「お試し期間」で話題の中央線快速グリーン車。ドアが両開きになってどう変わった?【乗ってみた】

2024年10月22日(火)17時15分 All About

JR中央線快速の2階建てグリーン車。来春の営業開始に先立ち、グリーン車を連結した電車を順次導入している。全ての電車が12両編成に統一されるまでは時間がかかるので、それまでは「お試し期間」だ。無料なので多くの人が殺到している。現状を報告する。

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「お試し期間」で話題の中央線快速グリーン車

JR中央線快速電車の2階建てグリーン車。2025年春に予定されているサービス開始に先立ち、10両編成の電車にグリーン車を2両連結し、12両編成となった電車を10月13日から順次導入している。
中央線の快速用車両は58編成もあるので、全ての電車が12両編成に統一されるまでは半年ほどかかる見込みだ。それまでグリーン車は「お試し期間」として無料で乗車できるとあって、多くの人が殺到し、混乱気味である。どのような状況なのかリポートしよう。

ドアを両開きとした中央線のグリーン車

2階建てグリーン車が2両組み込まれた中央線快速電車(特快、通勤快速を含む)は12両編成。いわゆる「オレンジ帯」の電車(E233系)で、東京駅寄りの4号車と5号車が2階建てグリーン車だ。基本は、すでに走っている東海道線、横須賀線、総武快速線、高崎線などの2階建てグリーン車と同じだ。
違いはドア。従来の2階建てグリーン車は、特急列車並みの狭い片開きのドアだったが、中央線用のドアは両開きで広い。これは東京駅での折り返し時間が短く(最短2分)、乗客の乗り降りをスムーズに行うためだという。ドアを広くしたため、車端部の平屋の座席数が減っている。その分、2階席のシートピッチ(幅)をやや狭めるなど工夫して、定員は従来のグリーン車と同じ2両で180人を確保している。

東京駅からグリーン車に乗車してみた

グリーン車連結開始の5日目(10月17日)のお昼前、東京駅の中央線ホームに出た。沿線の人身事故の影響で列車ダイヤが乱れてはいたが、JR東日本アプリをチェックすると15分ほどでグリーン車を連結した編成が到着するという。
4号車(グリーン車)乗車口には数人が待機していたので、その列に加わった。やがて、電車が1番線に到着。降りる客が途切れたところで車内へ。ところが、座席周辺でウロウロしていた乗客が慌てて降りようと逆らうようにやってきたので少々混乱した。
ドアは広くなったものの、2階席からドアへ続く階段は狭いままなので、すれ違いには無理が生じる。降車客をスムーズに誘導しないことには、ドアを広げるだけでは解決しない。
「お試し期間」中は、自慢の自動座席回転装置は働かない。自分で座席下にあるペダルを踏んで進行方向に向きを変えて窓側に着席した。どの席も窓側は満席のようだが、通路側は空席が目立つ。筆者の隣も東京駅発車時は無人のままだ。
座席の肘(ひじ)掛け先端にコンセントがあったので、スマホの充電を行う。横須賀線・総武快速線の新型車両(E235系)グリーン車以外は電源コンセントがないので、これはありがたい。
前の座席背面にあるテーブルを降ろして持参した軽食を並べてランチタイムとした。同じ座席背面の下方にはドリンクホルダーもあるので、ペットボトルも置ける。列車の揺れで転倒しないのは安心だ。

眺望抜群の2階席

静かに東京駅を発車。中央線ホームは他の路線よりも一段高いところを走っているが、2階建て車両はさらに高いので、車窓の見晴らしはすこぶるよい。すぐに東京駅に到着する中央線の電車とすれ違ったが、向こうの電車の屋根が視界を遮る。それだけ高いところに座っている証左だ。
神田を出て左にカーブすると旧万世橋駅跡にできた商業施設を通過。総武線の高架橋が近づいてくると御茶ノ水駅である。上から見下ろすとホームの人たちがグリーン車を避けるように左右に移動していく。グリーン車付きの12両編成とグリーン車なしの10両編成が混在しているため、普通車を待っていたら、グリーン車が停車して目の前にドアがないため、急いでドアのある位置に向かったようだ。
中にはグリーン車は有料だと思い込んでいて、離れたところに停車した普通車両のドアまで駆け出していった人もいるようだ。58編成もの膨大な中央線快速用の車両にグリーン車を組み込む作業は相当の時間がかかる模様だ。こうした混乱はしばらく続きそうである。
飯田橋駅を通過すると右手に外堀が見えてくる。春は桜の名所となるので、来春からはグリーン車からのお花見も楽しめそうだ。
四ツ谷駅に停車した後は、御所トンネルを抜け、新宿御苑の脇を走る。新宿駅では降りる人もいたが、それ以上に多くの人が乗ってきて、筆者の隣にも会社員風の人が腰を下ろした。特に鉄道ファンというわけでもなさそうで、車内や車窓を見渡すこともなく、一心不乱にスマホを操作している。運行開始日は、いかにも鉄道マニアと思われる若者で大混雑だったようだが、平日ということもあり、一般の利用者が増えたようだ。
新宿を出て、東中野を通過すると立川までほぼ一直線に延びる区間に入る。解体を待つばかりの中野サンプラザの特徴ある建物が見え、中野を発車すると、高架複々線区間を快走……と言いたいけれど、特快ではないので、高円寺、阿佐ヶ谷と丹念に停車していく。住宅地なので、高層ビルは少なくなり、視界は広がる。

「お試し期間」ならではの雰囲気

今回は、その後の所用もあり吉祥寺駅で下車した。筆者以外にも大勢降り、入れ替わるように多数の人々が乗り込んだ。午前で授業が終わった小学生や中高生の姿もある。お試し期間で無料なので、本来ならグリーン車には無縁と思われる人たちもゆったりした乗車を体験しているようだ。
「お試し期間」なので、車内でもWi-Fiは使えず、トイレやゴミ箱も閉鎖されている。アテンダントさんも乗車していないので、グリーン車特有のサービスも受けられない。まだまだグリーン車連結の12両編成は少ないので、しばらくは車内もホームもザワザワした雰囲気だが、次第に落ち着いていくだろう。
「お試し期間」が終わり、本格営業が始まるのを待ちたい。そうなると、ごく短距離の利用は減り、遠方への乗車が主流となるのであろう。

特急と快速電車グリーン車の比較、おトクな利用法

中央線には特急「あずさ」「かいじ」も走り、区間によってはグリーン車の方が割高になる場合も出てくる。ただ、特急の恩恵を受けられない駅の通勤客や所用客、高尾以遠や青梅方面への行楽客の需要もありそうなので、グリーン車を使った日帰り旅行などさまざまな利用方法が出てくると思われる。なお、2階建てグリーン車の運転区間は、東京〜高尾〜大月あるいは東京〜立川〜青梅である(途中駅での折り返し列車あり)。
東海道線、横須賀線などと同様、紙のきっぷよりもSuicaグリーン料金の方が安くなるし、JRE POINTを貯めれば600ポイントで利用できる。乗車の目的や状況に応じてグリーン車や普通車を使い分けたい。
この記事の執筆者:野田 隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。(文:野田 隆)

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