋ココ)


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