「凶」は木に結ぶ、お守りの効力は1年、賽銭より絵馬のほうがいい…社会心理学者が「神社のウワサ」を考察する

2024年4月16日(火)9時15分 プレジデント社

写真=iStock.com/JGalione

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おみくじで「凶」が出たら、境内の木に結んだほうがいいのだろうか。社会心理学者の八木龍平さんは「別にそんなルールがあるわけではなく、いつの間にか人々の習慣になっている。神社への参拝という意味では、木に結ぶとか結ばないよりも、もっと大事なことがある」という——。

※本稿は、八木龍平『愛される人はなぜ神社に行くのか?』(講談社)の一部を再編集したものです。


■お賽銭は金額より「出し方」が大事


Qおさいせんの金額はいくらがいいですか?

私はかねて「500円」をおすすめしてきました。別に何の根拠もありません。私に降りてきた唯一の「神の啓示」だからおすすめしているだけです。おさいせんを出すときになぜか声が聞こえるんですよね。10円や100円を出そうとしたら「500円」って頭の中に響くのです。


それはともかく最近は、金額よりおさいせんの出し方が大事だなと思っています。心を込めて丁寧におさいせん箱に入れます。


写真=iStock.com/JGalione

出し方が大事だと思うようになったきっかけは、御祈祷をするようになってから。神社によって「御祈祷」といったり「御祈願」といったり、「正式参拝」や「昇殿参拝」ともいいます。いずれも神職さんや巫女さんのご奉仕・ご指導のもと、神様に願い事をお伝えします。


御祈祷の際に、玉串と呼ばれる、ひだひだのある紙がぶらさがった葉っぱ付きの枝を神様に捧げます。玉串奉納という儀式です。


この玉串に心を込めて、神様に自分の願いをお伝えするのですが、そこで気づきがありました。玉串とさいせん、同じだよなと。これからは、玉串を奉納するような気持ちで、おさいせんを奉納しようと。


ということで、心を込めておさいせんを納めています。心を込めるというと抽象的ですから、私はおさいせんを両手に包んでからおさいせん箱にそっと入れています。もしお札をおさいせんにする場合は、封筒に包んで納めるといいですね。封筒を用意する「ひと手間」はかかりますが、そのひと手間で心がこもります。


■「1年に1回は神社に来てね」というお誘い


Qお守りの効力は1年と聞きましたが本当ですか?

よく聞く話ですが、もし事実を知りたければ、お守りの販売元に確認されるとよいかと思います。お守り関連でいえば、お守りを複数ないしたくさん持っていていいかと気になる方もいるようですが、同様に販売元に確認されるとよいでしょう。商品への質問は、販売元や製造元に確認するのが第一です。ただ、販売元・製造元としても、明確に答えようのない質問に思います。


その上で一般論を申し上げるなら、大半のお守りには何も注意書きはないので、特に気にする必要はないかと思います。お守りの効力1年は、よく聞く話ですから、とりあえずの一般的な回答なのでしょう。私は「1年に1回はうちの神社に来てね」というお誘い程度に受けとめています。


■適当な結論に飛びつくと、心の健康を損なう


明確にわかりようがないことに、私は何も結論を出しません。答えの出しようがないことや不確実なことに対し、そのまま答えのないままにしておく能力を「ネガティブ・ケイパビリティ」と言います。精神科医など精神の安全を専門にする方たちの間では非常に大事な考え方だと知られています。


わからない状態が不安だからと、答えのないことに答えを出してしまうと、短期的には心が落ち着きます。しかし、当然ながらその答えは「間違った認識」なので、現実と自分の認識との間にズレが生じます。答えようのないことに答えを出すクセを付けてしまうと、長い目で見ると、間違った認識が増えに増えて、現実と自分の認識との間のズレが大きくなります。そうなってしまったら、精神的な不安定も大きくなり、自分も周りも苦しめることになります。


もちろんネガティブ・ケイパビリティの大切さはお守りの話に限りません。精神的なことは、何ともあいまいで確実なことは言えない世界です。なのに、とりあえずの適当な結論に飛びつくことは、長い目で見ると、心の健康を損ないます。あえて正解を出すとしたら、あいまいなことは、あいまいな状態が正解なのです。


■「吉」や「凶」は何に対する判断なのか


Qおみくじで「凶」が出たら木に結ぶのはどうしてですか?

