なぜ「BRENC」のニーダーは、幅広い種類のパン生地をこねることができるのか。開発の裏側を紹介します。
2025年4月9日(水)10時17分 PR TIMES STORY
2022年、エムケー精工はパンづくりに真剣に挑戦する人向けのブランド「BRENC」(ブレンク)を立ち上げ、ニーダーと発酵器を発売しました。
BRENCのコンセプトは、パンづくりという冒険を楽しむこと。40年近くホームベーカリーを手掛けてきたエムケー精工が、なぜBRENCを立ち上げたのか。きっかけと、ニーダー開発の裏側を、企画・開発に携わったキーパーソン2名に聞きました。
BRENCのフラグシップ製品、ニーダー
ニーダーとは、粉とその他の材料を混ぜ合わせ、こねあげる機械のこと。BRENCのニーダーは、A4サイズに収まるコンパクトサイズでありながら力強く、こしのある生地でも素早くこねられます。こねる強さ(羽根の回転出力)は、0%から100%まで5%単位で調整可能。しっかりとこね"きる”生地、素早く材料を均一に混ぜる生地、手ごねでは難しい生地など、幅広い生地づくりを実現します。
販売から2年が経ち、多くのパンづくりを楽しむ皆さまの相棒として活躍しています。
BRENCが目指したこと
始まりはパンづくりの楽しさを再発見したこと
エムケー精工では1988年からホームベーカリーを開発・製造・販売しています。ホームベーカリーの特徴は、簡単・手軽においしいパンをつくれることです。私たちは40年近く、いかにパンづくりの複雑な工程を簡略化して、おいしいパンをつくれるのかを追求してきました。
転機はコロナ禍です。多くの人が長い時間を家で過ごすようになり、その時間を使って、パンづくりをする人が増えました。生地をこね、発酵させ、成形し、焼く。ホームベーカリーでは簡単にしようと試みてきた工程に、楽しみを見出していました。
パンづくりは、粉、酵素、気温、湿度、こね方、発酵時間、成形方法や焼き方など、あらゆる要素が味や出来栄えに影響します。これらの複雑な要素を、探求し、楽しむ。ホームベーカリーを作ってきたからこそ、今度はその複雑さを楽しむサポートができる道具が作れないか、と考えたことがBRENCの始まりです。
なぜ、ニーダーから始めたのか
また、エムケー精工のホームベーカリーの特徴として力強い”こね”があります。この特徴を活かし、ホームベーカリーのこねる機能だけを使って、オリジナルパンをつくっている方がたくさんいます。
そのような背景から、こねることから始めるのは自然な成り行きでした。
BRENCが目指した、機械ではなく道具として片腕になれるニーダー
湯種食パンは、生地の一部に熱湯を加えてこね、一晩寝かせてデンプンを糊化させた、湯種と呼ばれる生地を使います。湯種は粘度が高いため、他の材料と混ぜ合わせるためには力強さが必要になります。さらに、加水率(粉に対する水分量)は90%を超え、生地がベタつき、手でこねるのは至難の業です。この湯種食パンの生地をしっかりこねられることをマイルストーンとして設定しました。
低加水の生地はホームベーカリーでもこねられることが多いのですが、高加水は難しい。もし湯種食パンがつくれるニーダーができれば、幅広い生地をこねられるニーダーに一歩近づきます。BRENCの目指したニーダーは、便利な機械ではなく、お客さまの目指す生地づくりを支える道具として、片腕になれる存在です。そのためには、幅広い生地を実現できることは必須条件でした。
実際に、BRENCのニーダーを使用された方の感想を伺うと、つくれる生地の幅広さや、柔軟な使い勝手に驚かれます。そして、私たちの想像を超える生地づくりに、BRENCのニーダーを使って挑戦されています。BRENCの目指した姿が、お客さまの声を通じて伺え、うれしく思っています。
幅広い生地をこねられるニーダーをどのように実現したのか
BRENCの特徴である、幅広い生地の実現。そのために、どのような仕組みが必要だったのでしょうか。設計担当者を代表して有井さんに聞きました。
目指したのは"手ごね”の動き
生地づくりで大切なことの一つが、均一さです。そこで、手でこねられる生地を観察しました。手ごねの動きというのは複雑です。人の手と目で観察され、力を加える部分を変化させ、均一になるようにこねられていきます。ただ単純に羽根で回転させるだけでは、この複雑な動きは再現できません。容器と羽根の形状を工夫する必要がありました。
容器は7角形にしました。多角形にすることで生地が回転せず、容器の面に叩きつけられ、生地にしっかりと力が加わります。面の形状や角数は、生地が最もランダムに動き、生地全体が均一にこねられる形を模索しました。また、器の下部はすり鉢状になっています。材料が下に集まり、それを羽根が巻き込んでいくことで、材料を余すことなく均一にこねます。
羽根は、「手づくり名人」の羽根がベースになっています。ただ、そのままの形状だとひどく振動してしまいました。ニーダーの容量が手づくり名人の2倍ほどで、生地が重すぎたためです。当時、男性二人がかりで抑えながら試験をしていたのを覚えています。そこで、もちつき機の羽根を参考にしました。エムケー精工では長きにわたってもちつき機を開発しています。もちつき機の羽根は、材料を内側からねじり上げるように混ぜ、もち米を均一に、なめらかなもちにしていきます。生地にかかる力が上に逃げるので、振動が少ないのです。この技術を取り入れることで、振動を抑えられただけでなく、生地を内側からこねることができ、より均一なこねに近づけることができました。
容器と羽根の相性を見ながら試作を繰り返し、最終的には容量や加水量に合わせて、2種類の羽根を製品化しました。手ごねの複雑な動きを再現し、生地を均一にこねられる形状を作り上げることができました。
使う人が自在に探索できる機能を
