<学会発表レポート>不妊治療専門「トーチクリニック恵比寿」、2024年2月25日開催の日本生殖心理学会にて「ART保険適用化において心理介入が発揮する価値」を発表

2024年3月19日(火)10時46分 PR TIMES

トーチクリニック院長 市山卓彦が登壇

不妊治療専門 「torch clinic(トーチクリニック)」(住所:東京都渋谷区恵比寿4-3-14)院長 市山卓彦が、2024年2月25日(日)に開催された第21回 日本生殖心理学会にて「ART保険適用化において心理介入が発揮する価値」と題して発表しました。

日本生殖心理学会 ( JSRP: Japan Society for Reproductive Psychology ) について
(引用:https://www.jsrp.org/organ/)


日本の生殖医療は近年著しい発展をとげ、不妊に悩むカップルにとって、その医療技術の進歩とともに多大な貢献をもたらしてきたものと思われます。しかしながら、一方では「心のケア」の問題は未だ十分な方向性を得ている訳ではありません。この現状を打開することを目的として、医師、心理士、または、生殖医療従事者からなる「日本生殖医療心理カウンセリング研究会 ( JAPCRM: The Japan Association of Psychological Counseling for Reproductive Medicine ) 」が平成15年9月に発足致し、平成27年2月15日に「日本生殖心理学会 ( JSRP: Japan Society for Reproductive Psychology ) 」へと名称を改めました。また、平成29年4月3日付けにて法人化し、「一般社団法人 日本生殖心理学会」となりました。
日本生殖心理学会は生殖医療の実施に際して、心理的ケアを行うカウンセリングについての学術的研究の向上と、会員相互の知識の交流を図り、もって生殖医療の発展に寄与することを目的とします。

不妊治療専門「トーチクリニック」のカウンセリング数について


トーチクリニックは、生殖医療を通じてより多くの患者の家族計画の実現に寄与することをミッションとして、2022年5月に開院したクリニックです。現在常勤医3名、培養士10名、臨床心理士2名を含む総勢50名弱のスタッフが在籍しています。採卵件数は直近、月100件前後で推移し、昨年の採卵件数の実績は1,065件、移植件数が798件、妊娠数は355件でした。2023年度のカウンリング件数は、増患に伴い増加してきており月60〜90件程度、1日あたり2〜3件で推移しています。
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「Common Disease」となった不妊症


不妊の検査や治療経験のあるカップルの割合は、2015年の18.2%(5.5 組に1組)から、2021年には22.7%(4.4 組に1組)に増加しています。2022年度、国内で保険適用の治療を受けた患者数は約37万3500人、2022年のNPO法人FIneの患者全体の約25%が自費診療で治療を受けたとの報告から、国内の顕在層は合わせて約50万人いると推計され、不妊症は今や「Common disease」になったと考えています。
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ART保険適用化による変化


生殖補助医療技術(ART:Assisted Reproductive Technology)の保険適用化により多くの患者の経済的ペインは軽減されました。不妊治療のハードルが下がった一方、治療を受ける患者のデモグラフィック(性別や年齢などの統計学的な属性)は多様化し、より情報の非対称性を埋める患者教育を含む意思決定支援や、心理介入はより重要性を増しています。厚生労働省の2021年「不妊治療の実態に関する調査研究」によると、患者に実施したK6スコア(うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的として、Kesslerらが開発した6項目からなる尺度で、メンタルヘルスの状態を示す指標)の結果を見ると、気分・不安障害の可能性が示唆される5点以上の患者が、全体の7割、重度と判定される 13 点以上が2割を占め、心理介入の重要性が示唆されました。一方で、「保険適用下での治療中において、カウンセリングは実質無償で提供されなければならない」といった通達が出されています。
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トーチクリニックの施策 「意思決定支援」


トーチクリニックは保険適用と同時期に開院した背景もあり、様々な施策を講じてきました。患者の情報の非対称性を埋めつつ意思決定を支援する必要があると考え、クリニックをプロデュースする株式会社ARCH(本社:東京都目黒区下目黒2−17−18)が開発した電子カルテ及びクリニック専用のアプリを導入して、患者の各受診毎に事前問診を行いカルテへ自動で反映される仕組みを導入しました。初診時は医学的・社会的背景のみでなく、対面では答えにくいカップル毎の価値観や心理状況の確認も行っています。事前情報を元に、来院後の予診で患者の志向性・デモグラフィック・意思決定フェーズ等の要素を洗い出し、パターン別のKPI(重要達成度指標)を設定。家族計画までのロードマップ(治療法と成功率・費用など)の可視化を行っています。一般的な治療方法や妊娠率など、共通する内容はテキストや動画コンテンツを用い、患者別の医学的・社会背景を踏まえ、文献をベースにサマライズしたスライドや、高度生殖医療を行う際に、発育する卵胞数の予測を立てるART Calculatorを使用し、それぞれの医学的情報や費用に値する理解を促し意思決定を支援しています。
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トーチクリニックの施策 「能動的心理介入」〜心理支援の周知〜


