卯の花くたし 日本人の感性が生み出した長雨を表す言葉

2020年5月17日(日)15時0分 ウェザーニュース


2020/05/18 11:13 ウェザーニュース

本州の梅雨入りはもう少し先なはずですが、この先しばらくはスッキリしない天気が多くなりそうです。
5月半ばから6月初めにかけての頃は、梅雨にはまだ少し間があるのに、曇り空になったり雨がしとしと降り続いたりすることがあります。
このような梅雨入り前の長雨のことを表現する言葉に、「卯の花(うのはな)くたし」があります。

卯の花 卯木の花

「卯の花」は、北海道から九州の広い地域にみられる卯木(うつぎ)の花のことです。
「くたし」は物を腐らせることを意味する名詞で、動詞の「くたす」から派生したものです。
つまり「卯の花くたし」とは、卯の花を腐らせるほどにしとしとと降り続く雨、という意味をもつ風情のある言葉で俳句などの初夏の季語として使われます。

昔の日本人は植物で暦を表現

「卯の花くたし」の他にも、季節にちなんだ呼び名をもつ雨があります。
特に春から夏にかけては農業にとって大切な雨が降ることから、この時期の雨には植物の名前の付いた雨が数多くみられます。
初春の頃に降り続く長雨は、ちょうど菜の花が咲く頃と重なるため、「菜種梅雨(なたねづゆ)」といいます。
その後5月前後にもなると至る所でタケノコが生えてきます。
この頃に降るしとしととした雨のことを「たけのこ梅雨」と呼びます。
そして5月半ば頃からの雨は、梅雨の時期が近づいていることを知らせる「卯の花くたし」です。
その後、梅の実の熟す頃に、本格的な「梅雨」がやってきます。
これらの言葉は同じような天気現象を表現したものです。
しかし、昔の人たちはその時期に見られる植物を暦代わりに利用して、季節を敏感に感じ取ってきたのです。
まさに日本人特有の感性と生活の知恵であるといえるかもしれません。
家で過ごす事が多い今、ゆっくりと窓の外を見ながら、季節を感じてみるのはいかがでしょうか。

参考資料など

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)


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