「あだ名禁止」への違和感 いじめはなくなる? 現場の先生の実感は......
2022年6月25日(土)0時11分 キャリコネニュース
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「あだ名」を禁止する学校が増えつつあるようです。「嫌なあだ名」で傷つく被害を食い止めるのは当然ですが、中には「親しみを込めた」あだ名もあります。一律禁止で良いのでしょうか? 現場の先生たちにも意見を聞きつつ、考えてみました。(文:プロ家庭教師・妻鹿潤)
侮蔑的なあだ名は「もちろんダメ」
さて大前提として、個人の身体的な特徴をあげつらうなど、他の児童・生徒をバカにするような「あだ名」は不適切です。本人が嫌がるようなあだ名で、他人を呼ぶこと自体が「いじめ」と言っていいでしょう。
しかし、「侮蔑的なあだ名」で呼ぶことが、いじめの全てではありません。ピンポイントでそこだけ禁止しても、どこまで効果が上がるかは未知数です。学校の先生たちに「あだ名を禁止すればいじめはなくなると思う?」と聞いてみたところ、「なくなると思う」と明言した先生はいませんでした。
一方で、すべてのあだ名に侮辱的な意味が込められているわけではありません。あだ名を全て禁止すれば、親しみを込めて山本さんを「山ちゃん」と呼ぶようなことも禁止になります。
「いじめはダメ」「クラスメイトをバカにしてはいけない」と教えるために、「あだ名を全部禁止」というのは、目的と手段が釣り合っていない感じがします。
むしろ、生徒が侮辱的なあだ名を付けられて困っていたら、その呼び名をやめさせると同時に、それをきっかけにして、子どもたち自身に「なぜ侮辱的なあだ名を付けてはいけないのか」を考えてもらう方が教育になるのではないかと思います。
現場に余裕がなさすぎる
ただ、問題は、こうした議論をするためには、手間暇がかかることです。最近は学校の先生の忙しさが知られるようになってきましたが、今の先生にはこうした問題に1つ1つ対応する余裕がありません。そこで、手っ取り早くあだ名を禁止するという学校が増えてきているのです。
今回、意見を聞いた先生たちは、あだ名の一律禁止に違和感を覚えても、禁止派の先生から「そうでもしないと手が回らない」「トラブルが減るならそれで良い」と言われると、なかなか反論できないと話していました。
結局のところ、一番の問題点は、いじめの本質的な問題点をじっくり話し合う余裕が教育現場に欠けていることではないでしょうか。もちろん社会が多様化・高度化していく中、「義務教育という限られた時間内に何を教えるべきか」は、かなり難しい問題になっています。しかし、いい大人がSNSで罵詈雑言を書きちらしているのを目にするたび、子どもたちに考えるチャンスを与えておいたほうがいいのでは、と思っています。
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近影
【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアアドバイザー・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40〜50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアアドバイザーとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。