2021年の厚労省の調査研究では、36.9%の患者は「心理的サポートについての情報を知りたい」と答えている一方で、「不妊専門相談センターの存在を認知していない」患者は63.9%にのぼり、心理支援の存在が十分周知されていないのが現状です。また、心理介入が望ましい状況であることを自覚してない患者も多く見受けられ、心理士による専門的心理支援に繋げられる環境を整備することは重要な課題であると考えます。
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当院は高度生殖医療を考える際は無償で利用可能であることをwebページや院内掲示、パンフレットなどを用いて積極的に患者へ紹介し、周知を進める活動を行っています。

トーチクリニックの施策 「能動的心理介入」〜患者の心理状況の察知と認知〜


診療中の僅かな機会のみで心理状況を察知することは容易ではありません。当院はリスク評価の本質は、専門職の二次対応に繋げるための一次スクリーニングと考えていて、簡便性を重視した心理状況の評価スケールを採用することにしました。
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一般診療でよく使用される疼痛の評価スケールの視覚的評価スケール(VAS: Visual Analogue Scale)や数値的評価スケール(NRS:Numeric Rating Scale )を参考に、心理状態を10段階でアプリから予約毎に事前問診することで、回答負荷を軽減し、全患者の全診療時の状態を把握可能な形に設計しています。さらに院内全てのスタッフが共通して把握できることで、スタッフの患者対応の質の向上が見込め、患者が受付してから帰宅するまでの間に、複数職種による察知の機会を設けることで、心理職への二次対応に円滑に繋げられると考えます。
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心理状態評価スコアの活用例


心理状態評価の活用例をお示しします。モデルケースは妊娠・分娩回数0回の34歳女性です。※実在する患者様ではありません。シフト制の不定休のネイリストで、通院には30分程度要します。卵巣内にどれくらい卵子が残っているかの目安となる抗ミュラー管ホルモン(AMH:Anti Mullerian hormone )の値は1.72、41歳の男性パートナーと2人の挙児を希望するヘルスリテラシーの高いカップルの、初診から妊娠判定陽性までのタイムラインの例が以下です。下記図の横軸は時間軸、縦軸が心理スコアで、予約毎に問診を行った結果です。

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初診時は「不安もなく、元気で安定している」のスコア10と回答し、プレコンセプションケア外来を受診。結果はAMH 1.72と中央値よりやや低下、軽度の乏精子症のみを認めました。2人挙児希望であるため、1人目の妊活を2年→不妊治療→妊娠→出産→授乳までのロードマップの例を提示。各種妊娠方法の妊娠率などを説明。2週間後の不妊外来では心理スコア8とやや不安は感じていたものの、人工授精(AIH:Artificial Insemination of Husband)で妊娠する90%が3〜4回で妊娠するというデータをベースに、まずAIH4回を実施する方針となりました。AIH1回目、2回目を実施する際は心理スコア8-10と安定していました。しかしAIH3回目実施時は心理スコアが4と急低下。医師、看護師が察知し、心理状況のヒアリング、当院に心理士が常駐していることをお伝えし、治療の長期化、就労との両立性の困難の自覚があることを聴取。ART希望を認めたためART説明外来及びカウンセリングパンフレットお渡ししたところ、カウンセリングを希望したため心理士を紹介・挨拶しました。ART周期開始前より心理士による心理介入を開始。心理介入の開始後もスコアは毎回取りますが、その変化に重きはおいていません。2週間に1回程度の頻度で無料カウンセリングを実施し、無事卒業を迎えたケースを挙げさせていただきましたが、本モデルケースのようなタイムラインをたどる患者様は多く、一次スクリーニングから適切に⼆次対応に繋げることは大変重要です。

今後は心理カウンセリング介入前後で調査を実施し、効果を比較検討した上で、不妊治療と専門的心理ケアを両輪で実施することの意義を明らかにしていく予定です。

まとめ


1.ART保険適応化に伴い患者のデモグラフィックに多様性が生じ、医療者も提供する医療サービス、意思決定支援及び心理支援の在り方を再考する必要があります。
2.「心理状態の簡易スコア化」は患者の回答不可を下げ、頻回なスクリーニング実施を可能とします。
3.多職種による一次スクリーニングの実施は、「察知」の機会を増やし、適切なタイミングで二次対応へ繋げることができる可能性があります。

医療法人torch clinic理事長・恵比寿院院長 市山卓彦のご紹介


[画像9: https://prtimes.jp/i/100852/20/resize/d100852-20-4fdfc296b499b2b48d47-1.png ]

2010年 順天堂大学卒。国内に約1,000名程の生殖医療専門医。年間7000周期の高度生殖医療を行う西日本最大の不妊治療施設セントマザー産婦人科を経て、前職の順天堂大学浦安病院では不妊センターの副センター長を務める。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、2021年の同学会で世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど研究の分野でも注目されている。2022年5月 torch clinicを開院。2023年10月医療法人torch clinicを設立し、理事長に就任。

【資格】
日本生殖医学会生殖医療専門医
日本産科婦人科学会専門医
日本産科婦人科学会専門医指導医
臨床研修指導医
日本生殖心理学会評議院

<クリニック概要>
クリニック名:torch clinic(トーチクリニック)
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-3-14 恵比寿SSビル8階
電話:03-6447-7910
アクセス: JR『恵比寿』駅 東口徒歩1分、 日比谷線『恵比寿』駅 徒歩3分
URL: https://torch.clinic/

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