ケニアにおける「赤ちゃんの名付け」今と昔【カンバ通信】第330回

2023年10月6日(金)18時0分 ロケットニュース24

ジャンボ〜。ケニア在住、カンバ族のチャオスです。今回もリクエストボックスに届いた質問に答えていこうと思う。

「(前略)日本では子供の名前を決める方法が沢山あります。字画やお寺の住職に名付けてもらったりなど選択肢が多く、私自身3人の子の母親ですが3人ともとても悩みました。

チャオスさんの国では、名付けについて定番の方法などはあるのでしょうか? またお子さんたちの名付けの由来なども聞けたら嬉しいです

いい質問だ。答えよう!

・昔の名付けと出産のお祝い

まず、そもそも、カンバ族の世界では、「赤ちゃんに名前をつけるのは母親」という決まりがある。父親ではないし、祖父母でもない。母親が命名する。

その昔、カンバ族は赤ちゃんの誕生から3日後にお祝いをしていた。

両親は生まれたばかりの赤ちゃんを祝うために雄牛を屠殺(とさつ)したり。※後に皆で食べるため。

その作業の間、祖父母たちは、孫となる赤ちゃんの名前を呼んで喜ぶ。

というのも、赤ちゃんの名前(ミドルネーム)に、祖父母の名前と同じ名前が使われているからだ。

なぜ祖父母の名前を赤ちゃんにつけるのかというと、祖先を忘れないため的な意味合いがある。そういう伝統なんだ。

つまり、昔のカンバ族の名前は、「母親からもらった名前」「祖父母の名前」「姓(父親の名前)」の3つで構成されていた。

だが今は状況が変わった。時代が変わったというか。

・今の名付けと出産のお祝い
今では、赤ちゃんが産まれても雄牛を屠殺して皆で食べるような儀式はやらなくなったし、ミドルネームに祖父母の名前をつける伝統もない。

もちろん名前は好きにつけても良いし、ミドルネームも祖父母ではなく、両親の名前にしても良い。

そして伝統的な儀式もない。赤ちゃんの親である我々は、単に「赤ちゃんが産まれたよ」と両親に伝えるだけ。

そして赤ちゃんに会いにきた両親(赤ちゃんにとっては祖父母)たちは、毛布や服などの出産祝いを持ってくる……てな感じになっている。

・名前の例(長女と次女)
たとえば私の長女はウィンフレッド・カマンテ・チャールズ。ミドルネームの「カマンテ」は妻の母親の名前から来ている。

内情を説明すると、実は私は「両親の名前をミドルネームに入れるのは嫌だ」と思っていた。

しかし妻が「もしも私の親が亡くなったとしても、思い出せるように」と、妻の母親の名前を入れることを希望した。

子供の命名の決定権は母親にあるので、私は「OK」と答えた。

ちなみにカンバの世界における「カマンテ」は、「あなたが長い間、見てきたもの」を意味している。

そして次女の名前はデイジー・マリア・チャールズ。ミドルネームのマリアは私の母の名前だ。

長女が妻の母親だったので、次女は私の母親にしよう、となったわけだ。

ちなみにカンバのマリアとは、「いつも幸せで、すべての人を愛している」という意味である。

・ん? チャールズ?
あ、そうそう。最初の方で説明したかも知れないけれど、私の名前はチャールズ・カトゥーキヤ・ンツィオキ(charles kathukya nzioki)という。

チャールズは、私が母から命名された名前。カトゥーキヤは祖父の名前。そしてンツィオキは父親の名前だ。

日本のゴーは私のことを「チャオス」と呼ぶが、正式には「チャールズ(Charles)」だ。

2013年、ゴーと初めて会った時、何度も「Charles(チャールズ)」と自己紹介しているのに、彼は「チャオスだな!」と勝手に納得。

めんどくさいので「そうだな、ではチャオスと呼んでくれ」となり、今にいたる……というわけ。チャオス歴10周年! ではクワヘリ。

執筆:チャオス(カンバ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.

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