【定番名品シリーズ】まだ間に合うダウンジャケット、優秀な機能と高感度なデザインを兼ね備えた厳選5品
2024年12月20日(金)8時0分 JBpress
長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する。
写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登
冬を快適に楽しむには高機能アウターが欠かせない
ダウンジャケットは防寒着として非常に優秀である。周知のとおり水鳥の羽毛を封入したスポーティなアウターであり、暖かいだけでなく軽量という利点を併せもつ。
保温効果だけでいえば、裏ボアを備えたムートンジャケットなども優れた断熱機能を備えている。しかしダウンほどの軽量性はなく長時間着用すると着疲れしてしまうことがある。保温性能に優れたアウターの利点として、その内側に着込むシャツやニット類が春先用の軽快なもので済むところは見逃せない。つまり街着を基本とするのであれば、本格的な秋冬用の厚手のニットやフリースなどをいくつも揃えておく必要はなくなるのだ。
そんな冬季ワードローブのスリム化にも役立つ軽量かつ機能的なダウンジャケット。選びの際に役立つポイントとして、ぜひ押さえておきたいワードがある。「フィルパワー」は使用される羽毛素材のかさ高性を示す単位であり、昨今のダウン製品の多くに表示されている。
これはたとえば600フィルパワーのダウンの場合、1オンスの重量の羽毛が、600立方インチの体積にふくらむことを意味する。ふくらみをもつ羽毛はそれだけ高い保温性を有するわけで、フィルパワーの数値が高いほど保温機能に優れたダウンだと言えるのだ。すべての製品に明示されてはいないものの、保温性能を重視するならぜひ知っておきたいポイントだ。
もちろん、保温性能だけがダウンジャケットのすべてではない。シェル(表地)の機能も同時に考慮すべきであるし、ファッションギアとしての使い勝手も見逃すべきではない。いずれにしてもアウトドア服の作り手として、一定の歴史をもつブランドのダウンジャケットは、総じて動きやすく悪天候にも耐える優れた機能を兼備する。そしてダウンのクオリティも平均以上のものを用いた優良品を継続的に打ち出している。
そこで今回は、お洒落にうるさいファッション・フリークが注目するアウトドアブランドのなかでも、優秀な機能と高感度なデザインを兼備した名品ダウンジャケットを紹介する。
1. WOOLRICH
高機能にして街着にも馴染みやすいシックなシェル使い
アメリカ政府に依頼され1972年にウールリッチが生み出した傑作ダウンジャケットである「アークティックパーカ」。マイナス40度の極地での作業アウターとして、高い保温性に加え使い勝手の良いポケット、寒風から頭部を守るリアルファー付きフードなど、機能的にもこだわったワークアウトドアな一着である。
2012年に復刻した現代版は、リリース直後から世界的な人気を博し、それまでスキーを中心とするスポーツブランドがリードしていたダウン市場を一転させたエポックなモデルでもあるのだ。
順次進化を続ける現代版のポイントはRDS(動物福祉に則った調達基準)認定のダウンを使用することと、「ラマー60/40」シェルの採用。「ラマー60/40」はナイロンの強さとコットンの快適さを兼備する定番的なハイテク素材だ。優れた撥水・耐摩耗性をもちつつ、定番ウエアとも馴染みやすいマットかつシックなタッチを備えている。
2. PYRENEX
厳格な生産基準を設けダウンの質にこだわるフランスの老舗
生粋のフレンチダウンを手掛ける老舗として知られるピレネックスは創業なんと1859年。フォアグラとなるガチョウやアヒルなど、食用鳥の生産が盛んなピレネー山脈麓のサン・セベを拠点としており、当初はその食用鳥のダウンを使用し、掛け布団や枕を生産してきた古参である。1960年代からダウンを用いたアウトドアグッズを作り出し、ピレネックス名義のもと機能性とファッション性を備えたダウンアウターを手掛け始めたのは1970年代から。
写真のモデルはブランドの定番となる、軽快なヒップレングスが特徴の「スプートニック ミニリップストップ2」。使用するダウンはフィルパワーに優れたフレンチダックダウンのみ。原毛の採取から洗浄・加工、そして最も大事な仕分け工程まで厳格な基準を設けて生産しており、スマートシルエットでありつつ十分な保温力を発揮する一着である。
3. Bacon
モードな洒落感のみならず圧倒的な実用性も兼備
イタリアはミラノにおいて2008年にスタートしたベーコン。ドルチェ&ガッバーナやマックス マーラ等で経験を積んだデザイナーが専属にて製作を手掛けており、機能性と同時にファッション性の高さでも信頼を獲得している。
写真の新作はタウンウエアとして使いやすいショートレングスのモデル。変則的なフォルムのダウンパックを組み込んでおり、独自のボリューム感に加え幾何学的なルックスが、スポーツダウンとは一線を画す洒落感をアピールする。肉厚のダウンパックには750フィルパワーの高品質なホワイトダウンを使用しており、極めて軽く抜群の保温性を備えている。
また、高さのある襟に加えチン(顎)ガードも添えており、着るだけで個性的な雰囲気を出せるところもポイント。今風の太めのパンツに合わせてメリハリあるスタイルを楽しむのに最適な一着だ。
4. Ciesse Piumini
ヒマラヤ遠征隊にも装備を供給したイタリア発の本格派
イタリアで初めてダウンウエアをファッションアイテムとして打ち出したブランドとして知られるチェッセ ピューミニ。洒落たデザイン性もさることながら、1978年には著名登山家との協業で本格アウトドアウエアをリリースすることに加え、ヒマラヤ遠征隊に装備を供給するなど、確かな実績と品質を誇る実力派である。
そんなラテンブランドのダウンジャケットは、IDFL(International Down and Feather Testing Laboratory)によりクラス1と認定された、800フィルパワーの最上級ダウンを使用する。写真の「フランリン」は、シームピッチ(水平状のステッチ幅)を狭く取り、スッキリしたシルエットかつフードを備えた人気のモデル。羽毛量を押さえたライトダウン型のためアウターとしてだけでなく、コートの下などに着込むレイヤースタイルをも楽しめる。
5. P.H.Designs
フィルパワー表示を最初に取り入れた品質重視の英国ブランド
英国におけるアウトドアブランドの草分け「マウンテン エクイップメント」を作り上げたピーター・ハッチンソン。そのヒットメーカーが手掛けるP.H.デザインは、業界で初めてフィルパワー表示を行なったダウンブランドとしても知られる。シェルには日本における高密織物のトップ企業、第一織物による「Dicros mauri」超高密ポリエステルを使用。軽量かつ頑丈、そして型崩れしにくい特性をもつ。その内部には700フィルパワーの高級ダウンを十分に詰め込み、真冬でも完璧な防寒性を誇るプロ仕様に仕上げている。
かつてエベレスト登山隊や北極点踏破チームの装備を手掛けた人物が手掛ける一着だけに、ディテールにもいっさいの抜かりなし。フロントやポケット部のジッパーは止水式であり、襟裏やポケットの内袋は肌触り良く暖かみあるフリースを張り、袖口には冷気の侵入を防ぐリブ袖を配すなど、念入りの作り込みも見逃せない。
筆者:長谷川 剛