2人に1人が退職後に投稿 SNS時代の転職者と企業の新たな関係性

2025年5月28日(水)11時52分 マイナビニュース


転職市場が活性化するなか、マイナビは「SNSや口コミサイトが転職市場に与える影響」について調査・考察を行った。調査では、2024年に転職した人のうち51.3%が退職後に前職企業について投稿したと回答。20代では6割を超え、SNSネイティブ世代の発信が活発であることが明らかになった。一方で、企業側も採用活動に支障を感じるケースが多数。SNS時代の「辞めた後の声」が転職市場に新たな課題を突きつけている。以下は、同社キャリアリサーチラボによる考察となっている。
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○SNS時代に転職者が果たす「発信者」としての役割
転職市場が活発化する昨今、マイナビの調査によると五月病の影響で転職をしたことがある人が5人に1人にのぼるなど、この時期は転職を考え始める人も多い時期です。そのような中、世間では2025年4月に「情報流通プラットフォーム対処法」が施行され、より一層個人にも「情報発信者」としての「リテラシー向上」が求められるようになりました。
「令和5年版 情報通信白書」によると、日本のソーシャルメディア利用者数は1億200万人にのぼり、日本の総人口から推計すると、日本国民の8割超はSNSを利用していることになります。SNSによる情報発信の増加は転職市場においても例外ではなく、企業による採用広報での利用、転職者同士の情報交換など多岐に渡ります。
転職活動におけるSNSの利用が一般化する一方で、有害な情報や偽・誤情報の拡散、情報の偏りなどのリスクもあり、転職市場においても個人・企業ともに情報リテラシーが問われる時代になっています。特に最近では「リベンジ退職」とも言われる、退職後にSNSで前職企業の内情を暴露するなどの、攻撃的なSNS利用も問題化されており、転職者が増える傾向にあるこの時期は、特に転職者によるSNSなどの投稿も多くなるのではないかと推察されます。
今回は、SNSや口コミサイトへの投稿が映し出す“転職者の声”の実態と、企業への影響について考察していきます。
○退職者のSNS投稿、過半数が経験あり
2024年に転職した正社員の51.3%が、退職後にSNSや口コミサイトに前職企業について「投稿したことがある」と回答しました。年代別では20代が61.4%で最も多く、次いで30代が54.2%、年代が高くなるほど投稿割合は低く、50代では30.4%でした。SNS利用においてネイティブである若年層では、SNSでの情報発信に抵抗感が薄いことも影響していると考えられます。
投稿の種類では、「ポジティブ・ネガティブな内容の両方を投稿した」が47.8%で最も高く、次いで「ポジティブな内容のみ投稿した」が43.4%でした。「ネガティブな内容のみ投稿した」は1割以下となり、ポジティブな内容の投稿が多い傾向にあります。
転職者が投稿した具体的な内容を見ると、ポジティブな投稿では「成長機会が豊富」がSNS・口コミサイトともに最も高く、給与待遇が良い、会社の将来性、安定性への安心など、前職の会社に対する心理的安全性の高さがうかがえる投稿が上位となりました。
反対に、ネガティブな投稿では、SNSで「職場の人間関係の悪さ(9.3%)」、口コミサイトで「休日や残業時間などの待遇面での不満(10.5%)」が最も高く、前職の会社の待遇や人間関係の不満、また上司や経営者・会社への不安感なども上位にあがっています。
○企業の採用活動に与える影響
マイナビ「企業の雇用施策に関するレポート2025年版(2024年実績)」によると、中途採用担当者の65.9%が、SNSで「自社の仕事をほのめかす投稿」や口コミサイト上に「自社のネガティブな情報」を見かけたことがあると回答しています。
中途採用担当者に、口コミサイトで見かけた自社のネガティブな投稿の内容や、感じた課題感を自由回答で尋ねると、「ありもしない嘘を書かれて、面接がしにくくなった」「ハラスメントがあったと書かれたが、内部調査してもそんな事実はなかった」など、会社への誹謗中傷をはじめ、度を超えた投稿により、会社のイメージダウンだけでなく中途採用活動にも支障をきたしていることが分かりました。
○中途採用担当者の対応と負担
SNSや口コミサイト上の自社に関する投稿を「日ごろから目視で確認している」中途採用担当者は4割を超えており、「SNSの不適切投稿がないか日ごろから目視で確認している」が41.7%、「口コミサイトの投稿を定期的に目視で確認している」が41.4%という結果になりました。
人手不足や転職の一般化により、近年の転職市場は売り手市場となっています。企業の中途採用担当者も採用が容易とは言えない中、SNSや口コミサイトの投稿内容の確認や、訂正・削除依頼など、採用業務と直接的に関係の薄いタスクを並行して行うことは、担当者の業務負荷を増やす要因となっています。
○調査者コメント:発信は止められない、企業は関係性の改善を
【取材対象者】
株式会社マイナビ
キャリアリサーチラボ 主任研究員
関根 貴広(せきね たかひろ)
中途領域・非正規領域を担当。2006年にマイナビに中途入社。『人材派遣』の営業職・マーケティング職を経て、2020年4月より現職。
今回の調査では、転職者はSNSや口コミサイト上で前職の企業についてポジティブな情報を多く発信している傾向が見受けられました。しかし、残念ながらネガティブな情報が一定数発信されているケースもありました。
中途採用においては「リファレンスチェック」※を行う企業もあり、4割強の中途採用担当者がSNSや口コミサイトの投稿を日ごろから確認していることから、退職後に前職企業について度を超えた内容の投稿をすることで、自身のキャリア形成にネガティブな影響を与える可能性も考えられます。
また中途採用活動を行う企業においては、退職者の投稿が企業のイメージダウンにつながるだけでなく、採用業務と並行してSNSや口コミサイトへの投稿の確認や訂正・削除依頼の実施など、採用活動には直接的に関係のない負荷が生じている様子がわかりました。
SNSが普及する昨今、個人の発信を根本的に止めることは難しいですが、企業はできる限り退職者によるネガティブな投稿がされないよう、従業員のエンゲージメントを高めるために、定期的に満足度調査を実施したり、従業員とのコミュニケーションの場をつくるなど、良好な関係性を築く努力を行うことが、解決の第一歩になるのかもしれません。
※マイナビキャリアリサーチLab「採用のミスマッチを防ぐリファレンスチェック」(リンクはこちら)
○【調査概要】
① 転職動向調査2025年版(2024年実績)
調査期間:2024年12月16日(月)〜12月25日(水)
調査方法:インターネット調査
調査対象:正社員として働いている20代〜50代の男女のうち、2024年に転職した方
調査主体:株式会社マイナビ(アンケートモニター提供元:外部調査会社)
※端数処理の都合により合計が100%にならない場合があります
② 企業の雇用施策に関するレポート(2025年版)
調査期間:2024年12月18日(水)〜12月25日(水)
調査方法:インターネット調査
調査対象:従業員数3名以上の企業において、2024年に中途採用業務を担当し「採用費用の管理・運用」に携わっている人事担当者
調査主体:株式会社マイナビ(アンケートモニター提供元:外部調査会社)
※端数処理の都合により合計が100%にならない場合があります

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