「町田」と言えば東京都内からよりも神奈川県からの方が行きやすいことで有名。東京と神奈川の境目タウンには何があるのでしょうか。行って確かめてみました。
町田市と言えば、東京都・多摩地区を代表する繁華街の一角。一方で市全体が神奈川県にグサリと食い込んでいるような独特過ぎる地理のため「実質的に神奈川県」などと呼ばれることも多く、東京都民にとってはややなじみが薄い印象があります。実際に降りてみると2本の鉄道路線の間に数々のショッピング施設が林立している一方で、そこから外れた場所ではまた別の景色にも出会えるなど、さまざまな見どころがある街なのです。
JRの駅には大型商業施設が3つも直結!

JR町田駅には、3つもの商業施設が直結しています。「ルミネ町田」は町田を代表するショッピング施設の1つ。1999年に開業し、それから四半世紀以上も町田の街並みを見守っています。

「町田マルイ」はさらに古い1980年に創業しました。中央改札口直結というアクセスの良さも魅力で、2014年の大規模リニューアルによって雑貨やカフェ、飲食店が充実しています。

デッキから地上へ降りて東方向に少し進みます。

JR町田駅のターミナル口直結の「ミーナ町田」は2008年開業。最近では2023年に大規模改装を行い、中でも「ユニクロ」は3フロア・約3600平米と西東京エリアで最大級となっています。

ちなみにJRのターミナル口があるのは、ふたたびデッキを上がったミーナ町田の2階。ほかのJR出口からはだいぶ離れているため、注意が必要です。

その近くにある「町田ターミナルプラザ」と市民広場があるのはバスターミナルの直上。立体駐車場や「ドトールコーヒーショップ」などもあります。

市民広場では広々したスペースで、多くのイベントが行われているとのこと。大きな銀色のアーチが目立ちますが、片方の脚の部分が北方向、もう片方が南方向を示しています。

ミーナ町田とデッキで直結しているのは「町田市立中央図書館」。JRのターミナル口からであれば地上の道路を横断することなく、デッキで直行できるので便利ですね!
こうした施設が全て駅の目と鼻の先にあるのが町田のすごいところ。しかし、本当の町田歩きはここから!
ローカル感漂う「西のアメ横」
町田ターミナルプラザ市民広場から、再び地上に降りて歩いてみます。
町田仲見世商店街

町田ターミナルプラザ市民広場から、再び地上に降りて歩いてみます。すぐ近くの場所にあるのは、大きな商業施設とは真逆のレトロ&ノスタルジックな「町田仲見世商店街」。

戦後の混乱期に創業しており、「西のアメ横」とも呼ばれています。天井の低いアーケードに個人商店が連なっている姿は確かにアメ横チックですね……!

入り口にある和菓子屋「マルヤ製菓」は有名な人気店。では「生クリームきなこたい焼き(税込380円 ※取材時)」なるものを発見。甘いもの好きとしてはすごく気になります。

実際に買ってみると……クリームが極厚! ひと昔前にはやったマリトッツォにも似ている盛り方ですが、クリームのボリュームはこちらの方がさらに上。きなこと合わさった味もまろやかで大満足なスイーツでした!

町田仲見世商店街の中には、ほかにも行列のできるお豆腐屋さんや、まぐろ中落ちや大トロステーキを激安で買える鮮魚店、小籠包の超人気店、ビリヤニやラーメン店など、特徴的で注目のお店がさまざま! 町田でも屈指のディープスポットです。
ぽっぽ町田

そのすぐ近くにあるのは、名前がかわいいローカルな複合施設「ぽっぽ町田」。幅広い市民向けのイベントスペースのほか、観光案内所「まちの案内所 町田ツーリストギャラリー」や、屋外にはおしゃれな「スターバックスコーヒー」もあります。

ぽっぽ町田の入り口前広場では、取材時に骨董(こっとう)品蚤(のみ)の市が行われていました。このほか「スマートマルシェ」など、ファミリー層向けのイベントが多く行われているようです。

また、地元密着のスポットとして「町田ターミナルロード商店街」も多くの人が行き交っています。こちらも仲見世商店街と同様に長い歴史があり、毎月1日には「朝マルシェ」も開催されているようです。
JR〜小田急線の合間にどれだけお店があるのか

「町田ジョルナ」は1976年開業の老舗ファッションビル。2016年には大規模リニューアルが行われました。

向かいの複合商業施設「ティップス町田」には「ビックカメラ」もあります。

「ドン・キホーテ町田店」も発見しました。

ターミナルロード商店街の西端にある「町田東急ツインズ」は、原町田大通りを挟む形で「EAST館」「WEST館」が並んでいます。JR町田駅からデッキで徒歩1分というアクセスの良さも長所です。

東急ツインズWEST館に隣接する「コビルナ町田」には「町田市マイナンバーカードセンター」があり、公共サービスの利用にも便利。

同じくWEST館に隣接の「町田モディ」は5〜6階に「ロフト」が入居しています。

小田急線の方の町田駅へ向かいます。駅から駅へ、距離としては短いのですが、あちこちの商業ビルをのぞきながら歩くと結構な時間がかかりました。
小田急町田駅からは空港へのリムジンバスも

