食材高騰で学校給食「困った」…油の量半分・デザート断念、調理で節約も公費支援重く

2025年3月31日(月)8時1分 読売新聞

普段より油の量を減らして鶏肉を揚げる調理員(11日、福岡県久留米市の市立日吉小で)

 食材の価格高騰で、学校給食の費用が増加の一途をたどっている。保護者の負担増を避けようと公費で支える自治体もあるが、財源確保が重くのしかかる。国は2026年度からの小学校給食費無償化を目指すが、制度設計が不透明で現場には不安も広がっている。

■少しでも食材に充てたい

 11日、福岡県久留米市立日吉小の給食室で、調理員が手際よく調理していた。小豆ご飯、鶏の唐揚げ、かき玉汁——。6年生の卒業を祝う献立だ。

 鶏肉を大鍋で揚げるが、値上がりを受けて油の量を半分に減らした。中野悦子栄養教諭(46)は「1回に揚げる量が減って手間は増えるが、費用を少しでも食材に充てたい」と話す。

 栄養のある食材を優先しようと、ジャムやデザートを諦めることもあった。1月にイチゴジャムを出した際は、児童たちから歓声が上がったという。

 23年度に給食費を上げたばかりだが、食材の値上がりは止まらず、市は再値上げを決定。小学校は新年度から月額5100円となり、この2年で1000円上昇した。それでも、米の高騰などで厳しい状況は変わらない。

 値上げ分は市が支援するため、家庭の負担増はないが、必要な公費は中学校分も含めて年間3億2800万円に上る。市の担当者は「成長期の子どもたちのことを考えるとやむを得ないが、負担は軽くない」と話す。

■大半で費用増

 文部科学省の調査では、23年度の小学校の給食食材にかかる費用は月額平均4688円で、5年で約8%上昇している。

 読売新聞が28日までに九州・山口・沖縄の政令市と県庁所在市の教育委員会に取材したところ、新年度に費用が増加するとした自治体は、計10自治体のうち8自治体に上った。

 佐賀市は給食1食あたりの費用について、昨年4月より14%増を見込む。熊本市も昨年4月より約1割増える予定。

 多くの自治体で値上げ分を補助し、家庭の負担増にならないよう対応する。ただ、費用が約1割増える大分市は、家庭に求める給食費が、児童1人1食あたり4%増は避けられないという。

 福岡市は今年9月から給食費無償化を実施する。北九州市や熊本市でも無償化の検討を始めた。

 ある自治体の担当者は「他にも取り組まなければならない子育て施策があり、値上げ分の補助で精いっぱい。無償化となると、財源に限界がある」とこぼす。

■無償化不安も

 自民、公明両党と日本維新の会の3党は、小学校給食費無償化を26年度から実施することで合意。制度設計は、5月中旬をめどに方向性を取りまとめる予定だ。

 ただ、福岡県内の小学校の栄養教諭は「設定価格によっては、質や量、実施回数に議論が及ぶ可能性がある」と不安を口にする。

 公平性をどのように担保するかも課題だ。

 文科省の調査では、23年5月時点で主食におかずや牛乳がついた完全給食を実施する国公私立の小学校は98・8%。その他は、牛乳のみの提供や未実施など様々だ。長崎市の離島では調理員が不在で、弁当を持参してもらう学校もある。

 このほか、給食実施校でもアレルギーや不登校で給食の提供を受けていない児童もおり、国の制度設計がどのようになるか各自治体も注視している。

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