水素供給ネットワークの環境性・経済性・安全性を向上させる新たな実証運用を開始

2024年1月19日(金)11時16分 PR TIMES

〜国内で初めて水素ステーションで高圧容器へ70MPaまで水素を充填し搬送〜

 株式会社大林組(本社:東京都港区 社長:蓮輪賢治)は、福島県双葉郡浪江町で取り組んでいる「既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業」(環境省委託事業)において、国内で初めて(※1)水素ステーションで最高充填圧力70MPaの高圧容器に70MPaまで水素を充填し搬送するなど、水素供給ネットワークの環境性・経済性・安全性を向上させるための新たな実証運用を開始します。

1. 背景
 浪江町には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、2020年4月から太陽光エネルギーを利用した世界最大級の水素製造プラント「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(※2)が立地し、実証稼働しています。当社は、「水素搬送管理エネルギーマネジメントシステム(EMS)」(※3)の構築により、FH2Rで製造された水素を複数の拠点に効率的に搬送する実証運用(※4)を2022年4月から1年間行い、搬送コストとCO2排出量を2〜3割程度低減させることに成功しており、今回の実証運用はそれに続くものとなります。

2. 実証項目と特長
(1) 新たな水素供給ネットワークの構築
 従前の実証運用では、19.6MPaの容器を使用して水素を搬送していましたが、より高圧の容器の使用により、一度に大量の水素を搬送することが可能となり、さらなる効率化が図れます。そこで、トヨタ自動車が燃料電池自動車MIRAIで採用している高圧水素貯蔵技術を応用し、国内で初めて水素ステーションで最高充填圧力70MPaの高圧容器に70MPaまで水素を充填し、トラックで搬送する供給ネットワークを構築し実証を行います。本容器は、水素の残量や供給状態の遠隔モニタリングおよび圧力差を利用したカスケード利用(※5)が可能です。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/118168/35/118168-35-015e9f3bdece5b37cf75443680122f9f-945x472.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図1 カスケード利用のイメージ
 また、容器による水素の搬送のほか、水素パイプラインを経由して燃料電池への供給も行われますが、この水素パイプライン敷設の新工法の実証にも取り組みます。新工法は当社が古河電気工業株式会社と共同で開発を行うもので、樹脂製の雨水側溝に改良を加え、パイプラインやケーブル用の配管トレンチとして利用することにより、パイプライン敷設工事のコストおよび工期が削減できます。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/118168/35/118168-35-b7e6941446631975b81ef7d1d6cbbd5f-817x525.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図2 雨水側溝兼用配管トレンチ断面図
(2) 水素サプライチェーン統合管理システム(統合EMS)の構築
 現行のEMSで使用できる水素搬送容器は1種類ですが、多様な容量、圧力の容器に対応する機能を追加し、搬送先毎に適切な容器や効率的な搬送ルートを選定することで、搬送時のCO2排出量およびコストの削減効果が見込め、更なる環境性や経済性の向上を図ります。
また、水素の搬送には法令に基づいた安全管理が求められますが、さらに安全性を高めるため、Webカメラによる監視やその画像データからAIが劣化判断をする機能を備えた、「水素安全性管理システム(SMS)(※6)」の開発に取り組みます。
機能を追加したEMSとSMSの2つのシステムにより、「水素サプライチェーン統合管理システム(統合EMS)」を新たに構築します。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/118168/35/118168-35-9fe9199ce63d0f77e176de1c1cbe9bb9-960x440.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図3 統合EMSの構成イメージ
(3)水素供給の連携と地域マイクログリッドの構築
 現状、各施設で使用する電力は、各施設に設置された燃料電池で発電しており、施設間相互で融通されていないため、各施設の燃料電池を電源としたDGR(※7)により、地域マイクログリッド(※8)を構築し、電力利用の効率化を図ります。また、各施設の電力の需給状況と、水素の残量状況を合わせて管理することで、さらなる水素供給ネットワークの効率化にもつなげます。

[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/118168/35/118168-35-16fffc0687392c38105a19d530cbe1a9-960x604.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図4 地域マイクログリッドと水素供給ネットワークの連携イメージ
3. 今後の展望
 大林組は今後、EMSの高機能化などにより、水素供給ネットワークの環境性・経済性・安全性をさらに向上させることで、水素サプライチェーンの拡大、水素利用の普及を推進し、脱炭素社会の実現に貢献します。


※1 最高充填圧力70MPaの高圧容器に70MPaまで水素を充填し搬送する実証は国内初とな 
  ります。(自社調べ:2023年12月)

※2 福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)
   2020年4月から稼働している太陽光エネルギーを利用した世界最大級の水素製造プラ
ント

※3 EMS(エネルギーマネジメントシステム)
水素搬送車両に装着したGPS端末から搬送状況を把握し、車両の発着スケジュールに
合わせてプラントを停止せずに効率よく連続運転できる制御システム

※4 https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220412_1.html
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220412_1.html

※5 カスケード利用
高圧圧力を利用してFCフォークリフトや燃料電池へ供給ラインを切り替えながら減圧
装置を介して差圧充填すること

※6 SMS(セーフティマネジメントシステム)
遠隔で水素の安全性を管理するシステム

※7 DGR(デジタルグリッドルータ)
小規模な発電システムや蓄電池などの集合体で構成された電力システムで、電力取引
が細かく記録でき、遠隔制御もできる

※8 地域マイクログリッド
小規模電力網のことで、エネルギー供給源と消費施設を一定の範囲でまとめて、エネ
ルギーを地産地消する仕組み

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