歯磨きがインフル予防に! 口腔細菌でウイルス放出量が20倍以上の恐れも

2019年1月18日(金)6時30分 ウェザーニュース


2019/01/18 06:30 ウェザーニュース

年始のあいさつ回りやバーゲンの人混みなど、人との接触が増えがちな1月は、気を付けてはいてもインフルエンザにかかってしまう人が少なくありません。手洗いや乾燥対策など基本的な予防策はもちろん、プラスアルファの予防策として期待されているのが、お口のケアです。

お口の細菌が感染を助長!?

口腔内の細菌がインフルエンザウイルスの感染を促進する可能性があることが最近わかってきました。
人の細胞に取り込まれたインフルエンザウイルスは、細胞内で増殖し子孫ウイルスが細胞表面に形成されます。
しかし、このままでは子孫ウイルスが細胞表面に結合した状態にあり放出できません。そこでインフルエンザウイルスがもつNA(ノイラミニダーゼ)という酵素が子孫ウイルスと細胞との結合を切り離します。
こうして放出された子孫ウイルスは、他の細胞へ感染できるようになり、感染が拡大します。
私たちがインフルエンザに罹患したときに服用する薬の多くは、NAの働きを抑える薬で、NA阻害薬と言われます。

放出されるウイルス量が20倍以上に!?

口腔細菌がインフルエンザウイルスの増殖を促進する可能性に着目した研究を行っているのが、日本大学歯学部細菌学講座の神尾宜昌准教授、今井健一教授らのグループです。
実験では、インフルエンザウイルスに感染させた肺の上皮細胞に、インフルエンザウイルスと同様の酵素活性をもつNAを分泌する口腔細菌の培養液を加えました。その結果、培養液を加えなかった群と比較すると、NAを分泌する口腔細菌の培養液を加えた群では、細胞外に放出されたインフルエンザウイルス量が20倍以上にも増加していました。
また、これらの口腔細菌の存在下では、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬の作用が弱まってしまうこともわかりました。すなわち、口腔細菌のNAがインフルエンザウイルスのNAの代わりに働き、ウイルスの放出を助けてしまう可能性があるのです。

※実験は、細胞の培養液を肺の上皮細胞に加えて行った。「S. sanguinis」も口腔細菌だが、NAを分泌しないため、ウイルスの量は増えなかった

神尾先生は、次のように話します。
「NAを分泌する口腔細菌として実験で用いた菌種は、口腔細菌のなかでも最も優勢なもので、主に歯垢や舌などに生息しています。つまり歯垢が多く残るなど、口腔衛生状態がよくない環境では、口腔細菌が分泌したNAが、インフルエンザウイルスの放出を促進させ、感染の拡大が起こる可能性があります」

お口の細菌を減らすには?

そうとわかれば、口腔細菌の温床となる歯垢を取り除いて、インフルエンザ予防に努めたいものです。まずは、毎日の丁寧な歯磨きです。
取り除けない歯石や歯周ポケットの歯垢が気になる人は、歯科医院でクリーニングしてもらうのも手です。この冬のインフルエンザ対策に口腔ケアを加えてはいかがでしょうか。

参考資料など

*Kamio, N et al : Cell Molec L Sci, 72(2) : 357-366, 2015.


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