英、独、ザンビアに抜かれ江戸時代の水準へ…日本の人口"逆V字"で急降下するエグすぎるグラフの戦慄

2024年3月9日(土)11時15分 プレジデント社

GDPがドイツに抜かれ世界4位に降下した日本。人口も最新調査で12位にランクダウンした。統計データ分析家の本川裕さんは「2100年の人口は6278万人になると算出されている(40位に転落)。これは、現在の約半分であり、戦前・昭和初期の人口水準。だが、幸せに暮らせるなら人口が減ることを厭うことはない。人口小国として成り立つような国づくりを真剣に模索していく必要がある」という——。

■あと70数年で「戦前・昭和初期の水準」に落ち込む可能性


2024年の2月には昨年23年の日本のGDPがドイツに抜かれ世界第4位となったことが報じられ、日本経済の低迷を示すものとして新聞・テレビなどで繰り返し報道された。一方、これと比較してあまり注目されないが、実は、人口のランキングについても日本は低下を続けている。


国連人口基金(UNFPA)の「世界人口白書2023」によると、世界の人口は22年11月に初めて80億人を上回ったが、23年の年央推計では80億4500万人。日本はエチオピアに次いで世界12番目に多い1億2330万人だったとされる。日本が12位にランクダウンしたことはニュースではそれほど大きく取り上げられなかった。


そこで、今回は日本および世界各国の人口ランキングの変化について見てみよう。人口ランキングを見る前に、その前提として日本の人口の長期推移について、これまでと将来展望について確認しておこう(図表1参照)。


西暦600年より前の飛鳥時代から1300年代前半の鎌倉時代までは500万〜600万人で推移し、続く室町時代から戦国時代にかけて1700万人に増加、戦乱のなくなった江戸時代の享保の改革(1736年)の頃には3000万人に達した。


ただ、日本の人口はその後伸び悩んでいたものの、江戸時代後半から明治維新にかけて経済社会の近代化とともに急激に増え続け、2008年のピーク時には1億2808万人に。


ところが、近年は出生率が大きく低下し、海外からの移民もわずかであるため、人口が減少傾向をたどっている。グラフはえげつないほど急降下していく。そして、日本の公式予測である国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計では、このまま出生率や社会移動率の動きに大きな変更が加わらないとすると2100年の人口は6278万人になると算出されている。これは、現在の約半分であり、戦前・昭和初期の人口水準である。そして、そのまま推移すると22世紀(2101〜2200年)には江戸時代の水準(3000万人)にまで逆戻りしかねないと考えられる。


そして、直近の出生動向は、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計による出生数を下回っており、この将来予測でもまだ楽観的な見方かもしれないのである。政府による「異次元の少子化対策」でこうした状況が抜本的に改善されると考えている人は少なかろう。


■インドが中国を追い抜き、日本は10位から転落


欧米先進国は、出生率の動きは日本より多少よいものの大差なく、日本同様、高齢化も進んでいるため出生数と死亡数を差し引きした人口の自然動態はやはりマイナス基調であるが、人口の社会動態である人口流入がけっこうあるため日本ほど人口は減少していない場合が多い。


一方、以前ほどでないとはいえ、なお、出生率が非常に高い途上国では人口が大きく増加しており、当然、途上国の人口ランキングは日本や欧米先進国を抜き去りつつある。


基本的に2年ごとに国連は将来人口推計を発表している(最新は3年間隔だったが)。最新の国連の2022年改訂は2022年7月に公表された。


2012年改訂からはじまった2100年までの将来予測が今回もなされた。2100年の世界人口の予測は103億5000万人である。2058年に世界人口は100億人を越えると予測されている。今回の予測ではじめて2100年以前に人口が減少に転じると計算されている。ピークは2080年代で約104億人とされている。


図表2には人口トップテンとその人口の推移を1950年、2020年、2100年という3時点について示した。


長らく人口大国といえば、第1に中国、第2にインド、そして第3位は米国という順であった。1950年と2020年については1位と2位の人口は近づいたが、この順位自体は変わっていない。


しかし、2100年には、インド、中国、ナイジェリアの順となると予測されている。2100年を待たず、2023年4月にはインドの人口が中国を上回ったと国連が発表し、それが世界中で報道され、話題となった。


2100年には、米国は6位に後退し、中国は2位を保つものの人口規模は半減する。そのためインドの1位は圧倒的となる。かつて大インドを構成していたパキスタンとバングラデシュも人口をかなり増加させると予測されているので、南アジアは巨大な人口集積地となる。


