古くて新しいめまい「PPPD」とは?「3カ月以上慢性的に続く」「耳の病気との関連性」専門医が解説!

2024年5月22日(水)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

厚生労働省が行った「令和4年 国民生活基礎調査」によると、人口1000人あたり20.3人が「めまい」の症状を訴えているそう。ストレス社会の現代では、「体がフワフワするめまい」に悩まされる人が増加しています。川越耳科学クリニック院長・坂田英明先生と、めまい相談医・神崎晶先生は、「フワフワするめまい」に悩む患者さんを数多く治療してきました。今回は、お二人が「めまい」を撃退する方法をまとめた著書『フワフワするめまいを治す最強の食事術 名医が教える新しいめまい撃退法』より、一部お届けします。

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古くて新しい病気である


フワフワめまいという病気・症状があることは、昔から、多くの耳鼻咽喉科の医師が認識していました。

また、この100年の間に、研究者から慢性浮動性めまいを「症候群」(原因は不明だが、いくつかの症状が必ず現れるとき、病名に準じて使う医学用語)として見なそうという提案もされてきました。

例えば、私の父である坂田英治(えいじ)が、フワフワめまいを「仮性ダンディ症候群」として症候群として扱うことを提案しています(1985)。

ただ、それを1つのまとまった病気の概念として捉えようという、学会としての大きな動きはほとんどありませんでした。

そこに、大きな変化が起こりました。

2017年のことです。

めまいの国際学会であるBarany学会から、慢性めまいの原因として、「PPPD(Persistent Postural-Perceptual Dizziness:持続性知覚性姿勢誘発めまい)」という新しい病気の概念が提案されたのです。

PPPDの診断基準


PPPDの診断基準も提案されています。その主なポイントをわかりやすく示してみましょう。

めまいの主な症状は?
・フワフワする感じがある
・足元がゆらぐような不安定な感じ
・自分自身、あるいは外界が揺らぐ感覚(ただし、グルグル回らない)など

めまいの頻度は?
・3カ月以上慢性的に続く
・ほぼ毎日、もしくは月の半分以上は起こる
・午前中はよいが、夕方になると悪化する

どんなときにめまいが起こるか
・立っているときや歩いているとき
・電車や車などの乗車中やエレベーターやエスカレーターに乗っているとき
・人混みで押されたとき
・人混みで、行き交う人や往来する車などの動いているものを見ているとき
・テレビやパソコンなどで複雑な視覚パターンを見たときなど

ほかの病気との関連(以下のような病気になったことがある)
・耳の病気(メニエール病など)
・内科的な病気(糖尿病、高血圧、不整脈、脳や胃の病気など)
・うつや不安症がある
*PPPDは、先行した病気があり、それに続いて起こることがあるとされています

フワフワめまいの背景因子と考えられるもの
・両側内耳の異常
・脳血管障害の後遺症
・うつ、不眠、不安
・脊椎の異常
・自律神経の異常
・フレイル(サルコペニア、ロコモティブシンドローム)

このようなPPPDの特徴と、自分のめまいを照らし合わせてみましょう。

症状が合致するようなら、PPPDの可能性があることになります。

ほかのめまいが先行、併発することも


ただし、PPPDについては、耳鼻咽喉科の現在の検査手段によってこの病気と確定診断する方法はありません。

そうした意味でも、この病気は捉えにくいのです。


(写真提供:Photo AC)

しかも、PPPDの特徴の1つとしても挙げられていますが、ほかのめまい(メニエール病や良性発作性頭位めまい症など)が先行して起こったり、あるいは同時に併発することがあったりして、その点も手ごわいのです。

こうした特徴があるからこそ、耳鼻咽喉科での診断・検査が重要になるといってもよいでしょう。

先行、もしくは併発しているめまいの病気がある場合、そちらの治療もしっかり行う必要があります。

また、PPPDでは、うつなどの心因性の原因についても目配りがなされています。

つまり、検査によって、心因性の要因が大きく関わっていることが判明した場合、精神科的な治療を行うことが求められることになります。

新しく提案された病気


PPPDは、新しく提案された病気です。現在の段階では、確定診断する方法がないだけではなく、これという確立された治療法もまだありません。

多くの耳鼻科医がいろいろな治療法を併用することで、フワフワめまいの症状を改善へ導こうとしています。

そうした多くの治療手段の1つとして、自律神経に対するアプローチは、フワフワめまいの改善法として有効です。

また、PPPDに心因性の要因が関わっているケースでも、自律神経を整える方法は試す価値があります。

なぜなら、ストレスや過労、生活習慣の要因などによって自律神経が乱れると、自律神経失調の症状として、うつ状態が起こってくるケースがしばしばあるからです。

言い換えれば、食事を中心とした生活習慣の改善によって自律神経を整え、その乱れた自律神経のバランスが回復すれば、症状としてのうつ、そしてそこから生じるフワフワめまいもよくなっていく可能性があります。

これは、心因性以外に原因があって、フワフワめまいが起こっている場合にも当てはまります。

例えば、生活習慣の1つ(栄養不良、亜鉛不足によって)がフワフワめまいと密接に関連している場合でも、自律神経の調整のため生活習慣を変えていくことが、いい影響を与えることは改めていうまでもありません。

※本稿は、『フワフワするめまいを治す最強の食事術 名医が教える新しいめまい撃退法』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

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