「1日5~6時間は読書、限られた人にだけ会う」ウォーレン・バフェットを投資の神様にした"内向型の生き方"

2024年3月5日(火)6時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liudmila Chernetska

写真を拡大

成功者に共通点はあるのか。米国で精神科医をしている大山栄作さんは「ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットは、米国では“内向型の有名人”として知られている。内向型の生き方が彼らの成功の背景にある」という——。(第3回/全3回)

※本稿は、大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liudmila Chernetska

■ビル・ゲイツが毎年発表する「最高の本」


社交的で活発な「外向型」。一方、一人を好み、控えめで、思慮深い「内向型」。近年、世界の研究機関で次々と、内向型の「秘めたる潜在能力」が科学的に証明されており、世の中の流れも内向型に向きつつある。

マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツはパソコンのOS「Windows」の生みの親で、世界の大富豪ランキングの常連です。もの静かな性格で読書家としても有名です。そして、自分の信念を曲げません。典型的な内向型で、アメリカでもそれが広く知られています。


彼は毎年11月の終わりごろに「今年読んだ最高の本」を紹介しています。このリストに載るとたちまちその本はベストセラーになりますが、そのリストを眺めると、彼の好奇心の旺盛さがうかがえます。


例えば2022年に発表した5冊(2022年には今年読んだ本ではなく「人生で最高の本」を5冊紹介しています)はSF小説『異星の客』や、アイルランドの人気ロックバンド「U2」のボーカル「ボノ」がキャリアを語った『ボノの回顧録』、第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの評伝『リンカーン』、プロテニスコーチがスポーツ心理について明らかにした『インナーゲーム』、元素の周期表の謎に迫った『メンデレーエフ元素の謎を解く』の5冊です。


■「これだ!」と思ったら猪突猛進に進む


彼の専門であるITどころかビジネスの本もありません。選書だけ眺めていたら、マイクロソフトの創業者が選んだ5冊とは想像できないでしょう。


ただ、こうした「ジャンルを問わずいろいろなものを吸収する探求心」や、それを「分析して自分の血や肉とする力」が彼のビジネスにおけるインスピレーションの源泉になっているのです。


もちろん、誰もが知る製品を世に送り出した彼にも失敗はあります。彼は自他ともに認める天才で、他人の意見に決して動じず、突進してきました。その姿勢がマイクロソフトを世界一のIT企業に育て上げたのです。ただ、彼自身が「時を戻せるのならば戻って姿勢を改めたい」と語っています。これも内向的らしい意見です。


彼は思慮深くありましたが、「これだ!」と思ったら猪突(ちょとつ)猛進な仕事の進め方をしてきました。もちろん、全体で見れば成功を収めましたが、小さなつまずきは数知れません。


■「人の意見をもっと聞くべきだ」と自分を客観的に分析


あるとき、何でつまずいたのかと考えたときに、彼は人の意見をもっと聞くべきだと考え直すに至ったそうです。自分を客観的に分析できるからこそ、内向型だからこそ、過ちに気づけたというべきでしょう。


ビル・ゲイツは世界有数の大富豪ですが、生活は質素です。洋服はブランド品を着飾るわけでもなく、過度な社交は避けます。読書好きであることからもわかるように1人の時間を大切にしています。


何でも買える身分ですが「自分の野心は世界の平和と全人類の健康維持」と語り、ジェンダー平等や疾病の根絶、乳児死亡率の低減にお金を投じています。


写真=iStock.com/CatLane
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CatLane

2022年には、一度の寄付額としては史上最大級となる200億ドルを寄付しています。自分の幸せを知り尽くしているところも内向型らしいです。


■私生活は質素極まりないウォーレン・バフェット


ITの神様がビル・ゲイツでしたら、投資の神様はウォーレン・バフェットです。


「世界長者番付トップ10に30年以上も君臨する大富豪」
「経営する会社(バークシャー・ハサウェイ)の株価を50年で80万%以上も上昇させた天才」


投資に少しでも関心のある人で、ウォーレン・バフェットを知らない人はほとんどいないはずです。彼もアメリカでは内向型の有名人のひとりに数えられています。


私生活は質素極まりなく、1日5、6時間を読書にあて、限られた人にしか会いません。2000年以降、彼はチャリティー昼食会を開いています。収益金は慈善団体に寄付される仕組みで、2022年は過去最高の約1900万ドルで会食の参加権利が落札されました。それだけ多くの人が会いたがっていますが、彼は避け続けています。


■「粘り強く、用心深く」まさに内向型のスタイル


彼の投資のスタイルも内向型そのものです。彼の有名な言葉があります。



大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)

「投資での成功は、IQとは関係ありません。通常の知性があれば、あと必要なのは、投資で他の人に迷惑をかけてしまう衝動をコントロールできる気質なのです」


粘り強く、用心深く。まさに内向型ですね。このスタイルに行き着いたのは彼の投資のデビュー戦での学びが影響しています。


彼の投資のデビューは11歳のときでした。コツコツ貯めた120ドルを元手に、姉と一緒にシティーズ・サービス・プリファードという会社の株を一株38ドルで3株購入します。


父親の薦めで買ったのですが、市場の低迷によって株価は27ドルまで落ち込みます。3株で30ドル以上も目減りしたので、姉に毎日のように責め立てられ、株価が40ドルに回復したときに売却します。


■「客観力」「思慮深さ」「冷静さ」「洞察力」


最終的に儲けが出たことで、姉にも褒められますが、バフェットにとっては忘れられない経験となりました。その後、株価は一株当たり202ドルにまで上昇し、売らずに持ち続けていれば3株で500ドル近い利益を手にすることができた計算になったからです。


彼はこの失敗から教訓を得ます。大切なのは日々の株価の変動に一喜一憂することではなく、投資する企業をよく知って、信じて待つことだ、と。


そのためには「他人のお金で投資してはいけない」と考え、「他者に迷惑をかけてはいけない」を信条にします。


企業をよく知るには「客観力」や「思慮深さ」が必要ですし、信じて待つには「冷静さ」や「洞察力」が欠かせません。それらを有言実行で実現し続けているところもバフェットが内向型であることを物語っています。


----------
大山 栄作(おおやま・えいさく)
精神科医
米国・精神科医。自身も内向型。マンハッタン精神医学センター精神科医。安心メディカル・ヘルス・ケア心療内科医。米国精神神経学会認定医。米国精神医学協会(APA)会員。1993年東京慈恵会医科大学卒業。聖路加国際病院 小児科、慈恵病院 精神科を経て、埼玉県立越谷吉伸病院 精神科医長。2005年よりシティ・オブ・ホープ・メディカル・センター、ハーバーUCLAメディカルセンターにて、精神疾患の分子生物学的研究に従事。2012年マウントサイナイ医科大学精神科研修修了、現在に至る。日本で10年以上、米国で10年以上の臨床経験をもつ。
----------


(精神科医 大山 栄作)

プレジデント社

「読書」をもっと詳しく

「読書」のニュース

「読書」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