熱海・土石流災害の教訓 経験則は通らない 早期避難の促進が鍵に

2021年7月4日(日)20時45分 ウェザーニュース

2021/07/04 20:37 ウェザーニュース

梅雨前線による影響で7月1日(木)から断続的に雨が強まり、特に2日(金)から3日(土)朝にかけて大雨となりました。これにより、静岡県熱海市の伊豆山地区で3日(土)に土石流が発生し、100棟以上の建物を巻き込む大きな被害が発生しました。

静岡県熱海市[網代]
1日(木)〜3日(土)で観測された降水量

1日(木)から3日(土)24時までの72時間降水量は静岡県熱海市網代で411.5mmと、7月としては観測史上最大の降水量。たった3日間で、平年7月の1か月分の約1.7倍の雨が降ったことになります。
この長時間にわたる降水の影響で地面に含まれる水分量が非常に多くなり、地盤が緩んだことで斜面が崩れやすくなっていたと考えられます。

土石流とは?

今回、伊豆山地区で発生した土砂災害は、現地映像や被害の状況から「土石流」であるとみられています。
「土石流」は渓流に添って、大量の土砂や岩石が水と一緒に高速で流れ下る現象で、昔は「山津波(やまつなみ)」とも言われていました。また、早いスピードで大きな石とともに流れてくるため、発生すると被害が大きくなります。
土石流による災害は急勾配の谷や川でよく起こります。特に、過去に土石流が発生した渓流は再び発生しやすく注意が必要です。このような危険な地域は「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」として指定されています。
今回の熱海市で発生した土石流について、立命館大学理工学部 河川工学教授の里深 好文さん(以下、里深さん)にお話を伺いました。

熱海土石流:発生には十分すぎる雨だった

「『観測史上最大の…』という言葉をよく耳にするが、熱海の現地の方の声を聞いても、『こんなことは数十年ではじめての経験』という方も多く、雨の降り方が近年で変わってきているのが伺える。
300mmを超えるような雨は十分に土石流が発生しうる降水量と思われてきた。今回は熱海市周辺でも300mmを超える雨が降り、土石流が発生しても不思議ではない状況だった。
また、災害が発生した地域は土砂災害危険箇所にも指定されている場所なので、今回の土石流の発生は決してありえない話ではなかった。」
(次に、「今回の災害を教訓に、我々が土石流から身を守るためにはどのような行動をすればよいか」について、里深さんに伺いました。)

教訓1:災害が発生するものと想定し「情報に対して敏感になる」

「近年の気候変動により大雨の頻度が多くなり、これまでの経験則では通じないような雨の降り方になっている所が多くなっている。
一方、昔と比べると避難判断に必要な情報量も多くなり、高精度になってきている。そのため、被災リスクを減らすためには、土砂災害危険度、河川の洪水情報など、発表される情報に対して敏感になることが必要である。」

教訓2:情報発信者が情報受信者に「共感させる」努力が必要

「また、避難行動を促すためにも、情報伝える側が情報受け取る側に『共感させる』というのも重要。
あの災害が自分たちの住んでいるところでも起きるかもしれない、と気づくことができれば、避難行動への意識が高まり、少しでも人的被害を抑制できるのではないか。
防災にとって「安心」が一番危ない、一人ひとり適度な「危機感」をもつことが必要。」
この後も梅雨前線が活発化するため、他の地域でも大雨による災害が発生する可能性があります。普段から大雨に関する情報を確認し、少しでも早く安全な場所に避難できるよう、日頃から備えておいてください。
また、情報を発信する報道側も少しでも人的被害を抑えるため、情報の伝え方やわかりやすさなど、共感してもらうための工夫や努力も必要です。


参考資料など

写真・動画:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)

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