小田急町田駅直結の「小田急百貨店町田店」は1975年開業と、この地域ではかなりの老舗。令和が始まった2019年には大規模リニューアルを行っています。

なお、JR側だけでなく小田急側にもバスターミナルが。こちらからは高速バスで成田空港にも羽田空港にも行けるようです。

駅方向に歩いていくと、デッキの上にいたはずなのに地上へ出てしまいます。不思議な感覚ですが、町田駅周辺は北側が高く、南側が低い地形となっているため、このような接続になるそうです。

小田急線とJR、2つの町田駅に挟まれた商業施設を並べるだけで、すごいボリュームになってしまいます……。ここまで商業施設や商店街が密集するようになった背景には、
(1)鉄道会社の異なる2駅が短距離で並んでいて乗換えの人流が集中しやすい
(2)新宿・横浜・八王子など都市圏の中間にあって広域から人が集まりやすい
ことなどが関わっているようです。
小田急線の駅西側〜北側は一転してのんびり
小田急線とJRの駅間が大にぎわいなことを紹介してきましたが、その外側はどうなっているのでしょうか。ここからは町田のもう1つの顔を見ていきます。

小田急線町田駅の西口ロータリーは、東側とは正反対でゆったりした雰囲気。

ロータリーに面した商業ビル「町田パリオ」は1975年開業。ビル名のロゴがレトロですね。

お買い物の際はロータリーに面した「西友」が便利です。

そこから近い北口より伸びているのは商店街「まほろ横丁」。
三浦しをん氏の小説『まほろ駅前多野便利軒』(文藝春秋)が映画化された際に、舞台のモチーフとなった地元商店街が地域活性化のために現在の名前にしたそうです。

横丁内にはコンパクトで個性的なお店がさまざま。東側と比べて人流も広告も落ち着いた雰囲気ですが、ブランドショップや量販店の並ぶ東側とはまた違った趣があります。
織田信長に豊臣秀吉……歴史マニア必見の美術館!

横丁を途中で右折し、少し行った先にある「泰巖(たいがん)歴史美術館」は2020年開館の、歴史マニア必見なスポット。織田信長や豊臣秀吉など「戦国武将」に関する展示が行われており、館名も織田信長の戒名「総見院殿贈大相国一品泰巖尊儀(そうけんいんでん・ぞうだいしょうこく・いっぽん・たいがんそんぎ)」に由来しているそうです。

さらに先へ進むと、広大な芝生が。「町田シバヒロ」は町田市の旧庁舎跡地に開園した多目的広場で、現在はスポーツイベントやフリーマーケットなどに幅広く活用されています。取材時はアウトドア系のイベントが行われており、大勢の人が集まっていました。
商業地帯という印象の強い町田も、小田急〜JRに挟まれていない地域では地域の文化やコミュニティー作りが中心の街づくりが行われているようです。

また、実は町田はラーメン激戦区。駅周辺ではラーメン屋をあちこちで見かけました。東京都西部のラーメンといえば「八王子ラーメン」などが有名ですが、町田にも独自のラーメン文化があるのかもしれないですね。
自転車で頑張れば町田から「江ノ島」まで行けちゃう?
喧騒(けんそう)から少し離れて、町田駅の近くで散歩をしたくなった際は、JR町田駅から南側に行き、神奈川県相模原市との間を流れる「境川」沿いを歩いてみてはどうでしょうか。

JR町田駅・南口のロータリーは西口以上に静か。とにかく人が多い北側とは別の街のような雰囲気すらあります。

JR町田駅の南口には「ヨドバシカメラマルチメディア町田」が隣接。駅南側で大きな商業施設はここのみです。なお、ヨドバシカメラ周辺は厳密には東京都町田市でなく、神奈川県相模原市に含まれています。

ヨドバシカメラから境川までは歩いて10秒もかかりません。

こちらの「境川ゆっくりロード」は自転車・歩行者専用道路となっており、ランニングやサイクリングに最適。JR町田駅から非常に近いのも魅力です。

全長は14.5kmに及び、下流で神奈川県の「藤沢・大和自転車道」と接続。頑張っていけば湘南の江ノ島まで、平坦な道をサイクリングできますよ。
学問の神様がいる「町田天満宮」も

境川沿いを東方向に散歩し、途中で左折した先にある曹洞(そうとう)宗「宗保院(そうほいん)」は1542年創建。江戸時代以前から町田地域で崇敬(すうけい)を集めてきたお寺です。

そこから少し歩いた場所の「町田天満宮」は学問の神様・
菅原道真公が御祭神です。さまざまな年中行事に加えて、毎月1日に「骨董(こっとう)市」が行われています。

境内はとても閑静で、電車や自動車の音も遠く、ふんわりと神聖な気配をまとっています。多くの狛犬が見守っているのも特徴で、おごそかな運気やパワーをもらえそうです。
鉄道路線で区分けされるように、色合いが変わる街

現在の町田は、まさに電車によって作られ、電車で区切られた街。一大ショッピングエリア、のんびりした街づくりの進むエリア、散歩や歴史散策に適したエリアと、鉄道路線で区分けされるようにして、地域ごとの色合いが大きく変わっているのが特徴です。

今回紹介したもののほか、「町田市民文学館 ことばらんど」「町田市立国際版画美術館」「芹ヶ谷公園」など、魅力的なスポットも各所に点在しています。観光によしショッピングによし、町田の魅力を深堀りするのは時間がかかりそうです。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)