「オレを殺すか、ヨリを戻すかだ」全治16日間のケガ、実家は全焼する事態に…“メンヘラ気質の彼氏(26)”と別れようとした女性(23)に訪れた不幸(2019年の事件)
2025年5月11日(日)18時0分 文春オンライン
「オレを殺すか、ヨリを戻すかだ」——付き合うごとに「疲れ」を感じてしまう男性と、恋人関係だった23歳の女性。やがて別れ話を切り出すと、男は恐ろしい脅迫行為を働くように…。2019年に起きた放火事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『 実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/ 続き を読む)

◆◆◆
「お前を殺してオレも死ぬ。お前の家族も殺してやる」
事件の被害者となる竹下香織さん(当時23)の家庭は、両親が不仲でギクシャクしていた。それというのも、父親の浮気が発覚したからだ。毎日のように「離婚」について話し合いをしている両親の姿を見るのがイヤで、香織さんは家出同然の生活を送り、なかなか家に帰りたがらなかった。そんなときに知り合ったのが関龍次(同26)だった。香織さんが行きつけにしていた居酒屋で「ダーツのプロ」として紹介された。香織さんは関の神業のような技術に驚愕した。
関と何度も顔を合わせるうちに親しくなり、1カ月後には交際に発展。家に帰りたくないという悩みを相談すると、「じゃあ、一緒に暮らそう」と同棲を持ちかけられた。香織さんは何度も関の家に泊まった。
だが、夏になると、エアコンのない関の家は寝苦しくなった。そこで香織さんは「それなら私の家に住めばいい」と提案し、家族に「彼氏」として紹介した。
「彼の家のエアコンが壊れちゃったの。車の中で寝かせるのはかわいそうだから、自宅に泊めてあげてほしい。すぐ出て行くから」
両親はただでさえ家に寄りつかない娘が、反対すると本当に出て行ってしまうのではないかと思い、受け入れることにした。こうして香織さんと両親、兄、祖母が同居する自宅に関が入り込むことになった。
関は「2人で暮らすための金を作る」と言って、真面目に働いていた。そんな娘カップルを見ていて、両親も自分たちの生活を見直し、離婚話を撤回した。
すべてがうまくいっていたはずなのに、香織さんは関との付き合いに、だんだんと「疲れ」を感じるようになった。
「お父さん、関と結婚したらどう思う?」
「お前が幸せならいいんじゃないか」
「でも、けっこう束縛が強いんだよね。友達と遊びに行くと怒るし、大学のサークルに参加しても怒るし」
「それは社会人になったら困るだろうな。そのあたりのことはよく考えた方がいいぞ」
「分かった」
香織さんは次の行動が早かった。いきなり、関に別れ話を切り出したのだ。というのも、アルバイト先に気になる男性が現れたという事情もあった。
関は自宅から追い出され、翌日から泣きながら何度も電話をかけてくるようになった。
「やり直したい。お前がいない人生なんて、生きている意味がない。悪いところは直す。こうなったら、お前の写真をユーチューブに上げながら死んでいく…」
それでも香織さんが無視していると、関はだんだん脅迫的なことを言うようになった。
「お前を殺してオレも死ぬ。お前の家族も殺してやる。お前が誰かと幸せになることを考えるのはしんどい」
香織さんが他に好きな人ができたことを打ち明けると、「そいつの目の前で殺してやる。調べるのは簡単だ。お前の大切な奴を全部殺すからな」と脅された。
「オレにもチャンスをくれ。期間限定でいい。1〜3カ月でもいい。オレが変わったところを見てほしい」
ここまで言われれば、仕方ない。香織さんは関の要求を飲むことにした。
「オレを殺すか、ヨリを戻すかだ」
ところが、その後も関の執拗な脅迫は続いた。
「元に戻るか、オレを殺すか、どっちかにしろ。二択だよ」
「えっ」
「お前の大切な奴を殺すのが三択目だよ」
関は「不法滞在の中国人に頼めば、殺しなんかいくらでも引き受けてくれる」とか、「すでにお前の家の住所は教えてある。あとは電話するだけだ」などと言って脅した。
「それだけはやめて!」
「それならオレを殺すか、ヨリを戻すかだ」
香織さんは関にカッターナイフを手渡された。
「戻れないなら、オレを殺せよ。正当防衛で4〜5年で出て来られるぞ」
「それはできない。私が死ねば解決するの?」
「それはないよ。こんなに愛しているんだから。そんなことをしたら、お前の大切な奴を殺しに行くよ」
これ以上、関を怒らせれば、本当に家族や友人を殺しに行くかもしれない。
「もう分かった。何も言わない。これからも一緒にいるし、どこへも行かない」
「誓えるんだな」
「誓う」
「浮気したら、そいつも殺すし、家族も殺すぞ!」
香織さんは頭が真っ白になり、自宅に帰ってから父親に今日までの関の言動について話した。父親は香織さんからスマホを預かった。
〈すべて壊してやるからゼロになれ〉
〈父です。もう娘を追い込まないでくれ。この携帯は私が預かる。もう娘には会わせないから、連絡してこないでくれ〉
〈話をさせてください〉
〈キミのお母さんと私と同席なら、会わせてやることもやぶさかではない〉
〈2人で会えないならいいです。荷物を取りに行きますから、玄関先に置いておいてください〉
自宅にやって来た関とは、父親が対応した。
「オレが話したこと、全部知ってるんですか?」
「だいたい知ってるよ。今回は縁がなかったと思うんだね。また落ち着けば、会える日も来るだろう」
「いや、もう二度と会うことはありませんから…」
関は一礼して帰って行った。これで終わったと思っていた。ところが、香織さんのスマホに〈すべて壊してやるからゼロになれ〉というLINEが届いたのだ。香織さんは言った。
「あいつはそんなに甘い奴じゃないよ。何を仕掛けてくるか分からない」
父親は玄関のオートロックの暗証番号を変えた。寝る前にはすべての窓が施錠されていることを確認した。明日にも警察に相談して、防犯カメラを取り付けなければならないと思っていた矢先、問題の事件が発生したのだ。
突然の家事、家は全焼する事態に…
「ドーン!!」
深夜2時過ぎ、家が揺れるほどの爆発音が響いた。扉を開けると、廊下から熱風を伴う煙が入ってきた。
「火事だ!!」
父親は娘と息子の部屋へ行き、2人の無事を確認してから、ベランダから脱出させた。1階で寝ていた祖母はいち早く庭へ出ていた。
母親だけが逃げ遅れ、3メートルもの高さがあるひさしの上から飛び降りたため、着地したときに右足首挫傷で全治16日間のケガを負った。家屋は全焼した。
〈 《懲役は…》フラれた腹いせに「恋人の実家」にガソリンをまいて全焼…『元カノ一家を焼き殺そうとした』26歳男の末路(2019年の事件) 〉へ続く
(諸岡 宏樹/Webオリジナル(外部転載))
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