高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ まだまだ下がらぬコメの値段、カギはJA抜きの「備蓄米直接販売」だ

2025年5月15日(木)17時0分 J-CASTニュース

前回の本コラムでは、経済理論を使って、コメの価格を下げる方法を提示した。要するに、コメの価格は需要と供給で決まるが、供給不足なので価格上昇しているので、供給として備蓄米をさらに50万トン程度以上放出すれば、50%程度の価格低下が見込まれるのだ。

備蓄米落札したのは大半がJA

今回は、それを実行するために実務的な方法を提示してみたい。農水省の備蓄米放出は、買戻し条件付売渡しであるが、そもそもこの条件は不要だ。しかも、売渡対象者として、(1)年間の玄米仕入量が5000トン以上の集荷業者と(2)卸売業者等への販売の計画・契約を有する者という2条件が課せられている。

この結果、第1回入札で7業者が落札し全国農業協同組合連合会(JA全農)が落札量の93.7%、第2回入札で4業者が落札しJAが落札量の94.2%を占め、ほぼJAの独占市場となっている。これまでの3回の入札はJAを含めて10業者しか参加していない。

農水省の今のやり方は業者しか想定していない。買戻条件を外して、仕入量基準を引き下げる工夫もJA独占を改善するためには必要だろうが、さらに一歩進めて、一般国民への直接販売に乗り出すことも検討したらいい。

政府が直接販売する技術的な障害はないはず

ネットを調べても、農家から直接消費者への販売サイトも少なくない。筆者の関心あるところでも、造幣局は直接販売サイトで記念通貨を販売している。ちょっと毛色の変わったところでは、国税庁の税金滞納者の差し押さえ財産もオークションされている。これは、全国約1900の行政機関が参加している官公庁オークションサイトが利用されている。食べ物であるコメをこのサイトで扱うのは適切かどうか分からないが、今の時代、政府が直接販売に乗り出すことの技術的な障害はないはずだ。むしろ、国民が求めることに直接対応できる方のメリットが大きく、JAによる買い手独占を是正するチャンスともいえる。

筆者が、政府によるコメ直接販売をいう理由はまだある。話はまったく異なるが、政府は財政危機を理由として国債販売に消極的だ。財政危機は統合政府のバランスシートを見れば、G7(主要7か国)の中で2番目に財政状況はよく、国債は優良な投資対象だ。筆者はかつて大蔵省で国債発行担当であったが、先日NHKで国債販売が大変という番組があった(編注:4月13日放送のNHKスペシャル「未完のバトン 第1回 密着『国債発行チーム』」)。政府の財務状況をバランスシートで説明すれば販売は容易であるにもかかわらずだ。ちなみに、国債の国民への直接販売はアメリカなどでは普通に行われているが、日本では金融機関経由だけだ。個人への直接販売も考えないで、国債が売りにくいとは情けないではないか。筆者が開発に関わった最強国債である物価連動国債を入手できない国民は不幸だ。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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