スピード違反で捕まらない人、反則金で済む人、前科がつく人の境界線は…弁護士が注意促す「仕事を失うケース」

2024年2月19日(月)7時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

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スピード違反で刑事処分になるのはどのような場合なのか。ルミナス法律事務所の弁護士中原潤一さんは「一般道では30キロオーバー、高速道路では40キロオーバーになると刑事処分になるとされている。それ以上の場合にどうなるかについては法律の定めはなく、検察庁の処分に委ねられている」という——。
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■スピード違反には「行政処分」と「刑事処分」がある


スピード違反をしても全ての人が捕まっているわけではありません。それはなぜかご存知でしょうか。


スピード違反についてはその違反速度に応じて画一的に行政処分か刑事処分が科されることになっています。法的な観点と実務的な観点の両面から解説します。


■「行政処分」で科されるのが「反則金」


1 スピード違反に関する法律の定め

まず、法律がどのように規定しているかを確認しましょう。


道路交通法22条1項は、「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。」と規定しています。前者を「指定速度」、後者を「法定速度」と言ったりします。


「指定速度」は、例えば新東名高速では最高速度を120キロとされている区間がありますが、道路標識等によって特別に指定されている速度のことを言います。法定速度は、そのような道路標識等による指定がない場合に決められているものであり、一般道では60キロ(道路交通法施行令11条)、高速道路では100キロ(同令27条)となっています。そうすると、この法律の定めを素直に読めば、最高速度を少しでも超過すれば「捕まる」ということになりそうです。


もう少し細かい規定を見ていきましょう。


道路交通法と道路交通法施行令では、「行政処分」「刑事処分」を区別しています。特に重大な速度違反には「刑事処分」とし、そこまでに至らない速度違反には「行政処分」とすることになっています。「刑事処分」では罰金刑や懲役刑が科されることになりますが、「行政処分」では「反則金」が科されることになります。


■刑事処分との線引きになる速度がある


そこの線引きは、一般道では30キロオーバー、高速道路では40キロオーバーで設定されています(道路交通法施行令45条、同令別表6)。つまり、これ以上の速度で走ると「刑事処分」に、これ未満の速度でスピード違反をすると「行政処分」になります。


例えば、普通車であれば、行政処分の反則金の額は、


高速道路 35キロ以上40キロ未満 3万5000円
高速道路 30キロ以上35キロ未満 2万5000円
(共通) 25キロ以上30キロ未満 1万8000円
(共通) 20キロ以上25キロ未満 1万5000円
(共通) 15キロ以上20キロ未満 1万2000円
(共通) 15キロ未満 9000円

と定められていますから、やはり理屈の上では、1キロでも速度超過をすればそれは違反であり、反則金の対象として捕まり得るということになります。


ただ、現実に警察は1キロでも速度超過をすれば捕まえる、という対応はしていません。それはそのような運用をすればおよそ捜査の人手が足りなくなってしまうという理由によるものと思われます。ですので、特に悪質なスピード違反を捕まえるという方針なのだと思います。


写真=iStock.com/Hikari Homma
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hikari Homma

■東名高速から首都高に入ったところで捕まるケースが多い


2 刑事処分とよくあるスピード違反

一般道で30キロオーバー、高速道路では40キロオーバーで刑事処分となりますが、それ以上に何キロ出したらどうなるのかという点については法律の定めはなく、検察庁の処分に委ねられています。検察庁では、速度超過が80キロ以上であれば前科や前歴がなくても公判請求(つまり、懲役刑)、80キロ未満であれば罰金という画一した基準で運用しているようです。


当事務所にご相談いただくケースで多いのは、首都高でのスピード違反と新東名などの3車線ある高速でのスピード違反です。


まず、首都高では制限速度が50キロや60キロですので、130キロや140キロを出すと80キロオーバーになってしまいます。特に東名高速道路から首都高に入った際に、それまでと同じような速度を出してしまって捕まってしまうというケースが多いです。また、3車線ある高速で、深夜に走ったりしていると、速度感覚を失ってしまって気づいたら80キロオーバーをしてしまっていたというケースもあります。


80キロオーバーをしてしまった場合の量刑ですが、初犯であれば、概ね、違反速度が80キロ台であれば懲役3月が求刑され、判決は懲役3カ月、執行猶予が2〜3年、違反速度が90キロ台であれば懲役4カ月が求刑され、判決は懲役4カ月、執行猶予が2〜3年となっていることが多いようです。


職業の中には、スピード違反で刑事処分(罰金や懲役刑)になってしまったら資格を失ってしまう職業もありますので、特にご注意いただければと思います。


■「スピード違反」をめぐる裁判で無罪になったケース


3 無罪判決もあるスピード違反

自分はそんなにスピードを出していなかったはず、として裁判で争うこともあり得ます。そして、その主張が認められて無罪判決が出ているケースもあります。


たとえば、さいたま地裁平成28年11月16日判決では、交通取り締まりに従事していた警察官が、光電式車両走行測定装置を用いて速度超過の取り締まりをしていたところスピード違反があったとして被告人を検挙したケースがありました。このケースでは、警察官が取り締まり当時の具体的状況を記憶しておらず、また、交通量が多くて他の車両と誤認した可能性を排斥できないとして無罪になっています。これは、自動測定装置ではなく、警察官が目視をしながらスタートボタンを押して速度を計測する装置であったため誤りが生じやすいケースだったと言えます。


全てのケースで同じように争えるわけではありませんが、刑事処分はご自身の職に関係してくることもありますから、もしスピード違反を疑われたら弁護士に相談してみるのも良いかもしれません。


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中原 潤一(なかはら・じゅんいち)
弁護士
弁護士法人ルミナス代表弁護士。日弁連刑事弁護センター幹事、神奈川県弁護士会刑事弁護センター委員、刑事弁護実務専門誌編集委員等を務め、全国で弁護士向けの裁判員裁判研修の講師を多数務めている。冤罪弁護に精通し、5件の無罪判決を獲得。少年事件で非行事実なしの決定等の実績を有する。逮捕・勾留されているご依頼者を釈放する活動、冤罪事件の捜査弁護活動及び公判弁護活動、裁判員裁判等に注力している。
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(弁護士 中原 潤一)

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