依存心が強い78歳の母親の世話を「家族代行サービス」へ。昼夜問わない愚痴の電話、お金の無心「親の面倒をみるのは当然」の態度に耐え切れず

2024年12月27日(金)12時30分 婦人公論.jp


(写真:stock.adobe.com)

「親の面倒は子どもがみるもの」。そんな固定観念にとらわれず、「介護」「看取り」「葬儀」までを代行業者に頼む人が増えているようです。実際の利用者たちの思いを聞きました

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依頼のほとんどが母娘


「高齢者等終身サポート事業」をご存じだろうか。入院時の身元保証や施設の入所手続き、生活支援から死後の手続きまで行ってくれるもので、独り身の高齢者向けのサービスとして始まった。しかしここ数年、高齢の親を持つ子どもが、親の介護や看取りの代行を頼むケースが増え、「家族代行サービス」とも呼ばれるようになっているという。

一般社団法人LMNの代表理事・遠藤英樹さんはこう語る。

「今はご依頼の約8割が子世代からものです。依頼主は40代後半から50代の女性が中心で、サービス対象者も女性がほとんど。つまり、『娘が母のことを頼む』というパターンがもっとも多いのです。夫に先立たれて独り身になる人が多いこと、家族のケアを担うのは女性が多いことなどが関係していると思います」

また、ニーズが高まる背景として、少子高齢化の進行がある。

「昔は子が50代、親は70代くらいが普通でしたが、寿命が延びた現在、子が70代、親が90代ということも珍しくなく、子がすでに仕事を辞めていて経済的余裕のない人が多い。また、子側はきょうだいが少なく、親戚や地域との繋がりも希薄です。認知症が激増していることもあり、昔よりも子の負担がはるかに大きい。また、『親の老後は子がみるもの』という価値観に縛られない人も増えてきました」

LMNには、「親を捨てたいけれど捨てられない」「母と距離を置くにはどうしたらいいか」という子世代の相談が日々舞い込む。

「幼少期に望まない習い事を強制する、進学や就職に介入するなど、関係がこじれるまで親の過干渉があるケースが多いですね。親としては、自分ができなかったことをさせてあげたいという愛情のつもりなのでしょう。でも、それを苦にする子もいます。また最近は、ネグレクトも増加傾向にあるようです」

母親との良好な関係を築けず、サービスを利用した人たちに話を聞いた。

お金を無心され続け


神奈川県在住の柚木文香さん(37歳・仮名=以下同)は、訪問看護師として働きながら3人の子育ての真っ最中だ。

仕事、家事、育児と多忙を極めていたところに、関西で一人暮らしをする78歳の母親から、昼夜を問わず電話がかかってきていた。愚痴や悪口など、緊急性のない暗い話ばかり聞かされ辟易した柚木さんは、2年前から家族代行サービスを利用し始めた。

契約時に44万円を支払い、通院のつきそいなどでは1回1万1000円(4時間以内)がかかる。生活全般のサポート、緊急時の対応など、母親の身の回りのことをすべて代行してくれる。

「母は依存心が強く、昔から何でも人に頼ろうとするタイプです。特に最近はお金の無心がひどくて。父が亡くなってから母もパートで働いていたけれど、退職後は年金だけでは暮らせないというので、月に2、3万円ほど金銭援助をしていたんです。

でも、送った数日後には『病院に行くから』などと理由をつけて再度要求する。もう疲れ果ててしまいました。計画的に使う気がないんです」

昔から洋服や装飾品が好きで、ほしいものは後先考えずに買ってしまう人だったという。また、家族が自分の思い通りにならないと激しく怒るが、自分は約束を破っても平気、という一面も。

「子どもの頃は自分の親しか知らないから、そんなものかと思っていました。でも結婚したら夫の両親がすごく常識的な人たちで、うちの親とはずいぶん違うと気がついたんです」

柚木さんが特に反発を覚えるのは、母親がしばしば「今まで育ててやったんだから、親の面倒をみるのは当然だ」と口にすることだという。

「もともとは老後の面倒をみる気もあったんです。でも、『自分でやるから大丈夫よ』くらいのことは言ってほしい。私は、『お母さんは自分の意思で私を産んだのだから、育てるのは義務。老後のことを見返りのように強要するのはおかしい』と、何度も言いました。でもそのたび、逆ギレされるんです」

これ以上母親につきあうと、そのストレスを家庭に持ち込んで子どもたちにも悪影響が出る。そう判断した柚木さんは、家族代行サービスを頼んで距離を置くことにした。夫も精神状態を心配し、「使って楽になるのなら」と後押ししてくれたという。

その後、母親は足腰が不自由になり、家族代行サービスに入居手続きを任せ、高齢者施設へ引っ越すことに。その際も一悶着あった。

「施設に入るしか選択肢がないことは本人も納得していたんです。でも、引っ越しを手伝いに行ったら土壇場で嫌がって……。つかみ合いになり、手を出されそうになりました。こっちは小さな子どもがいて、仕事も忙しいなか時間を作って行ったのに、『ありがとう』の一言もない」

そんな母親に最近、「彼氏」ができ、施設を出て一緒に暮らしたいと言い出しているという。

「相手も年金暮らしの借家住まいで、あまりお金はない様子。施設を出たら無心が再開するのではないかと思うと憂鬱です」

家族代行サービスのおかげで電話がこなくなり、精神的負担は軽くなったという柚木さん。だが、今後も一波瀾ありそうだ。

<2につづく>

婦人公論.jp

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