〈1泊7日で地球1周分移動の初外遊〉岩屋毅外相が考える“アジア版NATO”とは?「石破総理は自説を曲げたと言われるが…」

2025年1月18日(土)7時0分 文春オンライン


石破内閣で外務大臣に就任した岩屋毅氏。外相としての現在の活動や、今後の日本の外交面における課題について語った。(取材・構成 峰田理津子・ジャーナリスト)



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1泊7日、地球1周分の初外遊


 外相に就任するやいなや、まさに激動の日々の連続でした。国際情勢は激震が続いている。次から次へと起こる新たな事態への対応に追われながら、その激流の中で日本丸の進路を懸命に模索する毎日が続いています。



「数の力で押し切る国会運営はもはやできない」と語る岩屋氏 Ⓒ文藝春秋


 初外遊は11月14日に南米ペルーで行われたAPEC(アジア太平洋経済協力)閣僚会議です。現地では、米国のブリンケン国務長官や韓国の趙兌烈(チョテヨル)外交部長官をはじめ、参加各国の外相と立て続けに2国間会談をおこない、11月24日にはG7外相会合のためにイタリアを訪問。これまで約40カ国の外相との電話会談をこなし、国会審議を終えたあとは外務省において連日、訪日外交使節との会談をおこなっています。


 ペルーからは急遽、ウクライナへと飛びました。外相就任以来、できるだけ早く現地の状況を自分の目で確認したいと考えていたからです。ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序が崩壊し始める端緒となった大事件であり、この事態にいかに対応するかによって今後の世界秩序は大きく変わっていくことになる。我が国にとっても極めて重要な外交テーマなのです。


 ウクライナへはポーランドから国境まで約3時間を車で移動し、そこから夜行列車に乗って首都キーウに到着しました。滞在はわずか1日でとんぼ返りしましたので、初外遊を終えてみるとちょうど地球1周分に当たる4万1000キロを移動する1泊7日の強行軍となりました。


 ホテルで寝たのはリマの1泊だけで、あとは機中泊と列車泊。さすがに疲れましたが、それだけの成果はあったと考えています。


 ウクライナではまず、虐殺のあったブチャを訪問し、犠牲者の御霊に献花をおこなった。続いて、ロシア軍戦車の進撃を防ぐために自ら爆破したというイルピニの橋を視察しました。「力による一方的な現状変更は世界のどこであっても許されてはならない」という思いをあらためて強くしたところです。


ゼレンスキー氏の「勝利計画」


 続いてウクライナ要人との会談に臨みましたが、カウンターパートであるシビハ外相だけでなく、シュミハリ首相に加え、ゼレンスキー大統領とも会談することができました。プロトコール(国際儀礼)からすれば、本来、外相訪問に大統領が応対する必要はないのでしょうが、大統領は約45分も時間を取ってくれました。


 大統領府に到着すると、建物内の至るところに土嚢が積まれていました。姿を現したゼレンスキー氏は、スーツではなく、黒いシャツにカーゴパンツ姿。一見しただけで、氏がまさに戦時下のリーダーであるということを実感させられました。大統領は、ロシアの侵略を終わらせるための「勝利計画」を説明してくれ、「石破総理によろしくお伝えください。一刻も早くお目にかかりたい」との伝言をあずかりました。


 我々の訪問直後にはウクライナとロシアとの戦いは1000日を超えました。出国した直後にも、ミサイル攻撃で新たな犠牲者が出るなど、戦況は依然として緊迫した状況が続いています。1日も早く公正で持続的な平和が実現し、国民の皆さんに平穏な日々が戻ってくるように、国際社会が引き続き支援を継続していかなければならないと思います。


アジア版NATOの真意


 ウクライナ戦線には北朝鮮兵士が派遣されており、その余波がアジアにも及ぶことが懸念されます。中東ではガザでの戦闘が周辺に飛び火しつつあり、その中で人道状況は極めて悪化しています。アサド政権の突然の崩壊によってシリア情勢も予断を許しません。お隣の韓国の政情は不安定化し、先進各国の政権にも揺らぎが生じており、同盟国・米国は政権移行の真っ只中にあります。


 こうした状況で、まず日本が力を尽くすべきは、アジアの安定です。これまで推進してきた「自由で開かれたインド太平洋」への取り組みをさらに充実強化していくことによって、地域の平和と安定を確保していかなければなりません。


 石破総理は総裁選の期間中から、「アジア版NATO」の創設を訴えてきました。総理就任後、「自説を曲げた」と言われていますが、私は決してそうではないと思っています。石破総理はウクライナがロシアの侵略を阻止できなかった要因を考え続ける中で、ウクライナがNATOに加盟していなかったことが大きく影響したことに留意されたのでしょう。そこで、将来的にはNATOのように、アジアにも安全保障の“大きな屋根”を架けるべきではないかと考えた。私はそう思います。



※本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「 石破総理との相性は心配ない 」)。全文では、岩屋氏が外務大臣に就任した経緯、自民党総裁選における石破氏との共闘、国会における石破氏の印象、アメリカや中国との理想的な関係性、石橋湛山からの影響などについて語られています。



(岩屋 毅/文藝春秋 2025年2月号)

文春オンライン

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