「歩き回って腰を痛めた」「迷った」…万博会場はUSJの3倍の広さ、高齢者に電動カートやEVバス利用呼びかけ
2025年4月19日(土)11時41分 読売新聞
電動カートに乗って移動する来場者(14日、大阪市此花区で)=原田拓未撮影
大阪・関西万博の会場が広大で、歩き疲れる人の姿が目立つ。会場は約155ヘクタールで、東京ドーム33個分だ。日本国際博覧会協会(万博協会)はEV(電気自動車)バスや電動カートの利用を呼びかけているが、使い勝手が良いとは言えない。医療の専門家は「こまめに休憩して熱中症のリスクを減らすことが大切だ」と話している。(岡さくら、佐藤萌)
「似たような風景」方向感覚失う
「三つのパビリオンを回り、1万4000歩も歩いた。とても疲れた」
14日午後、人工島・
午前10時頃に来場し、米国館やベルギー館を巡った。途中で迷ったといい、「パビリオンの予約時間に間に合わないかと思った」と疲れた表情だった。
海外パビリオンを囲むように大屋根リング(1周2キロ)があるため、方向が分かりにくいとの指摘もある。
堺市の非常勤講師(68)は「どちらを向いても、似たような風景に見える。リングに沿って歩いたら遠回りになってしまった」と話した。
カート駐機所は12か所
会場は、東京ディズニーランド(約51ヘクタール)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(約54ヘクタール)といったテーマパークの約3倍の広さだ。会場の東西は直線で約1・5キロの距離がある。
万博協会は、移動手段として、外周を巡るEVバスを有料で運行。電動カートは1人乗りで、東西のゲートに約60台ずつ配置され、高齢者らに優先して無料で貸し出している。
14日に電動カートを利用した富山県射水市の女性(80)は「前日に来場した時は、歩き回って腰を痛めた。カートなら快適に動ける」と笑顔だった。
課題もある。EVバスの停留所は6か所で、パビリオンが集中するリングの内側には止まらない。電動カートは駐機場所が12か所に限られ、雨天時は利用できない。来場者からは「結局、最後は歩くしかない」との声も聞かれた。
万博協会は「高齢者を中心に、多くの人にバスや電動カートを使って万博を楽しんでほしい」とする。
熱中症、4月も懸念
夏に向けて気温が上がり、厳しい暑さが予想される。万博協会は、ミスト(霧)が出る扇風機や日よけのパラソルを設置している。
しかし、リング下の他に日陰で休憩できる場所が少なく、歩き疲れた来場者の熱中症が懸念される。近年は、4月でも気温が25度以上の「夏日」になることがあり、注意が必要だ。
大阪府医師会の宮川松剛副会長は「会場で歩く時間が長くなるほど、熱中症患者の増加につながる恐れがある。来場者はこまめに日陰やミストのある場所で休み、万博協会も休憩場所をわかりやすく明示することが重要だ」と指摘する。
過去の万博でも、会場内の移動手段の確保は課題だった。1970年の大阪万博(約330ヘクタール)では「動く歩道」やモノレールが登場。2005年の愛知万博(約173ヘクタール)では、起伏のある会場内をほぼ水平に移動できる空中回廊「グローバル・ループ」(1周2・6キロ)が設けられた。
大屋根リングの1周2キロは徒歩40分
とにかく広い。会場の取材では連日、歩数が2万5000歩を超えた。パビリオンに入れば歩く距離は伸び、待ち時間も加われば、疲労度は増すばかりだ。
大屋根リングの遊歩道に上がると、視界が開けてより広さを感じる。海側に張り出した場所は風が強く、少し歩きづらかった。1周2キロを歩くと40分かかった。EVバスや電動カートに乗っている間は足を休める時間にもなる。試しに、3〜5分間隔で運行していたEVバスに乗ってみると、その日は歩数が2万歩を切った。
歩き回り、予期せぬ出会いを楽しむのは素敵だが、足への負担を考えると、効率的に巡る作戦が必要かもしれない。(山田珠琳)