ラーメン官僚も通い詰める塩ラーメンの名店『しおらーめん進化2nd』とは?

2023年9月10日(日)10時49分 食楽web


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 今回ご紹介するラーメン店は、2022年10月19日に町田市にオープンした『しおらーめん進化2nd』です。

 店の場所は最寄り駅である小田急小田原線・鶴川駅から約1.3km。(徒歩約15分)。「鶴川街道」沿いに位置し、店までは駅から街道へと至るまでの序盤を除けば一本道です。

 こちらのお店、2007年の同月同日に町田で創業し、日本を代表する塩ラーメンの名店の一つとして不動の地位を築く、『町田汁場しおらーめん進化本店』の系列店(※)です。

(※)具体的には『進化町田駅前店(2号店)』に続く3号店。現存する『進化』の本店・系列店の中では最も新しい店。店主は関口信太郎氏。

 そんな『進化2nd』ですが、実は、このお店、単なる本店の系列店ではありません。同店は、『進化』の系列店の中では史上初となる、この店舗のためだけに開発したオリジナルラーメンを提供するニューブランドなのです。

 2007年の本店創業から15年を経て、塩ラーメンの名手・関口信太郎氏が世に送り出す塩ラーメンの新機軸。そんな1杯に心が浮き立たないラーメン好きは皆無でしょう。私もすでに、3回お伺いしました。


店舗外観。鶴川駅方面から向かえば、往路は若干の上り坂。特に夏場は体力を消耗しますが、決して徒歩でのアクセスが不可能な距離ではありません

『しおらーめん進化2nd』の店舗外観は、白地に黒文字で屋号が大書された巨大な看板が目立つ、ロードサイドタイプ。カウンター席(8席)に加え、テーブル席を複数備えた(2人掛け4卓、4人掛け1卓)の大箱です。

塩ラーメンの名手が生み出した新たな一杯とは?


店内はロードサイドタイプのため広々

 2023年8月現在、券売機の麺メニューは3種類。1列目にオープン当初からある「しおらーめん」、2列目に後発的に商品化された「しおつけ麺」、3列目にマニア層の根強い支持を集める「背脂生姜」関連のボタンが並びます。

※ちなみに6列目には「鶏塩飯」「焼豚飯」等のサイドメニューのボタンが存在。特に「鶏塩飯」は、フルポーションで堪能したくなるほどの名作なので、胃袋に余裕があればぜひお召し上がりください。


「しおらーめん」900円。「しおらーめん」が900円、「しおつけ麺」が1000円、「背脂生姜」が950円と、価格設定は比較的良心的

 看板商品は「しおらーめん」ですが、「しおつけ麺」も、それに勝るとも劣らない人気ぶり。ちなみに私の場合、初回は「しおらーめん」、2回目は「しおつけ麺」、3回目は「しおらーめん」と「しおつけ麺」を連食しました。

 結論から言えば、同店の麺メニューは、ラーメン、つけ麺共に完成度が極めて高く、味わいも甲乙つけがたいところ。可能であれば複数名で来店し、シェアすることを推奨します。


「しおつけ麺」1000円

「しおらーめん」、「しおつけ麺」共に、個々のパーツは朴訥な野趣味を漂わせながらも、俯瞰的に眺めれば、神々しい洗練のオーラをまとう逸品。スープからは、名古屋コーチン、節系素材等の艶やかな香気が、大地にしっかりと根を張る大樹の幹のようにたくましく立ち上がり、鼻腔を心地良く刺激します。

 いずれも手揉みされた太麺の存在感が際立ち、その姿かたちが視界に入ると同時に、「麺をすすりたい!」という衝動に襲われる傑物。麺を数本箸で摘んで勢い良くすすり上げれば、モチっと豊かな弾力と、手で揉むことで生まれるアシンメトリーな「ちぢれ」「ねじれ」「たわみ」の感覚が、口腔を通じ快楽中枢へと伝播。期せずして、桃源郷の境地へと誘われました。


注文が入る度に一杯一杯手揉み麺を仕上げていく

『2nd』では、みずみずしい食感を端的に表現するため、水分含有量が多いモチモチの麺を使いたいとの思いから、本店では使わないうどん用製麺機を導入しているそう。

「練り機(ニーダー)で生地と水をしっかりと練り込み、十分な熟成を加えています。さらに、麺茹で直前の段階で丁寧に手揉み。それにより、少々外力が加わった程度では崩れない、確かな手揉み感を表現することができました」(関口店主)


太めで存在感のある麺は食べ応え抜群

 麺を構成する小麦にも妥協はありません。5種類の国産小麦を、スープとの相性や香りの質等の要素を考慮しながら、絶妙なバランス感覚でブレンド。胃袋にスペースが残っている限り際限なくすすり続けることができる、渾身の仕上がりです。


