「ツカレナオース!」→「ショートツ」からの「アジダイジョウブ」…独自に進化、パラオの日本語
2025年4月28日(月)9時55分 読売新聞
きょうナショナルデー
太平洋の島国・パラオで使われている「日本語」を知ってもらおうと、京都在住の作家・佐々木良さん(40)が、現地で学んだ表現を集めた「ツカレナオース!」を出版した。パラオは大阪・関西万博に出展しており、28日がナショナルデー。佐々木さんは「客席からパラオを応援したい」と張り切っている。(畝河内星麗)
パラオは人口約1万8000人、面積は屋久島(鹿児島県)ほどの小さな国だ。1920年から約20年、日本の統治下にあった歴史から、現地のパラオ語に日本語の表現や言葉が残る。一部の州では、日本語を公用語に掲げる。
佐々木さんによると、著書のタイトル「ツカレナオース」は「疲れ」と「なおす」を合わせた言葉で、パラオでは「ビールを飲む」という意味で使われている。
ビールジョッキをぶつけ合って「ショートツ」(乾杯)し、出てくる言葉は「アジダイジョウブ」(おいしい)という具合だ。
佐々木さんは、万葉集を若者言葉で訳した「愛するよりも愛されたい」などで知られる。「新たな視点から日本語を分析できそうだ」と考え、昨年9月にパラオを訪問。現地の人と交流し、文献を読んで学んだ約260の日本語由来の言葉を選んでまとめ、今年1月に出版した。
日本統治下で激しい戦禍に遭ったパラオを扱うことに葛藤もあったが、現地の人たちは親切だったという。「今のパラオを伝えたい」。装丁に両国の国旗をあしらい、表紙の裏表はあえて定めなかった。
パラオでは「ナンデヤネン」という大阪弁もそのままの意味で使われているという。佐々木さんは「日本の方言のようにパラオで独自に進化した日本語を楽しんでほしい」と話す。
万博では、28日がパラオのナショナルデーとなる。午前11時から、会場の東ゲート側にあるホール「レイガーデン」で伝統芸能が披露され、ウィップス大統領も参加する予定だ。来場者の参加予約は必要ない。
佐々木さんは、来場者の1人として客席から盛り上げるつもりだ。「誰でも温かく迎え入れてくるのがパラオの国民性。万博を通じ、日本との深いつながりを多くの人に知ってもらえたらうれしい」と話している。
「ツカレナオース!」はA6判160ページ、定価1000円(税込み)。書店やインターネットで購入できる。