隣人の飼い猫に餌を与え家に入れていたおばあさんが告訴されるも衝撃の結末が!(スイス)
2025年5月25日(日)12時0分 カラパイア
猫を飼うとなれば日本では室内飼いが推奨されているが、国や地域、都市部と田舎、文化の違いなどでまだまだ温度差がある。
自由に外を出歩いている猫たちの中には、飼い主と暮らす自分の家のほかに、時に「別宅」を持つこともあるようだ。
スイスのチューリッヒに住む68歳の女性が、隣人の猫に餌付けをし、自分の家に招き入れていたことからトラブルになった。
女性と飼い主の話し合いはこじれ、裁判にまで発展したのだが、驚きの結末を迎えた。これはハッピーエンドなのだろうか?
よその飼い猫に餌をやり、家に招き入れた結果
この猫の名前は「レオ」と言い、チューリッヒのある家で飼われていた猫だった。だが、近所に住む68歳の年金生活者の女性が、飼い主が何度も「やめてほしい」と要請したにもかかわらず、10カ月間にわたってこの猫に餌を与え続けたという。
そこで飼い主は正式な書面を作り、レオに餌をやらないよう通告した。
だが女性はそれを無視して餌をやり続けただけでなく、自宅の玄関に猫用のドアを作ってレオを招き入れるようになった。
そのうちにレオは飼い主のもとに帰らなくなってしまい、飼い主が用意した餌が全て無駄になることもしばしば。
はた目には、レオが女性の飼い猫であるかのような事態になってしまったのだ。
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争いは法廷に持ち込まれることに
そこでとうとう飼い主は、この女性を刑事告訴することにした。その結果、検察は被告となった女性に800スイスフラン(約13万9000円)の罰金と、執行猶予付きの罰金3600スイスフラン(約62万5000円)の支払いを命じた。
これはスイスの法制度に基づくもので、女性が800フランの支払いに同意し、執行猶予期間中に問題を起こさなければ、3600フランを支払う必要はない。
だが今回、被告となった女性側は「何も悪いことはしていない」と罰金の支払いを拒否したため、争いは裁判へと持ち込まれることになった。
2025年5月、原告・被告双方がチューリヒ地方裁判所に弁護士を伴って出廷し、非公開での裁判が行われた。
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被告女性が新たな飼い主となることで合意
その結果、2人の間で和解が成立し、レオは被告女性が正式な飼い主となることで合意したという。
レオの飼い主であった原告が、飼い猫の移譲に同意した経緯や理由などは明かされていない。
だがこれで、女性は誰はばかることなく、新たな飼い主として、レオと一緒に暮らせるようになったわけだ。
当然、被告の女性は罰金を支払う必要もなくなった。なお、今回の裁判費用は、国庫がすべて負担することになったという。
「生き物の権利」に厳しいスイスの法律
以前にも紹介した通り、スイスには生き物を飼うための決まりごと[https://karapaia.com/archives/52272594.html]がいろいろある。猫の場合はこんな感じだ。
単独で飼育される猫は、毎日人間と接触するか、他の猫と視覚的に接触しなければならない
猫は3週間を限度として、1平方m以上のケージで個別に飼育することができる
猫をケージに最長3週間収容する場合、少なくとも週に5日は一時的にケージの外で運動できるようにしなければならない
そのためには、床面積7平方m以上の猫用囲いを利用できなければならない
囲い、例えば猫部屋で飼育する場合、動物福祉条例のAnnex 1 Table 11の最低要件を満たさなければならない
囲いは高さ2m以上、表面積7平方m以上でなければならない
このエリアでは、離乳していない子猫と合わせて最大4匹の猫を飼育できる
猫が1匹増えるごとに、最低1.7平方mが必要となる
例えば、成猫6匹のグループの最低面積は10.4平方mである
また、スイスでは法律上の明確な規定はないものの、猫は好きな時に好きなように外に行けるようにすべき、という考え方も根強いという。
そのため、多くの建物の壁に猫専用の外階段[https://karapaia.com/archives/52272594.html]が設置されている。
猫のように自由に歩き回るのが好きな動物の場合、「本人(猫)の意思」も尊重されなくてはならないからだ。
今回は裁判が非公開で行われたため、原告と被告の間でどのような合意があったのかについては、一切明らかにされていない。
もしかするとレオ本猫の意思が何らかの形で影響したのかもしれないし、双方がお互いに譲歩して、法的に白黒つけることを避けたのかもしれない。
レオがこの先いつまでも、安心して幸せに暮らせる環境を確保することが最優先された結果だと思いたい。
今後はご近所さん同士、そして元・現飼い主同士協力して、末永くレオを見守っていってほしいものである。