人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?

2024年4月3日(水)4時0分 JBpress

 ビジネスパーソンであれ、企業組織であれ、ビジネスでは「一回切り」「たまたま」「まぐれ」の成功は通用しない。顧客が欲するサービス・商品を「継続的に」「必然的に」「狙い通りに」提供し続けて、初めて「仕事」といえる。つまり、仕事とは「人の心を捉え続けること」であり、それを実現するために必要なのは、顧客の「真のニーズ」を的確に捉えるためのマインドセットと仕組みづくりだ。本連載は、『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(田尻望著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。キーエンス出身の経営コンサルタントが体系化した「ニーズの捉え方」の考え方とノウハウの一端を紹介する。

 第3回は、法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を捉えるためのアプローチ方法について解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?(本稿)
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?(4月18日公開)
■第6回 40年前から変わらない、キーエンスの“卓越した成果”を再現し続ける秘訣とは(4月25日公開)

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法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を特定するためのアプローチ方法

 では、法人顧客を相手にしているビジネスパーソンは、クライアントに対してどのようなアプローチをすべきでしょうか?

 例えば、あなたがコンサルタントだとして、クライアント企業の担当者から「社内コミュニケーションを改善したいのですが」という相談を受けたとします。

 ただ、この発言からは、お客様の顕在ニーズしか読み取れません。「では、早速コミュニケーション改善のための研修をご用意しますね」と、顕在ニーズに応じた解決策を提案することしかできなければ、あなたは単なる「御用聞き」にとどまってしまいます。

 ここでは「社内コミュニケーションを改善したい」という発言(ニーズ)の裏側に潜んでいる「ニーズの裏のニーズ」を捉えたソリューションを提供しなければなりません。

 そのためには、「ちなみに、なぜコミュニケーションを改善したいのですか?」という質問を投げかける必要があります(ここまでお読みいただいた方は、「ニーズの裏のニーズ」を捉える「質問のスキル」がかなり身についてきていることだと思います)。

 お客様との会話が次のように展開したとしましょう。

 あなた 「ちなみに、なぜコミュニケーションを改善したいのですか?」

 お客様 「実は最近、社内の人間関係がギクシャクしていて」

 あなた「それは、大変ですね・・・。社内がギクシャクしているのを見るのは嫌な気持ちになるでしょうし、働かれているみなさんもお辛いでしょう。私としてもできることがあればお力になりたく、もう少し深く聞かせていただきたいのですが・・・人間関係がギクシャクしていることで、何かまずいことが起きているんですか?」

 お客様「営業の人間がどんどん辞めていってるんです」

 あなた「それは困りましたね。どれくらい退職者が出ているのですか?」

 お客様「去年は一人も辞めなかったんですよ。それが、今年はもう5人も辞めているんです。何とかこの流れに歯止めをかけたいんですが… …」

 あなた「そうですか、それは本当に大変ですね。そうしましたら、営業の方がこれ以上辞めないために、どのような解決策がベストか、しっかりと吟味検討したうえで、御社にとって最適な研修をご提案させていただきます」

 ここで重要なのは、前述した法人顧客にとっての「6つの価値」をしっかり意識した提案をすることです。

 この場合、フォーカスすべきは「リスクの回避」「生産性」の維持です。そこであなたは、具体的な数字を挙げて次のように説明すべきです。

 あなた「営業職を雇おうとすると、年間で一人あたり500万円程度の給与が必要ですよね。さらに人材紹介会社を使う場合、紹介料として年収の35%程度を取るため、一人あたりの紹介料は175万円になります。

 さらに、年収500万円クラスの人材であったとしても、最初の半年間は仕事に慣れるまで、なかなか利益を上げられません。その半年間、人件費は顧客への価値ではなく、人材の育成に使われるということになります。社会保険料を加えると、さらに金額が増えるかもしれませんが、ざっと250万円が顧客への価値提供ではなく、その準備の育成費用となってしまいます。

 紹介料と半年間の育成費用を合わせると、175万円+250万円=一人あたり425万円のコストがかかります。それが5人ともなれば、2000万円以上のコストですよね。

 さらに、辞めてしまった営業の方が、この半年間で生み出すはずであった売上もなくなります。ひと月の売上が100万円だとすると、月100万円× 5人×6ヵ月=3000万円以上の売上が失われます。合算してみると、『人間関係がギクシャクして5人の営業が辞めた』ために、2000万円以上のコストと、3000万円以上の売上が失われてしまっているんですね」

 このようにリスクや生産性の低下について合意したあと、「これは御社にとってすごく大きなリスクであり損失ですね。この問題を根本から解決するコミュニケーション研修をしましょう」と提案すれば、お客様は商談を前向きに聞いてくれるでしょう。

 これが、「ニーズの裏のニーズ」を捉えたソリューションの提案です。

 BtoBにおける「ニーズの裏のニーズ」は、法人顧客にとっての「6つの価値」のいずれかに紐づいています。

 それに対するソリューションを提案できれば、それが大きな価値となって、お客様はそこに多くのお金を支払ってくれます。

【まとめ3-7】
自社のサービスを売り込む際は、法人顧客にとっての「6つの価値」を意識した提案をする

<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?(本稿)
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?(4月18日公開)
■第6回 40年前から変わらない、キーエンスの“卓越した成果”を再現し続ける秘訣とは(4月25日公開)

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筆者:田尻 望

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