人口順位を上昇させる地域としてアフリカが目立っている。2020年にアフリカの中で10位以内に登場しているのは、第7位のナイジェリアだけであるが、2100年には、ナイジェリアが世界第3位に躍進するとともに、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプトがトップテン入りを果たすと推計されている。


日本は人口規模では2002年から世界第10位だったが、2020年にはメキシコに追い越され11位となった。そして、上述の通り、2023年には12位へとさらに後退した。


日本の人口は、1950年には世界第5位、2020年には世界第11位であったが、その後もランクダウンを続け、2100年には世界第40位(6278万人)と大きく地位を低下させると予測されている。


■今後、大きく変貌する世界の人口分布


こうした人口分布の変化を世界各国の人口ランキングの推移として図示してみよう。


図表3には主要国の毎年の人口ランキング推移を1950年から2100年まで示した。2022年以降は国連の将来推計(中位推計)の結果によっている。ただし、2021年以降の日本だけは図表1〜2と同じ国立社会保障・人口問題研究所の公式推計結果によって順位づけしている。


図表3で、まず、目立っているのは5位から40位へと落ちていく日本の順位の傾向的低落である。ちなみに2020年の人口ランキング40位の国は北アフリカのモロッコである。なお、将来の出生率の設定値の差から人口減が小さい国連推計の将来人口であるとやや上位の36位への順位低下となる。


日本だけでなくドイツについても同様に大きく順位を落としていく。現在の欧米先進国の多くも同じだと考えられる。日本の将来人口はドイツ以上に減りが激しいと見込まれているので、GDPだけでなく、人口も2091年にはドイツに抜かれると予測される。


日本とよく似ているのは日本以上に出生率の低下が深刻な韓国の順位変化である。1970年代後半には世界22位にまで上昇した韓国のランキングは、どんどん低下し2100年には69位にまで落ちると予測されている。ちなみに2020年の人口ランキング69位の国は中米のグアテマラである。中国も日本、韓国と同様に出生率の低下が著しいため人口は2100年までに半減するがもとの人口規模が巨大なため、たまたま同じ2位を保っている。


先進国の中で米国だけは2050年頃まではインド、中国に次ぐ世界第3位を維持すると予測されている。それでもそれ以降はナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国に抜かれていき、2100年には6位となっている。


国土面積が世界最大で地政学的な大国であるロシアはソ連崩壊以後人口減が続き、プーチン政権下の経済復調でやっと人口がやや回復したが、2010年代後半からは再度、自然減の勢いが増し人口危機の状況にある。プーチン大統領はかつて「一番の心配事は何か」と記者に問われ、迷わず「人口問題」と答え、ロシア語の教科書には「我々の未来は中国人移民にかかっている」という専門家の主張が引用されていたという(東京新聞2023.2.18、師岡カリーマ「本音のコラム」)。


ロシアの人口ランキングは、1950年から2020年にかけて4位から9位へと低下したが、今後も低落を続け2100年には20位まで低落すると予測されている。


メキシコのような中進国についてはこれまで人口ランキングを上昇させ、2020年には日本を追い抜いたわけであるが、今後は、むしろ順位を低下させていくという予測である。2100年には1950年より順位の低い18位となると予測されている。


先進国や中進国に代わって人口比を拡大させていくのはアフリカ諸国であり、図ではナイジェリアやエチオピアの順位の上昇にそれが表れている。


こうした人口分布の変化が生じたのちの世界政治はいったいどうなっているのだろうか、想像するのも難しい。


■日本の人口規模はどんな国に追い抜かれていくか


最後に、参考までに、日本の順位急落についてどんな国に刻々と追い抜かれていくのかを図表4に示した。


2020年頃までの実績では同じ順位を複数年にわたってけっこう長く維持できていた。それでも1950年の5位から最近の11位まで、高度成長期のさなか1964年にはインドネシア、オイルショック後の1978年にはブラジル、バブル後の1993年にはパキスタンと人口ランキングで凌駕されてきた。


しかし、これからはさらに順位低下のテンポは速くなる見込みであることが図から明らかである。1年足らずで順位を低下させることも多くなり、時には2カ国同時に順位を追い越される年も出てくるようだ。


さらに、現在の先進国にさえ人口を追い抜かれもする。2090年には英国に、2091年にはドイツに人口規模で追い抜かれることになるのである。


ひとびとが幸せに暮らせるなら人口が減ることを厭(いと)うことはない。人口小国として成り立つような国づくりを真剣に模索していく必要があると言えるだろう。


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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。
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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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