スープ

 スープは、もっぱら「この手揉み麺をいかに美味しく食べてもらうか」という観点に立ってつくられたもの。

「麺の完成度がどれだけ高くても、麺以外のパーツに魅力を感じないラーメンは商品としては落第です。『2nd』のスープは、麺に競り負けないよう、出汁とタレの濃度をガツンと高めに調整し、うま味の輪郭を明確に描くようにしました。イメージは、ちょっとしたノスタルジーに浸りながら、ガツガツ食べ進められるラーメンといったところでしょうか」


大量の豚ゲンコツと背ガラの旨みが凝縮したスープ。冷ますとゼラチン状に

 おびただしい分量の豚ゲンコツと背ガラをじっくりと丁寧に炊き上げ、堅固なうま味の土台を構築。その土台に、名古屋コーチンの丸鶏を軸とした鶏素材の滋味をふわりと被せ、さらに節系(鯖節・宗田節等)、香味野菜の素材を活用することで、味わいの重層化を図っています。

「分厚いコクと濃密なうま味とが織り成すハーモニーを肌身で感じてもらいたいので、本店と比較にならないほど大量の豚ゲンコツと背ガラを寸胴に投入しています。一本筋が通った、骨太なスープに仕上がっていると思いますよ」

 スープが味蕾に触れた瞬間、動物系素材が生み出す強烈な「圧」を知覚。その後を追い掛けるように、鶏・乾物(節)・野菜等に由来する多種多様な素材の風味が重なり合い大きな奔流となって、脳内からのドーパミン分泌を促します。

 引き算の考え方を徹底し、タレに用いる塩の種類を必要最小限にまで絞り込むことで、かえって塩の輪郭を浮き彫りにする塩の名手・関口氏ならではのギミックも、見事のひと言に尽きます。

「厳選した3種類の塩をバランス良くブレンドすることで、食べ飽きない1杯が完成します」と関口店主。その言葉通り、口馴染みの良さたるや尋常なものではありません。立て続けに「しおらーめん」と「しおつけ麺」を実食しても、食べ飽きることは全くありませんでした。


熟成された焼豚は唯一無二の香りと味

 また、トッピングもこだわりの結晶。焼豚は、バラ肉を2日間じっくりタレに漬け込んだ後、窯で吊るし焼きしたもの。「吊るし焼きの過程で、タレとバラの脂によって肉がスモークされることで、立ち上がる香りを嗅いだだけで頬が落ちそうになる焼豚が出来上がります」と関口店主。

 こうしたパーツを掛け合わせることで生まれた「しおらーめん」、「しおつけ麺」は、共にひと口目のインパクトが強烈で、そのインパクトが食べ終わりまで減衰しない“惹き”の塊のような佳作。

「人間の味覚は千差万別ですが、そんな味覚の違いを乗り越えたやみつきになる1杯を目指し、これからも味のブラッシュアップに励みます」と関口店主。その夢を、心の底から応援したいと思います。

●SHOP INFO

店名:しおらーめん進化2nd

住:東京都町田市大蔵町337−1 第二工藤ビル 1F
TEL:042−860−5122
営:11:30〜15:00、18:00〜22:00
休:月曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

関口信太郎店主のプロフィール

・複数のジャンルの飲食店で料理人経験を積んだ後、都内を代表する実力派『せたが屋』グループに入り、同グループの塩ラーメン専門店『ひるがお』にて修業。『ひるがお新宿御苑前店(閉店)』では、店長として店舗の立ち上げから営業までを一任され、塩ラーメン作りの名手として勇名を轟かせる。

・同店でラーメン職人としてのノウハウを会得し、2007年10月、町田の地に『しおらーめん進化』を開業。鶏の上質な滋味を最大限に活かした繊細な淡麗塩ラーメンを引っ提げ、同店を「塩」の全国的名店へと押し上げた後、2022年10月、満を持して「鶴川街道」沿いに『進化2nd』をオープン。

・「(大箱にした理由として)これまでの『進化』とはコンセプトが全く異なるラーメンに挑戦しようと考えました。本店、町田駅前店のラーメンは、繊細な味わいが持ち味のマニア向けの1杯です。そこで『2nd』では、子供連れのご家族や年配の方にも愛されるような、うま味が明確で分かりやすい1杯を出そうと思ったのです。なので、物件探しの段階から、十分な座席が確保できるロードサイドの大箱にしようと考えていました」

・『2nd』が目指すのは、うま味が分かりやすく病み付きになる、食べ手を選ばない1杯。この味を広め、できるだけ多くの方々にラーメン好きになってもらうことが、現在の目標。

・『2nd』に関しては、可能な限り多くの方々にラーメン好きになってもらいたいというコンセプトの下、多店舗展開を視野に入れた枠組みを構築。

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