社寺でおみくじを引いて、「大吉」など結果が良かったら持ち帰り、「凶」のように結果が悪かったら境内の木に結んでいく人が多いですね。別にそんなルールがあるわけではなく、いつの間にか人々の習慣になっています。


写真=時事通信フォト
初詣でおみくじを結び付ける参拝客=2004年1月2日(神奈川県鎌倉市) - 写真=時事通信フォト

吉凶占いを多少かじった私から見ると、木に結ぶとか結ばないよりも、大事なことがあると申し上げます。


「その吉や凶は一体何に対する判断なのですか?」ということです。


社寺で吉凶占いをするときは、まずおみじくを引く前に参拝して神仏に祈願します。そのときに占いたいことをお伝えします。


例えば、「いま会社勤めですが、来年に起業するつもりです。おみくじで神様のご判断をお示しください」と自分の意志をお伝えします。起業を迷っていてもよいのですが、決めている風にお伝えください。目的は、起業について吉凶を占うことです。


さあ、おみくじを引きましょう。「大吉が出ました!」→「その起業、やるべし!」ということです。おみくじの具体的な中身を読みましょう。そこに細かな注意が書かれています。逆に、悪い結果が出たのなら、「その起業、ちょっと待った!」ということ。シンプルにやらない方がいいなのか、今は準備不足だからもう少し待てなのか、同じ「ちょっと待った」でもニュアンスに違いがあるでしょう。やはりおみくじの具体的な内容で詳細をご確認ください。


■まずは「占いたい内容」を神仏に伝える


占いたい内容を具体的に決めないと、おみくじを引いた結果が何の吉凶なのか意味不明なのです。だから事前に神仏に参拝して、何を占いたいのかお伝えするのです。そしてただ吉凶の結果だけでなく、詳細な文章も要確認です。


詳細を読まないと、はっきりした占い結果がわかりません。


もちろん恋愛にも結婚・離婚にも吉凶占い、使えますよね。


あの人に告白します→大吉→詳細確認
彼氏(彼女)と結婚します→吉→詳細確認
夫(妻)と離婚します→凶→詳細確認


神仏に占いたい内容をお伝えするとき、「離婚してもいいですか?」とか「離婚しようかどうか迷っています」ではなく、「離婚するつもりです。今からおみくじを引くので神様のご判断をお示しください」とお伝えします。あるいは、「夫(妻)と離婚しません。婚姻関係を今年は続けます。今からおみくじを引くので神様のご判断をお示しください」とお伝えするのもいいです。


「離婚する」と神仏に伝えておみくじを引き、そのあともう一度参拝して今度は「離婚しない」と神仏に伝えて再度おみくじを引く、なんてやり方もあります。え? そんなことして、「どっちも吉だったらどうしたらいい?」ですか。どっちでも良い感じになるってことじゃないでしょうか。


ちなみに明智光秀さんは本能寺の変の直前に京都の愛宕神社でおみくじを引いたら凶が3回出たとか。吉が出るまでおみくじを引き続けたのでしょう。反則です。最初の1回の結果が絶対です。そんなに迷ったのなら、「ここまで来たけど、やっぱり反乱はやめて引き返します」についても、おみくじを引けばよかったのです。


■絵馬に書いたことは「神様との約束」


Q絵馬を奉納すると、参拝するだけより効果があるのでしょうか?

絵馬は馬を奉納する代わりにできたものです。馬をもらっても、お世話の手間はかかるし、馬を飼う場所も必要ですから大変です。そこで、絵馬で代替するようになりました。


現代の絵馬は、馬の奉納と異なり、自分の願い事を書くことができます。



八木龍平『愛される人はなぜ神社に行くのか?』(講談社)

「書けば叶う」という考え方があって、自分の決意を文字にすることで、より「やるぞ!」という意欲が高まり、以前よりさらに粘り強く努力するようになるため、結果として、願いが叶う確率が高まります。


絵馬に書いたことは「神様との約束」だと思って、約束を守れるよう、精進なさってください。


あなたが神様と約束する内容と思えば、絵馬に書く内容も少し変わるでしょう。仮に「商売繁盛」と書いたら、商売繁盛のために私は力を尽くすという意味ですし、「良縁祈願」と書いたら、人と良いご縁を結ぶべく私は力を尽くすという意味です。


あなたがした誓いなので、約束を守る・守らないは自由です。力を尽くしたけど約束を守れなかったということもあるでしょうし、事情が変わって約束を守る気がなくなることもあるでしょう。全く構いません。また参拝する機会をつくって、神様に隠さず素直にご報告されてください。


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八木 龍平(やぎ・りゅうへい)
社会心理学者・神社の案内人
1975年京都市生まれ。NTTコムウェアのシステムエンジニア、富士通研究所シニアリサーチャー、北陸先端科学技術大学院大学・客員准教授、青山学院大学・非常勤講師などを歴任。リュウ博士として執筆のほか、セミナーや神社参拝ツアー等で活躍中。著書に『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』(サンマーク出版)などがある。
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(社会心理学者・神社の案内人 八木 龍平)

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