マイボトルを繰り返し使うと、どれだけCO2排出量を削減できる?
2024年12月18日(水)12時40分 ウェザーニュース
2024/12/18 12:41 ウェザーニュース
身近な温暖化対策の身近な取り組みの一つとして、何回も繰り返し使えるマイボトルの利用があります。
誰でもできそうな取り組みですが、実際にはどの程度、温室効果ガスの削減に効果があるのでしょうか?
ウェザーニュースLiVE「地球天気予報」の解説を務める、ウェザーニュース予報センターの森田清輝(以下、モリタ)と一緒に考えてみました。
平均気温の上昇を1.5℃以内に収めるのが世界目標
「地球の気温・海水温の上昇は、CO2などの温室効果ガスの排出量に比例しています。そのため、人間の経済活動が自然に影響を与えないよう、温室効果ガスの排出量を抑えることが、世界的に推進されているのです。
2018年の『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)では、2030年までの世界平均気温を産業革命以前比で1.5℃以内に収めるという目標値が示されました。
産業革命以降、2019年までのCO2排出量は、すでに累積2兆4000億tに上っているため、この目標を実現するには、2030年までのCO2排出総量を4000億t以内に抑える必要があるとされています」(モリタ)
1年に排出しているCO2の量はどれくらい?
「CO2排出量を4000億t以内に抑える」と言われても、数字が大きすぎて実感がわきません。
「そうですね。まず、4000億tという数字を身近なものにしてみましょう。
同じJCCCAの資料によると、世界の1年間のCO2総排出量は約314億t(2020年)。国別に見ると日本は3.2%を占めているので、約10億480万tになります。
これを日本の人口で割ると、日本人1人当たりが1年に排出しているCO2の量は約7.9tとなります。重量的には大型トラックの積載量と同じくらいで、何となく数字が見えてきた感じがしますよね」(モリタ)
マイボトルを繰り返し使用すればCO2は約10分の1に削減!?
では、実際に私たちはどれだけCO2の削減に貢献できるのでしょうか。すぐにでも実践できる『緩和策』の一つ、マイボトルの使用で考えてみましょう。
「ペットボトルは製造・廃棄・リサイクルの過程でCO2が発生してしまいます。その代わりにマイボトルを繰り返し使ったら、どれだけCO2削減に貢献するかという試算してみました。
1本のペットボトル(500ml)の製造・廃棄・リサイクルにかかるCO2排出量は約119gで、ステンレス製マイボトル(500ml)を100回使う場合、1回あたりの排出量は約13.9gとされています。つまり、マイボトルを繰り返し使うと、CO2排出量を約10分の1に削減できるのです」(モリタ)
よりイメージしやすいように、ペットボトルを週に5回飲んでリサイクルに出す人が、代わりにマイボトルを繰り返し使うと、1年にどれくらいCO2の排出量を削減できるのか、計算してみました。
「週5日で年間約261日使用した場合で考えると、結果は約27.4kgを削減できることがわかりました。ペットボトル2万7400本分(CO2の1kgは500mlペットボトル1000本分の質量・体積換算)になります。
※試算の前提条件は上記参照
この試算はマイボトルを100回で破棄した場合です。さらに繰り返し使用すれば、CO2はより多く削減できることになります」(モリタ)
長く使うことでさらに削減効果が期待できる
27.4kgは、トン換算すると0.027tとなりますので、私たちが1年に排出している7.9tという量を考えるとわずかなようですが、100人が行えば2.7t、200人で5.4t。300人で行えば8.1tとなり、「7.9t」の数字をクリアしてしまいます。
こうしたロングユースはマイボトルに限りません。
「生産・廃棄・リサイクルの過程でCO2を排出する道具は、『繰り返し使うこと』『長く使うこと』が大切です。それだけでもより多く排出量を抑えられるのです」(モリタ)
温暖化対策には、国家における大規模な取り組みはもちろん大切ですが、少しでも進行を遅らせるために、個人の行動も併せて見直していく必要があります。
私たちも、ロングユースや省エネ家電への切り替えなど、身の回りのできることから取り組み、一緒に地球の未来のことを考えていきませんか?
▶ 森田 清輝(もりた きよてる)
ウェザーニュース予報センター所属のベテラン気象予報士。現在は、24時間生放送の気象情報番組ウェザーニュースLiVEで「地球天気予報」コーナーの解説を務める。
参考資料
環境省「リユース可能な飲料容器およびマイカップ・マイボトルの使用に係る環境負荷分析について」(平成23年4月)、全国地球温暖化防止活動推進センター「データで見る温室効果ガス排出量(世界)」