紅葉するのはなぜ?親子で学ぶ、秋の理科旅…SS-1辻義夫先生
2017年9月23日(土)12時15分 リセマム
そして、「あんなに緑色に茂っていた葉がいっせいに黄色や赤色に変化するのはなぜだろう」と、誰しも一度くらいは考えたことがあるのではないでしょうか。
◆そもそも、どうして葉っぱは緑色なの?
さて、その原理です。「そもそも葉っぱって、なんで緑色なの?」という質問に、小学校高学年のお子さんなら答えられる子が多いと思います。
答えは、「葉に葉緑体があるから」です。
もう少し詳しく答えると「葉には葉緑体という部分があって、それに日光が当たることで光合成し、養分を作っている。葉緑体には葉緑素という色素が含まれていて、その色素のために緑色に見える」となります。
葉緑素という緑色の色素によって、葉は緑色なんです。その葉緑素のある「葉緑体」という部分で日光のエネルギーを利用して栄養分を作っているんですね。
秋になって気温が下がり、光合成の活動が弱まってくると、植物によっては「こんなに光合成しにくいんだったら、いっそ葉を落としてしまったほうが効率がいいぞ」という戦略をとるものも出てきます。
これが落葉樹ですね。
落葉樹は葉を落とすために、葉緑素を分解し枝に戻し始めます。もともと葉には葉緑素のせいで目立たなかった黄色系の(カロテノイドといいます)色素があるので、緑が抜けると黄色くなってきます。
イチョウなどですね。
では、赤くなるのはどうしてでしょう?
木はやがて葉との間の行き来をなくしますが、行き来がなくなってもしばらくは光合成が行われます。でも、できた栄養分はもう木の方には運ばれません。この栄養分から、アントシアニンという赤色系の色素ができるのです。
こうやって、落葉樹の葉は黄色や赤に変化するのです。
◆子どもとのお出かけで見るべきポイントは?
意気込まなくても、とは言ったものの、お子さんと紅葉狩りに出かけるなら、ぜひ意識していただきたいことがあります。
それは、紅葉している葉とそうでない葉と、その日当たりのようすです。
モミジ(カエデ)などが真っ赤に紅葉しているようすは大変美しいのですが、あえて全部が真っ赤に紅葉する前の段階で訪れ、日当たりと紅葉の関係をチェックしてみてください。よく日の当たる部分が紅葉し、日の当たらない部分がまだ緑色の枝を発見できるかもしれません。また葉と葉が重なっているようなところでは、上の葉が紅葉し、下の葉は緑色の部分が残っている、といったことも。
アントシアニンという赤色系の色素をつくるのに、日光の力が必要だからです。よく日の当たる部分から、よく紅葉するのです。
また、葉のようすもよく観察してみてください。できれば葉を落とさない植物(常緑樹)であるツバキなどと、葉の大きさや厚さなどを比べてみましょう。「春〜秋の使い切り」の葉は薄く、面積が大きいことなどから、高学年のお子さんなら「最小のコストで最大の結果を出す」という生物の戦略を感じられるかもしれませんね。
意識して見回してみると、町中でも紅葉を楽しめるスポットは多くあります。都内でも日比谷公園(千代田区)をはじめ国立科学博物館附属自然教育園、芝公園(港区)など、多くの公園で紅葉が楽しめます。
街路樹としてよく植えられているイチョウも、身近に葉の色の変化を楽しめる植物です。イチョウは雄花ばかりを咲かせるお株と、雌花のみを咲かせる雌株を持つ植物でもあります。種子(ギンナン)がたくさん落ちている木が雌株ということになりますね。そんなことを話しながら、お子さんと散歩するのもいいものです。
◆モミジで化学実験!?
紅葉の原因物質である色素、アントシアニンですが、これは多くの紫色の植物に共通して含まれるもの。身近なものではナスの皮、赤じそ、ムラサキキャベツの葉など。
お子さんの理科のテキストを覗き込んだことがある方は、ピンときたでしょうか。「ムラサキキャベツ液」として化学分野で登場するものと同じなんですね。
紅葉したモミジの葉っぱを持って返ってきて煮出して冷ませば、試薬のできあがり。これにいろんな性質のものを混ぜてみましょう。
酸性、中性、アルカリ性で、アントシアニンは表のように色が変化します。
<表:これで覚える!アントシアニンの色の変化>
「赤ピン村の緑の木」と覚えます。
家の中を見回してみると、いろいろな水溶液が見つかりますね。酢、料理酒、炭酸水といったキッチンまわりのものから、洗剤、漂白剤、重曹を水に溶かしたもの、卵白といった食材まで、いろいろ色が変わって楽しいですよ。
このように、ただ眺めるだけでなく、もっともっと楽しめる紅葉。この秋はお子さんといっしょに、「眺めるだけでない紅葉狩り」に出かけてみませんか?