情弱をカモにするナンパ講師・モテコンサルの実態 多額の金を注ぎ込む「信者」ができるまで
2025年4月8日(火)17時0分 J-CASTニュース
SNSでは「ナンパ講師」や「モテコンサル」といった商売をする人々が急増した。有名アカウントはほぼ100%認証マークがつき、万単位のフォロワーを抱えている。情報にあふれ、支持率が高ければ、リプもいいねもあふれんばかりの数がつき、ファンが多いのは一目で分かることだろう。
講師アカウントを「神」として崇める人間が多いけれど、結局のところ、彼らはビジネスだ。情報に弱い客にターゲットを定め、お金を搾取するのが一般的なやり方である。一度、儲けのシステムを作ってしまえば収益を伸ばすのが簡単だからこそ、奪う側の人間がネットを中心にどんどん増えていく。
「ナンパビジネス」「婚活ビジネス」に対する疑問
アカウントを動かす「中の人」は、異性からのモテ方やナンパの効率的な方法、心理テクニックなどの知識に長けている。当たり前だが真っ赤な嘘は発信しておらず、体験を元に語るため、信ぴょう性はそれなりに高いのだろう。
経験豊富な人間なのは確かだが、よく考えると、この手のジャンルの「成功」とは何なのだろうか?とも思ってしまう。
たとえば、婚活に関してはゴールインが目的だ。けれども、ナンパはたくさんの異性を持ち帰ることなのか? それとも、ナンパを経て恋人をゲットするのが目的なのか? など、深く考え始めたらキリがない。
ようするに、何をもって成功で、一体どのような基準で講師を名乗れるのかなど、突っ込んだところまで進むと、さまざまな疑問が浮かぶ。
思えば私は10代の頃、ワイドショーで「爆モテ女子・合コンマスター」と名高いアドバイザーの女性を目にした時、なんとも言えない気持ちになった。「マスター」の称号を得ているのにもかかわらず、彼女は独り身で、今でも飲み会に参加し続ける現役プレイヤーだったからだ。
おそらく盛り上げ上手だとか、男性ウケがいいとかなどの理由で講師扱いなのだろうけど、果たして教える立場に相応しいのかは少々微妙である。
現役を退き、かつての経験をアドバイスできるから「先生」とも考えられたが、現役プレイヤーの「最高峰」だからこその「マスター」扱いなのかもしれない。
いずれにせよ、合コンのゴールであろう恋人作りから目的が外れているような気がしたのだ。だから、彼女のビジネスをスッと受け入れられなかった記憶がある。
複雑に考えすぎだろうか? でも、こういうふうに細かく、筋道立てて考えると、ナンパや婚活に関するビジネスをする人々は、非常に難しい立ち位置ではないか。ハッキリとした答えも正解もないモノを取り扱うビジネスであるため、言い方は悪いが、やり方次第で「信者」を作ることはまぁ簡単である。
たとえ講師本人がその界隈の成功者でなかったとしても、「それらしい振る舞い」を指導し、共感する人間が多ければ仕事として成り立つのだから......。
形のないビジネスのカモになると...
彼らは全く実践不可である方法は書かない。多くの人に当てはまりやすい事例を挙げる。そのため、それが読み手の心を突く。
心が揺れた人は興味を持ち、Xのスペースやセミナーに参加し、有料noteの更新がされるたびに新記事を購入。徐々に「講師に顔を覚えてほしい」「自分の成果を報告したい」なんて感情も湧き始めると、すっかり「カモ」と化していく。
立派な信者へ成長を遂げるタイプは、大きく分けると2つある。
まず1つ目は最初から情報に疎く、ここでしか情報を得られないと思い込んで固執する人。そして2つ目は、最初はビジネスそのものを馬鹿にしていたのにも関わらず、講師の説得力や発信力に惹かれて気づくと信者化していた人だ。
どちらもハマり方に大きな違いはないが、信仰心が強いと悪徳な手口を一切疑わず、簡単に多額のお金を落としていくので歯止めが効かない。
教祖と信者はオンラインや対面のセミナーを行い、SNS上でのやりとりも盛んなことから何かと距離が近い。教祖はお金さえもらえれば、信者の活動報告に懸命に耳を傾け、1人1人と向き合う。
冷静に考えるとそれが仕事なのだから非常に当たり前のことだが、承認欲求が満たされたら誰だって嬉しいだろう。特にナンパや婚活は他人へ相談しづらい内容だからこそ、自身が「カモ」の自覚をうっすら持ちながらも、独自の宗教から抜け出そうとは思わないのだ。
問われる情報を目利きする力
引っかかることが悪と断言できないのだが、教祖の言葉が「絶対」とも言い切れない。時にズレた発言やブラックなやり方もあるからこそ、たびたびこの手のアカウントは炎上する。
情報社会で生きるのは簡単ではなく、正解・不正解を見極めるにも労力がかかる。しかし、神経を研ぎ澄まさねばあっという間に喰われ、誰かの初歩的な間違いにさえ気づかないだろう。
あふれんばかりの情報を目利きする力は、現代において非常に重要なもの。どうか「教祖は1人だけ」と信じ込まず、「カモ」と呼ばれる悪徳ビジネスの財源にはならぬよう気を付けていただきたい。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。