13年前の殺人事件で娘失った母「とかしあった髪、今でも切れない」…大勢の前で初めて思い語る

2024年12月30日(月)15時37分 読売新聞

シンポジウムで思いを語る真夕さん(右)

 2011年に熊本市の商業施設で起きた殺人事件で、清水ここちゃん(当時3歳)を亡くした母、真夕さん(51)が初めて講演した。事件とその後の家族のこと、娘が触れ、切ることができないでいる髪のことを語り、「娘は亡くなってしまったが、今後事件に巻き込まれる子がいなくなる力になりたい」と被害者支援への理解を求めた。(中村由加里)

「被害者の力になりたい」

 熊本市のホテルで11月、くまもと被害者支援センター(熊本市)主催のシンポジウム「被害者支援を考える〜母からのメッセージ」があり、約80人が聞き入った。登壇した真夕さんは大勢の人の前で初めて、事件の日のことを打ち明けた。

 11年3月3日、心ちゃんは両親、当時5歳だった三男と一緒に買い物に来ていた。1人でトイレに向かい、父親が追ったが見つからず、障害者用トイレに連れ込まれて殺害された。

 事件後、インターネットには「ちゃんと見てなかった親が悪い」「ざまあみろ」といった誹謗中傷も書き込まれた。真夕さんは残された3人の息子の前では、とにかく笑って食事を取り、絶対に泣かないようにした。「子どもたちに心配させないようにという思いだった」と振り返る。

 子どものケアに心を配った。三男は真夕さんと2人きりになると、「僕が死ねばよかった」と泣き叫び、中学生の頃に高熱を出した時には、「心ちゃん、助けてあげれなくてごめん」とうなされたという。真夕さんは「事件から10年たっても、心に傷を負っているんだ」と思い知らされた。

 髪は事件の日から伸ばし続け、腰ぐらいまでの長さになった。お風呂上がり、互いに髪をとかし合った。「お守りみたいなもの」だったが、来年、長男が結婚式を挙げる予定となり、「式で髪を結った後に切るのなら」と思うようになった。心ちゃんも「やっと切ったね」と言ってくれるかな、と感じている。

 シンポジウムでは子どもたちとともに歩んだ経験から、残された子どもたちの心をケアすることが大切だと訴え、「微力ながら被害者支援に携わっていきたい」と語った。

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