通学中に車の下敷き中学生、作新学院高生ら連携し救助「保健の授業のおかげ」…遅刻もおとがめなし
2025年2月22日(土)17時0分 読売新聞
感謝状を贈呈された(前列右から)沼尾さん、石川さん、斎藤さん(宇都宮市西消防署で)
軽乗用車の下敷きになった男子中学生を救出したとして、宇都宮市西消防署は17日、同市の専門学校副校長沼尾照男さん(64)、鹿沼市で建築会社などを営む石川治さん(64)、石川さんの会社に勤める斎藤秀男さん(56)の3人に感謝状を贈った。救出劇の陰には約10人の高校生らのサポートがあった。多くの人々の連携プレーが素早い救出につながった。(坂本諒太)
昨年12月12日朝、沼尾さんが出勤のため宇都宮市材木町内を運転していると、前方の軽乗用車が自転車の男子中学生をはねた。
「大変なことになった」
焦りながら駆け寄ると、中学生の両脚は自転車もろとも軽乗用車の下敷きになっていた。中学生は意識こそあるものの、動くことはできない。顔は青ざめ、痛みに苦しみ泣き叫んでいた。運転者の女性はショックで放心状態だった。
事故が起こったのは学生たちの通学時間。登校中で自転車で通りかかった作新学院高の飯塚羚聖さん(16)、穐谷晴さん(16)、青柳翔汰さん(16)は事故を目の前で目撃した。3人はともに1年生でクラスメート。一緒に登校する友人同士だ。
沼尾さんを手伝うべく3人は分担し、「警察連絡します」「消防連絡します」と自ら進んで連絡した。飯塚さんは事故に遭った中学生に寄り添い、「いったん落ち着いて」などと声をかけ続けた。飯塚さんは「その子がパニックになっていたので、少しでも寄り添って安心させようと思った」と振り返る。
騒ぎをみて、後から来た先輩の作新学院高生も含め、10人程度が集まった。「せーの」とかけ声をかけ、一斉に車を持ち上げようとしたが重くて中学生を引っ張り出せるほどは持ち上がらない。
途方に暮れていたところに、近くの建設現場で作業していた石川さんと斎藤さんが駆けつけた。
普段から、建設作業で重い資材の扱いに慣れている石川さん。とっさの判断で、斎藤さんに角材を持ってこさせると、手慣れた様子で角材同士で土台を作り、テコの原理で車を持ち上げた。その隙に、斎藤さんが中学生を車の下から引っ張り出し、救助に成功した。発生から10分以上たっていた。
中学生は救助されるやいなや斎藤さんに抱きつき、「本当にありがとうございました」と
飯塚さんは「保健体育の授業で事故があったときの対応を学んでいたおかげで冷静な判断ができた。今後同じことがあっても同じようなことはできる」と誇らしげだった。登校時間は遅れたが、学校側に事情を説明し、遅刻にはならなかったという。
表彰状をもらった沼尾さんは「助けるのは当たり前。中学生が無事で良かった。手伝ってくれた高校生たちにも感謝したい」と照れくさそうに語った。