「退職代行なんて必要ない!」→実は「モームリ」運営会社でした 自力で辞める「セルフ退職」支援の理由を聞いた

2025年5月2日(金)20時11分 J-CASTニュース

本人の代わりに退職意思を伝える退職代行サービスへの注目が高まるなか、「退職代行なんて必要ない!」とうたう広告宣伝車(アドトラック)が、東京・渋谷のスクランブル交差点に現れた。

この車は、自分自身で退職する「セルフ退職」を支援するサービスを紹介。世間で賛否を起こしながらも依頼件数を伸ばす退職代行について、不要だと宣言している。だが、じつはどちらのサービスも、同じ会社が運営しているのだ。

運営会社の代表取締役は2025年5月2日、「退職代行がない未来を目指す。退職代行からセルフ退職サポートにシフトしていきたいです」と取材に語る。いま退職代行サービスが注目されているにもかかわらず、なくしたいと思うのはなぜか。その理由を聞いた。

セルフ退職支援に力を入れ始めた「退職代行モームリ」運営

広告宣伝車が紹介していたのは、アルバトロス(東京都品川区)が運営する「セルフ退職ムリサポ!」だ。24年1月15日にサービスを開始。主なターゲット層は、「自分では退職できそうにない、それでも退職代行には頼りたくない」という人々だ。

そして、この会社は、退職代行の中でも認知度が高い「退職代行モームリ」も運営。こちらは22年3月15日に開始している。つまり、セルフ退職を支援するサービスのほうが約2年ほど遅れて始まったというわけだ。

近年、退職代行モームリは注目を集めている。グーグルトレンドで同サービス名を検索すると、24年4月ごろから検索需要が伸び始めていることが分かる。新卒の会社員が入社する時期である25年4月上旬も、すぐに退職する若者がいるとSNSで話題になった。

こうした中、広告宣伝車を走らせるなどセルフ退職支援に力を入れ始めたのはなぜか。アルバトロスの代表取締役・谷本慎二氏が5月2日、J-CASTニュースの取材に応じた。

谷本氏によれば、セルフ退職ムリサポ!の広告宣伝車は、5月1日から東京・渋谷と新宿を交互に走っているという。記事冒頭で紹介した広告宣伝車の様子は、退職代行モームリの公式Xアカウントが投稿したものだ。

セルフ退職支援を始めた24年1月、この時期は退職代行の利用者が増えていた。しかし最近では、人員を増やすなどの対応で退職代行サービスも安定してきたという。そこで、25年5月からセルフ退職ムリサポ!に力を入れ始めたと、谷本氏は説明する。

「退職代行を使わなくても、確実に退職できる方法を伝える」

「退職代行がない未来を目指す」。谷本氏は、退職代行の依頼者の中でも、軽微な理由であればセルフ退職支援に促せないかと考えている。どちらのサービスでも退職できる点については同じだが、それでも自分で退職することを促すのはなぜなのか。

「退職代行に寄せられる批判としては『逃げ癖がつく』などと言われる。それはそれでおっしゃる通りだと私も思います。自分の口で退職を伝えた方が今後の会社との関係性も良くなると思うし、人の手を借りずに退職できることも大事だと思います」

また、次のようにも述べる。

「私自身は、自分で退職を伝えましょうという考えで、実際にできる。しかし、そうじゃない人々もいます。だからこそ、退職代行サービスは必要です。ただ、それをなくしていく努力はできるんじゃないか」

過酷な状況でどうしても退職できない人もいる。谷本氏は、「(こうした人々が)退職代行を使うことで、ブラック企業に対する抑止力になる。その企業の労務環境も良くなると、退職の引き止めも弱まって、辞めたいときに辞められる社会になる」と見解を示した。

だが、過酷な状況でも退職代行を使いたくない人もいるという。また、こうした深刻な状況以外でも、さまざまな人が退職に関する悩みを抱えている。最も多いのは、退職を一度断られたケース。そのほか、退職の仕方が分からなかったり、退職を伝える不安を抱えていたりするケースもある。

「退職代行を使わなくても、確実に退職できる方法を伝える。それによって、背中を後押しするサービスは必要なんじゃないか。また、法律的に退職の仕方を教わることはなく、こうした情報でサポートすることも大事だと思いました」

これまで、セルフ退職ムリサポ!に寄せられた相談は4700件。そこから実際に依頼に繋がったのは178件。今後はさらに宣伝広告に力を入れることで、サービスの知名度を上げていく方針だ。

J-CASTニュース

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