一家20人が死亡…座敷童子の怖い話と基本の3パターンとは?ドラマ『妖怪シェアハウス』登場妖怪を民俗学者が解説!

2020年9月19日(土)21時0分 tocana

——話題のドラマ「妖怪シェアハウス」に登場する妖怪を気鋭の民俗学者・畑中章宏が解説!



 東北地方でその実在がまことしやかにほのめかされる座敷童子(ザシキワラシ)。一般的には、家に住む子どもの妖怪・精霊をイメージするが、『妖怪シェアハウス』ではシェアハウスの寮母で、世話の焼ける妖怪たちの面倒をみる和良部詩子(わらべ・うたこ)という女性である。


 この妖怪・精霊は、民間伝承の世界では、ほぼ3様類の性格がある。


 一つめは、土地の旧家から1人か2人の子どもが出てきて別の家に入っていって、子どもが出ていった家は没落し、入っていった家は栄えるようになったというもの。二つめは、家の中に住みつき、目には見えないけれど、布団の上に乗ってきたり、枕を返したりするというもの。三つめは、子どもたちが何人か集まり、自分たちの人数を数えると何回数えても1人多く、それがザシキワラシだというものである。


 日本民俗学の古典、柳田国男の『遠野物語』(1910年)にもザシキワラシが登場する。「家の神」という分類で2編が収められているが、そのうち「第18話」はこんな話である。


 山口という集落の旧家・山口孫左衛門の家には、童女のザシキワラシが2人いたと長いあいだ言い伝えている。ある年のこと、同じ村に住む某(なにがし)が、町からの帰りに、橋のほとりで見たことのない2人のかわいい娘に会った。2人は何かを考えているようすで、こちらの方に近づいてくる。


「お前たちはどこから来た」と聞いたら、「山口の孫左衛門のところからきた」と答えた。「これからどこへ行くのか」と聞いたら、「〇〇村の△△の家に行く」と答えた。


 その△△は、山口から少し離れた村で、今でも立派に暮らしている豪農である。


 男は「孫左衛門も、世も末だな」と思ったが、それからあまり経たたないうちに、この家の一族20数人が、キノコの毒にあたって、1日のうちに死に絶えてしまった。7歳の女の子だけ助かったけれど、子供もないまま年老いて、近頃、病気で亡くなった……。


 孫左衛門家滅亡のきっかけになったキノコだが、家の下男のひとりが、間違った毒取り法を教えたため、真に受けたものが皆死んでしまったというのである。だからこの話には、キノコに気をつけること、デマに惑わされないことという教訓も込められているかもしれない。



 ところで私が最近出した『関西弁で読む遠野物語』(エクスナレッジ)という本では、第18話の会話を「あんたらどっから来たんや?」「うちら、山口の孫左衛門のとこからきてん」と訳している。『妖怪シェアハウス』のヒロイン、目黒澪を演じる小芝風花は、大阪府堺市出身なので、いつかこんなふうに朗読してほしいものだ。


 ザシキワラシの性格に話を戻すと、「子どもたちが何人か集まり、自分たちの人数を数えると何回数えても1人多く、それがザシキワラシだ」というのもよく知られている。『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』の童話作家・宮沢賢治も、そんなようすを作品に描いている。


「ちょうど十人の子供らが、……ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。そしたらいつか、十一人になりました。ひとりも知らない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。」(「ざしき童子のはなし」)


 今回は最終話となった『妖怪シェアハウス』、澪の正体は、家の富貴を約束するザシキワラシだったとか、澪は実は妖怪たちが見た「幻」だったという結末を、筆者はどこかで期待したりしている。

tocana

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