世界唯一の捕鯨母船「関鯨丸」、初のオホーツク海向け出港…人気のナガスクジラを捕獲へ
2025年4月22日(火)10時42分 読売新聞
下関港を出港する捕鯨母船「関鯨丸」(4月21日午前、山口県下関市で)=佐伯文人撮影
世界で唯一の捕鯨母船「
関鯨丸は「共同船舶」(東京)が所有しており、船団を組んで母船式捕鯨を行う。約100人が乗船しており、今回は日本海を北上して最初の漁場であるオホーツク海に向かう。同海では25日から5月末まで漁を行い、ナガスクジラ25頭を捕獲する予定という。今季は11月下旬頃までの間、下関港と仙台港(宮城県)に寄港しながら4回の航海を行い、12月2日に下関港に帰る計画だ。
同社の所英樹社長(70)は報道陣に対し、「ナガスクジラは、昨年の2倍となる捕獲枠いっぱいの60頭を捕り切る。多くの国民に口にしてほしい。6月2日予定の仙台港入港時には、生肉も上場できればと思う」と述べた。
ナガスクジラは、関鯨丸船団が1季目の途中だった昨年7月に、水産庁が捕獲可能な鯨種に追加した。同船団は同12月までに東北沖などの排他的経済水域(EEZ)内で、ナガスは捕獲枠の半分である30頭を捕獲。捕獲枠上限まで捕ったイワシクジラ25頭、ニタリクジラ175頭を含め鯨肉計1546トンを生産した。今年は生産量を昨年から約3割増やして2000トンに拡大する目標を掲げる。
一方、鯨肉の需要喚起は依然として課題だ。水産庁によると、2023年度の国内の鯨肉消費量は、輸入分や基地式捕鯨分を含め3000トンで、1962年度のピーク時の100分の1程度となっている。政府は成立した今年度の予算にも捕鯨対策として例年と同額の約51億円を計上しており、鯨食普及活動などにも充てる。水産庁の担当者は「捕鯨業界が自立できるように支援を続ける」としている。
(平木和頼、今泉遼)
鯨肉はほぼ国産、日本の食料安全保障に貢献
食材鯨食の普及などを担う一般社団法人「日本捕鯨協会」理事長を務める谷川尚哉・中央学院大教授(漁業地理学)(69)に関鯨丸の2季目について聞いた。
——今年の漁の特徴は。
「オホーツク海でのナガスクジラ漁が目玉だろう。近年、温暖化による海水温の上昇などでエサとなる魚が北上しており、鯨の生息域も北上しているとされる。この海域では目視調査で多くの鯨が確認され、日本のEEZ内で一番の鯨の漁場だと期待されている」
——母船式捕鯨を続ける意義は。
「日本には捕鯨砲を使って鯨を捕まえたり、鮮度を逃さずに加工したりといった高い技術があり、その継承は意義深い。アフリカなどには飢餓で苦しんでいる国々があり、食料は世界的な問題となっている。鯨肉はほとんど国産であり、自給率の低い日本の食料安全保障に貢献できる食材だ」