相場展望4月17日号 米国株: トランプ構想・関税で「米国に製造業を回帰」は、不可能な願い 中国株: 中国経済は先行き懸念 日本株: 海外投機筋は「米国売り」方針で、日経平均を売り、底が見えず

2025年4月17日(木)12時0分 財経新聞

■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
 1)4/14、NYダウ+312ドル高、40,524ドル
 2)4/15、NYダウ▲155ドル安、40,368ドル
 3)4/16、NYダウ▲699ドル安、39,699ドル

【前回は】相場展望4月14日号 米国株: トランプ氏、強引な高関税で「パンドラの箱を開け」⇒「米国売り」を誘引⇒90日間停止に政策変更 日本株: 「相互関税90日間停止」に惑わされない!「円高」は進行中

●2.米国株 : トランプ構想・関税で「米国に製造業回帰」は、困難な願い
 1)トランプ氏の相互関税で金利が上昇し、米国売りが進展
   ⇒ 相互関税発表してから14時間後に「関税90日間の一時停止」を発表しても、金利は下落せず。
  ・米国10年債金利の推移
    4/04  3.994%
    4/11  4.490
    4/14  4.374
    4/16  4.277

  ・長期金利は4/14に低下し・株価上昇したのは、FRBによる景気下支えのための金利低下の期待感が出てきたため。
   4/14 NYダウ +312ドル高
   急速な米国債価格の下落だったため、とりあえず一服といったところ。決して、米国債売りが止まったわけではない。

 2)トランプ氏が引き起こした「米国売り」は、簡単には終息しない
  ・4/15、NYダウ▲155ドル安、関税巡る不透明感で反落。
   4/16、NYダウ▲699ドル安、パウエルFRB議長発言を受け大幅安。
     ・関税で経済悪化は予想以上。
     ・金利引下げに慎重。
  ・ドル売りで、4/16(米国時間)に141円台までドル安・円高が進む

 3)トランプ構想は「米国に製造業を回帰させる」ことだが、不可能な願いだ
  ・米国製造業は、
   ・より安価に生産・組み立てできる国を求めて自ら海外進出した。
   ・技術開発力のある会社を求めて海外企業と協業して、強いサプライチェーン(供給網)を構築した。
   ・結果、米国の製造業従事者数は45年間で▲676万人減少した。
      1979年 1,955万人 ⇒ 2019年 1,279万人 ・・ 差引▲676万人減
    米国の労働者は、製造業からサービス業に転出した。

  ・アップルのiPhoneのケースで見ると、
   ・日本では村田製作所など40カ国の企業の部品開発力と高度部品生産力に依存し、それらの部品を、中国・ベトナム、インドで組み立て事業をして製品化している。組み立て分野でも高い技術が必要である。
   ・まして、中国では勤務時間が長く朝9時⇒夜9時へと、安い賃金と長時間労働のおかげで、低生産コストを実現している。
   ・これらの部品と組み立て生産力を、米国に回帰させられるのか?
   ・中国では台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の子会社・富士康科技集団(フォックスコン)が組み立てのため、従業員数は120万人(2012年現在)を擁している。フォックスコン以外でも組み立て事業を行っている。
   ・米国に回帰させたとしても、米国の失業率は4%に近く、労働需給はひっ迫しており、おいそれと労働者を集めることはできない。できたとしても、高水準の賃金であり、労働の需給ひっ迫でさらなる高賃金が必要となる。まして、トランプ氏は移民対策が厳しく、必要とする労働数を集めるのは厳しい。つまり、高コストが必然である。結局は、米国に回帰した企業は値上げをして価格転嫁せざるを得ない。

  ・製造の国内回帰は「米国の物価上昇(インフレ進捗)」に直結する。
   ・この値上げされた商品が、インフレに直結する。
   ・トランプ氏は、高関税政策が、米国生産品の価格競争力が増し、企業業績も高まると主張している。
   ・だが、製造業の米国回帰させても、生産コスト増の価格転嫁で、物価上昇が進展する。
   ・しかし、企業はコストアップした部分を100%価格転嫁できない。消費者(購入者)、特に低所得者層が買えないほど高価格となってしまうため、価格を十分に上げられず、値下げすることになる。また、コスト転嫁できない弱い企業の倒産を招くだけで社会不安を招く。

  ・トランプ氏の製造業の国内回帰で利益が向上するというのは論理破綻している。
   ・製造の米国内回帰を果たそうとすると、新たな課題が襲ってくる。
     ・調達コストの上昇
     ・納期の遅延
     ・部品と製品の供給が不安定化
     ・品質確保への不安
     ・雇用確保への不安
    以上の課題解決の具体策をトランプ政権は何ら明らかにしていない。関税をいくら最高税率にしても、高関税だけでは問題解決できない。高関税で世界を「恫喝」しても、製造業の米国回帰はできない。

