東証インサイダー事件「証券市場の公正さを根底から揺さぶった」…元社員と父親に猶予付き有罪判決

2025年5月9日(金)17時54分 読売新聞

東京地裁

 業務で知った企業の未公表情報を父親に伝えたとして、金融商品取引法違反(情報伝達)に問われた東京証券取引所元社員(27)に対し、東京地裁は9日、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金100万円(求刑・懲役1年6月、罰金100万円)の判決を言い渡した。大川隆男裁判官は「市場開設者の従業員の犯行で、証券市場の公正さを根底から揺さぶった」と述べた。

 同法違反(インサイダー取引)に問われた父親(58)は、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金100万円、追徴金約2116万円(求刑・懲役1年6月、罰金100万円など)とした。

 判決によると、元社員は、東証の「上場部開示業務室」で企業の適時開示に関する相談の受け付けを担当していた昨年1〜3月、上場企業の株式公開買い付け(TOB)に関する未公表情報3件を父親に伝達。父親はこの情報を基に、公表前に計1万5200株(計約1707万円)を買い付け、株価値上がり後に売却して400万円超の利益を得た。

 判決は、元社員が立場を悪用した犯行で投資家の信頼を甚だしく損ねたとし、「父親を喜ばせたかった」との動機は「安易で酌量の余地はない」と批判。自己の利益のために情報を求めた父親については「浅ましく、利欲的な動機は強い非難に値する」と述べた。ただ、元社員が懲戒解雇されたことなどを踏まえ、執行猶予を付けた。

 大川裁判官は判決言い渡し後、元社員に「どんな職業にも『それをやってはおしまい』な領域がある。東証職員がインサイダー取引に関与するのは信じられないこと。なぜ職業人として守れなかったのか見つめ直してほしい」と説諭。元社員はうなずきながら聞き、一礼して退廷した。

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