身近に潜む『骨粗しょう症』! - どんな人がなりやすい? 自宅でできる予防法とは?
2024年12月21日(土)10時30分 マイナビニュース
読者のみなさんは、骨粗しょう症について正しい知識をお持ちだろうか。今回は、骨粗しょう症とはどんな病気なのか、またその予防法・トレーニング法を聞いてきた。
■骨粗しょう症にかかりやすい人とは?
はじめに、chocoZAPメディカルの提携医療機関である新宿三丁目メディカルクリニック病院長の木村 祐子氏に骨粗しょう症がどんな病気なのかについて伺った。
——骨粗しょう症はどんな病気なのですか?
骨粗しょう症は、単なる骨の老化現象ではありません。骨の"病的老化"で、明らかな病気です。骨折は骨がもろくなるために起きる合併症なので、予防および治療が必要です。
——どんな人が骨粗しょう症になりやすいのでしょうか?
閉経後の女性は急速に骨量が減少するので、特に注意が必要です。また、過度なダイエットを繰り返している人も骨がもろくなっている可能性があるほか、喫煙、飲酒、ステロイド薬使用、運動不足などの生活習慣も骨粗しょう症のリスクになります。
——身近な病気なんですね。では、生活に取り入れられる予防法を教えてください!
次の4つがポイントです。
1. 日光浴
体内でのビタミンDの生成と吸収には日光浴が補助的役割をするので、1日15分以上の日光浴がおすすめです。
2. 食生活
乳製品、緑黄色野菜、海藻、大豆食品を取りましょう。納豆や緑黄色野菜はカルシウムだけでなく、吸収されたカルシウムを骨に取り込む作用を持つビタミンKも多く含んでいます。
3. 生活習慣
過度なダイエットは骨密度を低下させるので注意が必要です。また、カルシウムの吸収を妨げてしまうので、喫煙や過度な飲酒は控えましょう。喫煙や過度の飲酒は、骨折リスクを38〜68%上昇させると言われています。できれば、飲酒量は1日20g以下に抑えることが望ましいでしょう。
4. 運動
適度に運動を取り入れましょう。早歩き・ジョギング・エアロビクス・ジャンプ・スクワットなど、骨に衝撃と荷重のかかる運動が推奨されています。また、活動的な日常生活の維持は、骨折リスクを最大で50%ほどの抑制が期待できると言われています。
■骨粗しょう症を防ぐトレーニング
ここまでは、木村氏に話を聞いてきたが、続いては骨粗しょう症予防のための運動や食事法について聞いていこう。
話を聞いたのは、RIZAP事業支援統括部で人財育成ユニットに所属している相馬由紀子氏。新人研修のほか、店舗で活躍しているトレーナーの教育にも携わる、トレーニングに精通したプロフェッショナルだ。
——先生に、骨粗しょう症を予防できる運動として早歩きやスクワットなど、骨に衝撃と荷重のかかる運動がいいと教えてもらいました。
骨粗しょう症予防という観点において、弊社では「ウェイトトレーニング」と「有酸素運動」を推奨しています。ウェイトトレーニングはマシンなどを使って行う自重以上の負荷をかけて行うトレーニング、有酸素運動はウォーキングやジョギングなど長時間継続できる運動を指します。
そもそも骨粗しょう症は、骨密度が低下することによって起こる病気。骨密度とは、骨を輪切りにしたときの繊維の密度のことで、これがスカスカになると骨がもろくなり、骨折などにつながります。トレーニングによって骨の端から端にかけて圧力をかけることで、骨に刺激が入り、骨密度が増加すると言われています。
また、転倒などの大きなけがの原因は、足腰が弱ることで引き起こされます。寝たきり予防のためにも、足腰を鍛えておくことが大切です。また、高齢者になると、腕や手首などの骨折も増加します。足だけではなく、上半身も鍛えておくことが重要と言えるでしょう。
——では、はじめにウェイトトレーニングについて聞かせください。具体的にどんな運動をすればいいのでしょうか?
マシンを使ったトレーニングとしては、例えば、レッグプレスやチェストプレスなどのトレーニングがあります。レッグプレスは、腰かけて両足で器具を押すことで太ももやお尻周りを鍛えます。もう1つは、チェストプレス。上半身、特に胸や腕に負荷をかけて筋肉を鍛えるマシンです。
【目安の回数】
・チェストプレス:15回×3セット
・レッグプレス:15回×3セット
人にもよりますが、無理のない範囲で上記を週4回ぐらい、できるなら毎日やっていただいても構いません。筋肉痛がひどくて動けない、と感じたら1回休みましょう。疲れが残らなくなれば、毎日やってOKです。
——週に4回! 結構な回数ですね。
骨粗しょう症の対策であれば、トレーニングの頻度は多い方がいいんです。ライザップでは、週2回以上をおすすめしていて、できれば週3〜4回くらいが理想です。筋肉痛が残りすぎない程度の負荷で鍛えるといいでしょう。
トレーニングの頻度が週1〜2回と少ないと、筋肉と骨にかかる負荷がまばらになります。休みが長いと、休んでいる間に筋肉に刺激が足りず、思ったように骨密度が上がりません。トレーニングの頻度を増やして、負荷を一定かけ続けると、骨が『これ以上弱くなると体が危ないな』と危機を感じて、骨密度が向上するのです。
——そうねんですね。では、次に有酸素運動はどんなことをすればいいですか?