●3.カナダ中央銀行、金利据え置き、米国関税で深刻な景気後退の可能性も(ロイター)
●4.米国3月小売売上高は前月比+1.4%増、自動車関税引上げ前に駆け込み需要(ロイター)
●5.米国半導体製造装置3社、関税強化で計▲10億ドル(約▲1,430億円)超損失か(ロイター)
 1)3社とは、アプライドマテリアルズ(AMAT)、ラムリサーチ、KLA。

●6.トランプ政権は、中国本土と香港から輸入される800ドル以下の少額貨物に関税(NNA)
 1)5/2から120%関税。
 2)1件当たりの関税は、5/2以降は100ドル、6/1からは200ドルに引上げ。

●7.米国ハーバード大学、「大学の自治侵害」として米国政権の要求を拒否(ロイター)
 1)米国政権はハーバード大学に年90億ドル(約1兆3,400億円)を補助していたが、反発に伴い▲3,200億円の補助金を減額した。
 2)米政権は、入学選考や教員の採用で多様性を止める、反ユダヤ主義の活動の学生の処分を求めていた。

●8.カナダの大学、米国からの入学申請急増、トランプ氏の補助金削減などで(ロイター)
●9.米エヌビディア、半導体の対中国輸出の規制強化で損失7,900億円の見込み(TBS)
●10.トランプ米国政権、石炭発電所47ヵ所を環境規制から免除(ロイター)
●11.「テスラを買うな」、トランプ政権に抗議、欧州で米国製品の不買拡大(毎日新聞)
●12.トランプ大統領、気に入らない報道番組に圧力、連邦通信委員会(FCC)に「懲罰」促す(CNN)
●13.米国J&Jトップが医薬品関税で供給網混乱と警告、国内増産には税制優遇を提言(ロイター)
●14.ユナイテッド航空、4〜6月期見通しが予想下回る、景気後退リスクの警告(ロイター)
●15.米国政権、半導体関税へ安全保障調査、医薬品も、国内生産促す(時事通信)
 1)半導体は、防衛装備や人工知能(AI)・電子機器・通信機器などに不可欠。
 2)トランプ大統領は「特に中国のような敵対国の人質に取られないようにする」と強調し、国内生産を促す必要性を訴えていた。

●16.米国国務省予算、トランプ政権の意向で2026年度は半減も=情報筋(ロイター)
 1)国務省の予算を▲3,000億ドル以上削減させると、約30の公館が閉鎖され、対外援助が約▲75%削減されるという。

●17.米国大統領、自動車関税の一部見直し検討、国内移転へ救済措置(ロイター)
 1)メキシコやカナダから輸入する自動車・部品に対する25%の追加関税について、トランプ政権は4/14に見直しを検討していることを明らかにした。
 2)トランプ大統領は記者団に対し、自動車メーカーが「米国内での製造に切り替えるには、少し時間が必要だ」と説明した。

●18.米国SECの人員削減などを調査へ、議会の超党派の政府監査院が方針(ロイター)
 1)証券取引委員会(SEC)の人員削減など最近の取り組みを精査する。
 2)議員は、「トランプ政権の最近の行動がSECの使命と法的義務遂行能力にどのように影響を及ぼしているのか、議会と国民が理解することが不可欠」と調査要求。
 3)SECの予算は議会が決めるが、その財源は手数料であり、納税者の金ではない。

●19.米国から欧州へ、トランプ政権の科学研究予算削減で頭脳流出(ロイター)
●20.トランプ大統領、導入予定の半導体関税措置「4/20からの週にも発表」(NHK)
 1)スマートフォンなどの電子機器への関税を巡って、中国などでiPhoneを製造しているアップルなど、大手メーカーへの影響や、米国内での製品の価格高騰を懸念する声が広がっており、トランプ大統領の判断が注目される。

■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
 1)4/14、上海総合+24高、3,262
 2)4/15、上海総合+4高、3,267
 3)4/16、上海総合+8高、3,276

●2.中国 : 中国経済は先行き懸念
 1)トランプ高関税に対する報復措置
  (1)米国からの全輸入品に対して関税率を125%に引上げ
  (2)人民元安に為替誘導し、米国関税負担を軽減
  (3)過剰生産力を背景に、ダンピングによる安値輸出攻勢で輸出確保
    ・デフレ輸出となり、世界各国から反発は必至。
    ・世界各国と貿易摩擦が激化。
  (4)米国からの輸入映画本数の削減
  (5)米国に渡航する中国人への注意喚起
  (6)レアメタル(希土類)7品目の輸出規制強化
    ・防衛、半導体、電気自動車(EV)の製造に必要で、レアメタルを武器化。
  (7)米国からの穀物輸入の停止
    ・トランプ氏の支持者が多い米国中西部の農民を通じて米政権へ攻撃。
  (8)米国ボーイング機の受領禁止
  (9)米国からのテスラ高級車輸入禁止
    ・マスク氏からトランプ氏に働きかけ期待。
  (10)EU、東南アジア(ベトナム、タイ、マレーシア、カンボジア等)と友好推進
    ・米国包囲網の構築。

