富士スバルライン沿いにオオバコやセイヨウタンポポなど外来植物繁殖、車のタイヤに種子付着か

2025年5月29日(木)16時0分 読売新聞

調査のために車両の泥を落とす調査員(22日、山梨県富士吉田市で)

 富士山の自然を外来種から守ろう——。山梨県は今年度から、麓と5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」沿いに外来植物が繁殖していることを受け、原因究明に向けた実態調査に乗り出した。調査の対象となるのは「車のタイヤ」だという。(涌井統矢)

 県自然共生推進課によると、富士山ではこれまで、登山者が多く集まる5合目周辺でオオバコやセイヨウタンポポなどの外来植物が確認されてきた。

 登山者の靴に種子が付着するなどして持ち込まれている可能性があるとして、2020年からは登山者が入山前に靴の汚れを払うためのマットを5合目付近に設置、22年には麓の駐車場にも増設するなどの対策を講じてきた。

 ただ、自家用車やバスでの通行がほとんどであるスバルラインの5合目までの道中でも近年、5〜7月には特定外来生物「オオキンケイギク」などが発見されている。

 北米原産の多年草で鮮やかな黄色い花を咲かせるのが特徴だが、繁殖力が強く在来種への悪影響があるとして積極的防除が必要な「緊急対策外来種」にも指定されている。

 富士山には、フジハタザオなどの固有種や、フジアザミ、ムラサキモメンヅルなどの貴重な高原植物が育っており、影響が懸念される。

 高山植物の観賞を楽しみに訪れる登山者もおり、県では、このオオキンケイギクなどの外来種の種子が車のタイヤに付着し、スバルラインに持ち込まれている可能性があるとみて、調査の必要があると判断した。

 調査は、5〜9月にかけて月に1回、周辺を訪れる車両を対象に協力を依頼し、富士吉田市の県富士山科学研究所の駐車場で、タイヤ付近の付着物を採取、種子の有無や種類などを分析していく。

 車両に種子が付着するのかを調べる事例は珍しい手法といい、今後、計30台を目標にサンプルを集め、年度内に報告書を取りまとめる方針だ。

 22日には同所でデモンストレーションが行われ、県から委託を受けた「環境アセスメントセンター」(静岡市)の調査員ら4人が、乗用車のタイヤ付近の汚れを高圧洗浄の水で落とした後、付着物を採取するまでの流れを確認した。調査も同日から開始し、一般車両2台から採取したという。

 調査への協力は、県のホームページなどからの事前申し込みも受け付けており、県自然共生推進課の小泉友則課長は「外来種が持ち込まれる経路や実態の把握に努めて、富士山科学研究所とも連携して今後の対策に活用していきたい」と話した。

県内各地 対応追われる

 特定外来生物の問題は県内各地で起きており、自治体が対応に追われている。

 富士スバルラインと同様、オオキンケイギクに悩まされているのは韮崎市。数年前から釜無川沿いや国道20号で確認されるようになり、毎年5月、市民らを集めて駆除活動を行っている。

 近年は、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域(エコパーク)に認定された南アルプスにある甘利山の麓でも発見された。レンゲツツジの名所としても知られており、市民生活課の担当者は「対策の強化が必要だ」と語気を強める。また、笛吹市でも群生している姿が見られ、市が駆除の協力を呼びかけるなどしている。

 富士河口湖町では、北米原産のウリ科「アレチウリ」が2010年に河口湖畔で確認された。繁殖力が強く、湖岸のヨシに覆いかぶさって日光を遮断し、ヨシが枯死してしまう被害が出ている。ヨシは湖に生息する魚らの産卵場所にもなっており、影響も懸念されている。

 町では13年から町民らを募った駆除作戦を展開するなどしており、同町環境課の担当者は「河口湖の生態系や景観を守るためにも、継続的に駆除していかなければならない」と話した。

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