トランプ氏に贈られた「金の兜」1週間で仕上げた職人技…「金が好きな大統領に」依頼、「何とかします」
2025年3月20日(木)10時47分 読売新聞
米トランプ大統領に贈られたものと同型の「金の兜」を披露する小栗社長(あま市で)
2月の日米首脳会談で米トランプ大統領に石破首相から黄金に輝く
「トランプ大統領に兜を渡したい」。今年1月下旬、翠鳳の社長・小栗努さん(47)に突然の依頼が舞い込んだ。電話の相手は鳥取市の老舗人形店「人形のはなふさ」の担当者。経緯を聞くと、外務省から「金が好きなトランプ大統領に首脳会談で金の兜を贈りたい」と打診があったという。
はなふさは翠鳳にとって30年以上にわたる取引相手。2月7日の首脳会談まで1週間ほどしかなかったが、「すぐ作れますか」と言われ、「何とかします」と答えた。
翠鳳の創業は1962年。自社工房で金属を一から加工し、主に端午の節句で飾る兜やよろいを手掛けている。2019年に一度廃業したが、顧客から存続を求める声が上がり、営業や製造現場の責任者だった小栗さんが先代から引き継いだ。以降、小栗さん自身がデザインを考案し、毎年新たな兜を生み出している。
14年には、安倍元首相が外遊先のメキシコとスリランカに贈った兜飾りを制作した実績もある。この時は、アベノミクスの「三本の矢」にちなみ、毛利元就の三つ
今回のトランプ大統領用に注文を受けた兜は、翠鳳が2〜3歳児がかぶれるようにとつくった24年の新作だ。生まれてくる子どもと家族の幸せが永遠に続くように「永遠着用兜」と命名したもので、取引価格は20万円前後という。
飾りの生地は京都の老舗「龍村美術織物」が金の糸で編み、金属のパーツは職人たちが加工し、一つ一つが丁寧に組み立てられた。極秘任務だったため、社内に周知せず、小栗さんと従業員6人で普段通り魂を込めて作りあげた。「無事にトランプ大統領のもとに届けられた」。はなふさから連絡がきた時、小栗さんは胸をなで下ろした。
近年は、後継者不足や職人不足で廃業に追い込まれる五月人形の専門店が少なくないという。首脳会談後は問い合わせが殺到し、今シーズン分の金の兜は完売した。小栗さんは「トランプ大統領に贈られたことをきっかけに、業界全体に活気が生まれてくれたらうれしい」と期待を込めた。