バイクもありますが、おすすめはランニングマシンです。走る必要はなく、疲れが残らない程度のウォーキングで結構です。骨粗しょう症に関しては『毎日できるぐらいの強度』で、10分〜15分を目安に歩きましょう。息があがらなくても問題ありません。
ちなみに、バイクは体重が足にかからないこともあり、骨密度に対する影響は少ないのでランニングマシンの方がおすすめです。
■自宅でできる簡単トレーニング!
——自重トレーニングは、家でできるものも多いですよね。どんな方法がありますか?
代表的なものとして「スクワット」があるほか、できる方であれば「腹筋」もアリですね。
【目安の回数】
・スクワット:15回×3セット
・腹筋:15回〜20回×2〜3セット
スクワットは、ひざがつま先より前に出ないよう注意をしましょう。いずれもご自身の無理のない範囲でやることを心がけてください。腰痛を感じてしまう方もいらっしゃいますから、様子を見ながらやっていきましょう。
——ちなみに、もっと簡単にできるトレーニングはありますか?
それなら「足踏み」はどうでしょう? かかとを上げ下げする「カーフレイズ」という運動や「もも上げ」も骨粗しょう症予防のトレーニングによいでしょう。
【目安の回数】
・カーフレイズ(かかとを上げ下げする運動):15回〜20回×2〜3セット
・もも上げ:15回〜20回×2〜3セット
これらの運動は痛みの出ない程度でやりましょう。割と疲れやすい筋肉なので、3セットやったら相当疲労感があると思います。
——ほかにもおすすめのトレーニングはありますか?
このほか、骨粗しょう症のためというよりは体のバランスを整えるため、背中のトレーニングもできるといいですね。タオルの両端を持って、頭の後ろから背筋あたりまで下げてもらう運動です。
——足だけ鍛えるのではなく、全身を鍛えることが大事なんですね。
はい。例えば姿勢が悪くなることによって、長い距離を歩けなくなり、足の筋力がつかなくなる……という悪循環が考えられますので、全身の運動をやっていただいた方がいいですね。
■運動を習慣化させるポイントは?
——今、たくさんのトレーニングを教わったのですが、どうやったら習慣付けられますか?
1種目でもいいですし、数分でもいいので、毎日やることが大事です。一般的には『週4回以上やって、それが3週間続くと習慣化しやすい』という風に言われています。日常生活とひもづけられるといいでしょう。
例えば、歯磨きの最中には必ずかかと上げをやる。あとは、欠かさず見ているテレビ番組とひもづけてしまうのもアリですよ。朝ドラの15分間だけはスクワットをします、とか。いつもやっていることとひもづけると習慣化しやすいと思います。
——トレーニングに効果的な時間帯はありますか?
朝ご飯を食べた後とか、起きてしばらく活動した後にトレーニングされるといいでしょう。実は、朝に活動しておくと代謝が上がりやすいメリットもあります。そういった意味で、朝のタイミングはおすすめですね。
一方で、朝起きてすぐは、避けましょう。これは起きたばかりだと、背骨にかかる負担が大きいためです。
■骨粗しょう症を防ぐための食事
——食事についても教えてください。食べ物などで、気をつけた方がいいことはありますか?
カルシウムやミネラルは、骨の材料になる栄養素です。ただカルシウムだけ取ると血管に負担がかかりやすくなるので、マグネシウムも一緒に取りましょう。小魚やサクラエビみたいに、骨ごと食べられるものがいいですね。
——牛乳だけではダメなんですね。
牛乳も飲んだ方がいいと思いますが、先ほども伝えたようにマグネシウムも一緒に摂取するようにしましょう。
実はカルシウムとマグネシウムって、きっ抗する作用があるんです。カルシウムばかり取るとマグネシウムの働きが弱くなってしまうんです。マグネシウムには血管の健康を保つ働きがあり、マグネシウムが不足すると動脈硬化の危険性が高まります。
ですので、マグネシウムも摂取できる「冷奴」も牛乳と一緒に買うのがおすすめです。また、骨が柔らかい「さばの水煮缶」や「アーモンドフィッシュ」もアリですね。ぜひ、食事と運動に気を付けて骨粗しょう症を防ぎましょう。
——ありがとうございました!
木村 祐子 きむら ゆうこ 新宿三丁目メディカルクリニック 病院長(chocoZAPメディカル提携医療機関)。2008年東海大学医学部卒業。日本医師会認定産業医でもあり、日本抗加齢学会に所属している。 この監修者の記事一覧はこちら
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら