<老健>の入所以外のサービスとは。訪問リハビリやショートステイで在宅生活の拠点にも…専門家「介護疲れが起きる前に利用を考えて」

2025年5月30日(金)6時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

厚生労働省が公表した「介護職員数の推移」によると、2023年度の要介護(支援)認定者数は705万人で、年々増加傾向にあります。そんななか、「介護者の人生を優先してほしい。そして在宅介護に困ったら、施設に入れることに罪悪感を持たないでほしい、入所をためらわないでほしい」と話すのは、介護老人保健施設に勤める医師・田口真子さん。今回は、田口さんの著書『最高の介護 介護のお医者さんが教える満点介護!』から一部を抜粋しお届けします。

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どうして老健は認知度が低いのか?


こんな素晴らしい施設、しかも介護保険で多くの人は1割負担で利用できる施設なのに、ケアマネによってはまったくすすめず、老人ホームのガイド本にも登場しない、そのわけは「終身の施設ではない」ことにあります。

ただし、病院の入院期限と老健の入所期限はまったく違います。病院ではすべての人に入院期限に退院、もしくは転院してもらわないと経営が成り立ちませんが、多くの老健では一部の人が家に帰ってくれればいい仕組みになっています。

つまりAさんが1月に入所したとします。多くの人が3ヵ月後の4月に退所しなければならないと思いがちですが、実際にはAさんではない誰か1名が退所すればよく、数の折り合いがついていればいいのです。

老健は3ヵ月と言われますが、必ずしも3ヵ月で退所というわけではなく、何年も利用している人、結果的に看取りになる人もたくさんいらっしゃいます。

老健を待機場所として使ってみるのも手


「次の施設(特養)」が空くのを待つ、待機期間として老健に長期間滞在できる場合もあるので、入所時に相談してみてください。

高齢の親を老人ホームに入れると考えた時、できれば一度で決めてしまいたい、また次の施設を考えるのは面倒だと最初から終身の施設に入ってほしい気持ちはわかります。しかし、一度老健に入所し、リハビリをして体調を整えてもらいながら、その間にゆっくり次の施設を探すという選択肢は一考の価値があります。

また、老人ホームにもいろいろな種類があります。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、介護付き有料老人ホーム、グループホームなど。

体の具合、認知症の程度によって親にどんな種類の施設が合っているか老健に相談できるのも老健入所のメリットです。何より老健は比較的短期間で空きが出て入所できることが多いです。特養を待って在宅介護に疲れ果てるより、ぜひ老健を考えてみてくださいね(要介護1から入所できます!)。

老健を在宅生活の拠点として使う場合


多くの老健は、入所以外のサービスを行っています。老健における在宅サービスの中心となるのはデイケアです。一般的に「デイ」という通いのサービスにはデイサービスとデイケアの2種類があります。

【デイケア】主に老健や病院、クリニックが提供。デイケアでは医者とリハビリ専門職の配置義務があります。料金はデイサービスに比べて高くなります。

【デイサービス】運営している施設はさまざま。医師やリハビリ専門職の配置義務はありません。半日のみ、リハビリ特化型、手芸などの趣味に強い、散歩など外出を頻繁に行う、夕食まで出すなど、各施設特徴がありバラエティ豊かです。


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

*デイケアは高い割には、リハビリ中心で、レクリエーションもあまりなく、顧客サービス意識が不十分な所も多いのが現状です。そのため多くの人はデイサービスを選びがちですが、将来を考えて、ぜひ週に1日はデイケアも組み込んでください(デイサービスとデイケアは併用可能です)。

【デイの申し込み方法】要支援1以上の人が利用できます。居宅ケアマネを通じての申し込みが必要です。

訪問リハビリやショートステイも


【老健のその他のサービス】ショートステイ、訪問リハビリ。施設によっては訪問介護や訪問看護ステーションを持っている老健もあります。

〈訪問リハビリ〉リハビリ専門職員が自宅での介護の方法や福祉用具の選定のアドバイスを行います。さらに家のどの部分に手すりをつければいいか、ポータブルトイレの位置はどこがいいかなど個別に細かい相談もできます。

〈ショートステイ〉短期間、特養や老健などの施設に宿泊し、介護を受けるサービスです。要支援1以上の人が1泊から29泊まで利用することができます。居宅ケアマネを通じての申し込みが必要です。ちなみに特養のショートステイには通常リハビリはついていません。

同じ老健施設でショートステイ、デイ、訪問リハビリを利用すれば、同じリハビリスタッフがトータルにリハビリを見ることができ、他職種との連携もスムーズです。急に介護者が体調を崩したり用事ができたりして在宅介護できなくなった時に、スムーズに対応してもらえます。できるだけ長く在宅生活が維持できるよう、介護疲れが起きる前に、これらのサービスをうまく使ってリフレッシュしていただきたいです。

※本稿は、『最高の介護 介護のお医者さんが教える満点介護!』(講談社)の一部を再編集したものです。

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