一人ひとりが実現したい生地はさまざまです。こういうパンがつくれるよ!とメーカー側が押し付けるのではなく、BRENCのニーダーを使えばこんなものも、あんなものもつくれる!と使う人に探索して欲しい。なので、柔軟にカスタマイズできるように工夫しました。
モーターには、一般的には大型家電や工業製品などで使用されるブラシレスDCモーターを採用しました。ブラシレスDCモーターは力強く、静か。ホームベーカリーなどではできないような、しっかりとこしのある、こねるために力が必要な生地にも対応できます。静音なので、「夜だからやめよう」ではなく、「パンをつくりたい!」と思ったときに使えます。このサイズの調理家電に使われる一般的なモーターと比べてはるかに高額ですが、生地づくりの幅を広げるためには必要だと判断し、採用を決めました。
また、こねる力を0%から100%まで5%刻みで調節できるようにしました。細かく調節できることで、滑らかで艷やかになるまでこね”きる”(ミキシングのファイナルステージ:食パンなどで理想とされる、グルテンが発達し、生地が薄く膜を張れるくらいに弾力を持った状態)生地から、材料を均一に素早く合わせる生地まで、幅広いこねが実現できます。ニーダーでパンチ(ガスを抜く作業)もできるので、ベタつく生地でも直接触れずに発酵の工程に進めます。
パンづくりの主役は、つくる人。開発者側の思いを出しすぎず、使う側が自分なりにカスタマイズして使えるよう意識をして開発を進めました。
高加水生地向けの羽根の開発
2023年10月、堀田誠シェフ(パン教室「ロティ・オラン」主宰)監修の高加水生地用羽根、デュアルインペラMHを発売しました。「しっかり強くこねる羽根」「やさしく素早く混ぜる羽根」のセットです。
開発のきっかけは、堀田シェフから「BRENCのニーダーならば理想的な高加水生地がこねられるかもしれない」と連絡をいただいたことです。本社に来ていただき、テストをしました。ただ、そのときは惨敗、まったく生地にはならなかったのです。
開発は難航を極めました。試験してみると、こねる力が強すぎても、弱すぎても、温度が高すぎても、低すぎてもまとまらない。ずーっと、水をかき混ぜているような状態です。ところが、ヘラで少し変化を加えると、とたんに性質が変化してまとまりかける。パンづくりの難しさに、また一歩足を踏み入れた感じがしました。
うまく生地に刺激を与えながら、こねることができないのか。羽根の角度、位置、長さを微調整し、延々と試験を繰り返しました。そして、やっと出来上がったのが、「しっかり強くこねる羽根」です。この羽根を使うと、水分が多くゆるい生地でも、内側から持ち上げて生地全体を均一に強くこねることができます。でんぷんの粒度が揃った力強く繊細な生地がこね上がります。
「やさしく素早く混ぜる羽根」は「しっかり強くこねる羽根」に行き詰まり、まったく新しい発想でスケッチしたものから生まれました。スケッチを堀田シェフに見せたところ、この形なら「やさしく素早く混ぜる」ことができそうだとおっしゃっていただきました。できる可能性があるならば挑戦しよう、となり、結局2種類の羽根を開発しました。「やさしく素早く混ぜる羽根」は、粉と水を素早く均一に混ぜ合わせて、水和させることができます。こねる工程を最小限にすることで小麦粉の酸化が抑えられるので、小麦粉の風味を楽しむパンにぴったりです。
高加水生地用羽根は、ニーダーの開発当初には予定にありませんでした。しかし、家庭では難しかった生地の実現ができれば、パンづくりに挑戦する方々にとっても、BRENCにとっても、新しい領域を広げられるチャンス。高加水生地用羽根の開発によって、BRENCのニーダーがさらに広い領域に踏み出すことができました。
BRENCを使用された皆さまの声
BRENCでは、ニーダーを使用したパン教室などの企画なども実施。そのなかで聞かれた声を紹介します。
・手捏ねで作ったパンよりも、ふわふわで美味しいパンができた。高加水でも、効率よく、失敗せずにつくれた。
・今まで手ごねでは難しかったパンが焼けた。
・振動、音が想像よりも静か。容器が軽く、手入れもしやすい。
・100%以上の高加水生地がつやつやに仕上がり、驚きと感動があった。
・最大出力にしても静かで、静音性にも驚いた。
パンづくりに挑戦する、すべての皆さまへ
【春日】
BRENCは、パンづくりという未知の世界を探索するパートナーでありたい。その想いどおり、たくさんの方がそれぞれの理想の生地を目指して、使ってくださっています。開発当初、出力5%なんて使うのだろうか、と実は思っていました。ところが、その機能を使って「こんなパンができた!」と教えてくださった方がいました。私たちが思いも寄らないパンづくりの可能性を、皆さまが開拓して、広げている。そのことがとてもうれしかったです。
エムケー精工でも新しいレシピをインスタグラム(@brenc_official)で更新しています。また、YouTube(@brenc1563)でも使い方などを紹介しています。冒険に行き詰まった際には、道しるべにしてみてください。
今後も皆さまの冒険をサポートできるよう、チャレンジしていきます。
以前開催したパン教室で、「これで私の人生はより豊かなものになるわ」と、参加者の方におっしゃっていただいたことが、強く印象に残っています。今まで家で実現することが難しかった生地が、BRENCのニーダーならできるかもしれない。そんな想いに応えられる道具ができたのでは、と感じました。
BRENCのニーダーは、目に入った瞬間に「今日、パンを焼こう。」と思える製品を目指して開発をしました。パンづくりは、奥深く、楽しい営みです。その楽しみを、多くの方に知ってもらいたいです。
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