東京で死ぬまでに一度は食べたい『室町砂場』の元祖「天ざる」の魅力とは?

2023年8月4日(金)10時50分 食楽web


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●日本橋の『室町砂場』といえば、「天ざる」「天もり」発祥の店として知られる東京を代表する老舗蕎麦店。今回は、こちらの名物を実食。一度は食べてみたい老舗の蕎麦の魅力をご紹介します。

『藪』、『更科』と並ぶ江戸前の三大蕎麦の一角を成す系譜『砂場』。日本橋に店を構える1869(明治2)年創業の老舗『室町砂場』もその一つです。暑い日が続くと、冷たいそば×天ぷらでおなじみ「天ざる」をつい頼みたくなる、という人も多いと思いますが、何を隠そう、こちらが「天ざる」の発祥店なのです。

 天ざるの提供を始めたのは戦後、1945(昭和20)年ごろ。その前から温かい天ぷらそばを提供する店はあったそうですが、天ぷらが入った温かい汁+冷たいおそばという、いわゆる「つけ麺」の形態で提供したのはここが初めて。その後、これをまねて、同じく「つけ麺」の形態や、一品料理の天ぷらと冷たいせいろそばをセットのように提供する店が増えたいったそうです。


JR神田駅、またはJR新日本橋駅、東京メトロ三越前駅から徒歩3分と好立地にある。「砂場」と掲げられた看板や店先の柳が風情たっぷり

 暑い夏でも天ぷらそばを食べやすくしよう、とこの形になったそうで、当初はまかないだったものを、あまりの美味しさに「商品として提供しては?」ということで始めたのがきっかけだそう。今回は、その元祖「天ざる」をしかと堪能してきたので、その魅力をご紹介していきましょう。

おすすめは「天ざる」+「もり」の食べ比べ!


席数は1〜2階あわせて100席。個室もあります

 初めて訪れる人は、「天ざると天もり、どちらを注文するか」で迷うと思います。そもそも「ざるそば」と「もりそば」の違いをご存知でしょうか? 恥ずかしながら筆者は海苔がのっているか、いないかだけの違いかと思っていました。確かに今はそういうおそば屋さんもあるのですが……。


メニューには「別製ざる」「もり」「天ざる」「天もり」などが並ぶ

 歴史をさかのぼると、まず、つけ汁につけて食べる「もりそば」が誕生。ところがお椀にそばを盛って出すと、お椀の底に水がたまりそばが水っぽくなってしまうため、ざるに盛った「ざるそば」が後から生まれました。

 その後、「ざるそば」は「もりそば」と差別化し、海苔をのせたりそば汁を変えたりといった工夫がなされ、高級化をはかる店も出てきたんだそうです。


「天ざる」と「もり」を注文しました。冷たいそばとあたたかい汁、熱々のかき揚げの組み合わせ

『室町砂場』では、「ざる」は、そばの芯だけを挽いた更科粉を卵でつないで製造。「もり」は、挽きぐるみ粉(一番粉から三番粉まですべてを挽いた粉)などのそば粉8に対してつなぎの小麦粉を2加えた、いわゆる二八そば。創業時から変わらずこの2種類のそばを提供しています。

 そんなわけで、その両方の蕎麦を味わって見るべく、今回は「天ざる」(1870円)と「もり」(770円)を注文。冷たいそばとあたたかい汁、熱々のかき揚げの組み合わせです。

 画像を見ていただければわかる通り、色でその差は一目瞭然。手前の淡い色が「ざる」、奥のいわゆるそばの色をしているのが「もり」です。


パッと見で色の違いがわかりますね。手前の淡い色が「ざる」、奥のいわゆるそばの色をしているのが「もり」です

 まず「ざる」をいただいてみると…これがスゴいのひと言! なめらかなのどごし、ほんのりとした甘みがなんとも上品! 一口すすり、二口すすり、「そばが本気を出したらこんな境地にたどり着くのか…」と謎の感動が押し寄せてきて、思わずかき揚げをいただくのを忘れそうになってしまいました。


淡い色合いの見た目からしてもう美しいんです!

 お椀に入った天ぷらも、もちろん絶品。芝エビなどの小エビと、アオヤギやホタテの貝柱のかき揚げ。三つ葉がたっぷりと添えられています。


サクサクのかき揚げがジュワ〜ッと染み込んで実に美味

 エビと貝柱の旨味が甘めの汁とよく合います。サクサクのかき揚げにつゆがジュワ〜ッと染み込んでいくんですが、このサクジュワ〜のバランスがたまらない!

 次に「もり」をいただいてみます。おおっ、こちらはまさしく「そば!」という感覚。そば粉の滋味豊かな味わい深さを堪能できます。ウマすぎて蕎麦を手繰る手が止まりません。


そば粉の香り、味わいを堪能できる、もり。こちらもすごいわ!

 好みにもよると思いますが、せっかくなら両方注文して食べ比べしてみてください。それぞれ特徴が際立っていて、それぞれ異なる美味しさが感じられるので、ペロッといけちゃいますよ。

 そば汁は本枯鰹節と濃口しょうゆを使った江戸前。最近は鰹節に昆布を加える店も増えていますが、『室町砂場』では、濃口しょうゆの豊かな旨味を邪魔しないよう、鰹の風味を足すだけの昔ながらの製法を守っているそうです。

デザートには「そばぜんざい」でそばづくし!


添えられているのはしその実の塩漬け。この塩気がいい仕事をしてくれます

 そばを堪能した後は、デザートに「そばぜんざい」(850円)はいかがでしょうか。そば屋さんですが、あんこはちゃんと自家製。北海道産大納言を仕入れて手作りしている逸品です。

「ざるそば」の上にたっぷりと熱々のこしあんがかけられています。そのままいただくなり、混ぜるなり、しその実の塩漬けを薬味としてかけるなり、食べ方はご自由にどうぞ!


こしあんから湯気がモワッと立ち上り、そばと絡み合う。

 こしあんは塩を加えたり、甘みを抑えたりせず、しっかりとした甘さがあります。どことなく懐かしさを感じるあんです。細いそばによく絡みます。

 5代目代表取締役の村松毅さんは次のように語ります。

「ありがたいことに、創業から何代にもわたってご愛顧いただいているお客様がたくさんいらっしゃいます。この店の味をご支持いただいているのだと思いますから、基本は変えるべきではないと考えています」

 ただその一方で、時代に合わせて試行錯誤するところもあると言います。たとえば、季節ごとに旬の野菜を取り入れたそばを加えてみたり、宴会用にコースメニューや日本料理で修業を積んだ料理人によるそば会席を加えたり。

「変えない部分と進化する部分、その両輪をもってこれからも続けていきます」と村松さん。

 老舗の名に甘んじず、一品一品、手抜かりなく丁寧に作り出されるそばと料理。一すすりで、長く愛され続ける理由がわかる、至極の蕎麦でした。

(取材・文◎松みのり)

●SHOP INFO

店名:室町砂場 日本橋本店

住:東京都中央区日本橋室町4-1-13
TEL:03-3241-4038
営:月〜金11:30〜21:00(L.O.20:00)
土11:30〜16:00(L.O.15:30)
休:日曜・祝日
https://www.muromachi-sunaba.co.jp/nihonbashi/

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