 2)GDP成長率は1〜3月+5.4%ながら、先行き懸念
  ・先行き懸念の事項
   (1)トランプ関税で輸出減
     ・中国の成長エンジン4分野のなかで、唯一の輸出が落ち込む可能性。
   (2)不動産分野が不動産不況から抜け出せない
     ・不動産分野の抜本的な手術処置は先送りされ、延命措置にとどまる。
   (3)不動産価格の下落が、消費支出を冷やしている
     ・家計の貯蓄の約8割が住宅都投資が占め、貯蓄は住宅負債の返済に充当。
     ・人員削減と給与カットで消費支出は減少にあり、増える要因はない。
     ・政府の消費刺激策が出ても、金がないため政府の思惑はむなしい結果になる。
   (4)地方政府に土地売却益が出ず「インフラ投資」ができない
     ・土地の需要が弱くなり、土地価格も下落しているため、地方政府の財政は赤字転落し、投資余力が急減。

●3.中国GDP1〜3月期は前年比+5.4%、消費・生産が堅調(ロイター)
●4.中国のレアアース(希土類)7種類を輸出規制に武器化(ロイター)
 1)中国は世界のレアアースの約90%を生産している。

■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
 1)4/14、日経平均+396円高、33,982円
 2)4/15、日経平均+285円高、34,267円
 3)4/16、日経平均▲347円安、33,920円

●2.日本株:海外投機筋は「米国売り」の方針のもとで、日経平均を売っており、底が見えず
 1)売買代金が減少するなかで、日経平均は弱含む
  ・海外短期投機筋は、株価指数先物を主導して4/15〜16売り越した。
  ・売買代金・日経平均の推移
         売買金額     日経平均
    4/03  5兆9,136億円   ▲ 989円安
    4/04  6兆8,414億円   ▲ 955円安
    4/07  6兆9,893億円   ▲2,644円安
    4/09  5兆5,295億円   +2,962円高
    4/14  3兆8,791億円   + 396円高
    4/15  3兆5,147億円   + 285円高
    4/16  3兆8,316億円   ▲ 347円安

 2)「ドル売り」が止まらず、「円高」へ
  ・ドル・円相場の推移
    3/03  150.41円
    4/01  149.96
    4/16  141.88

  ・円高は日経平均の下落を示唆するが、日経平均はNYダウと比較すると、「割安感」があるため、日経平均は買われる可能性がある。ただ、基調は「円高は株売り」にあるため、慎重さが必要。

 3)海外投機筋は「米国売り」の方針のもとで、日経平均を売っており、底が見えず
  ・海外短期投機筋は、腰を据えて「ドル売り・円買い」と「日経株価先物売り」を同時並行で進めている。

  ・その根本には、トランプ政策は「米国の弱体化」をもたらすと評価した結果にある。それは、「ドルの基軸通貨」としての信認低下で、米国が揺らぎ始めていると見たからと推測する。

  ・4月に入って、トランプ氏は矢継ぎ早に高関税政策を放っている。その政策は愚かな判断である。が、その「愚かさ」を増長させているのが「二転三転する政策変更」である。相互関税の発動後、わずが14時間で「90日間停止」宣言をした。トランプ米国大統領は、その変転するさまを「柔軟性」というが、そうではないと評価する。トリプル安に見舞われて「右往左往」しているとみるのが正しい。

  ・トランプ関税は、「基軸通貨」を持つ米国の「不安定化をもたらす」ものだ。トランプ相互関税の発表を号砲として、「トリプル安」が起こって「米国売り」が進んでしまった。
   ・トリプル安とは、(1)米国債売り(2)ドル売り(3)米国株売り。とりわけ、安全資産として高く評価されていた(1)米国債売りまで及んだことは重大なことと受け止められている。

  ・基軸通貨であるドルが売られると、反対に「円高」が進展することになる。ドルの信認に傷がつくと、米国の放漫な双子の貿易・財政赤字に眼が行く。そうなれば、米国の破綻が気になり始める。

  ・そうなると「ドル安・円高」はとどまることができない。海外短期投機筋の「円買い・日経先物売り」の根拠がそこにあるなら、日本株はなかなか買えないということになる。

  ・トランプ大統領は、マスク氏を使って米国情報部門に大ナタを振るって削減した。情報部門は米国大統領の「眼」である。トランプ氏は「視力を低下させた大統領」に自ら陥れてしまった。米国の流浪は始まったばかりである。

  ・日本の政治家を見ると、日本株も強制的にお付き合いさせられることになりそうだ。日本株の売買額の低調な原因がそこにあるなら、手を出しにくい状況になる。

●3.JR東海の協力での「テキサス新幹線」、トランプ政権が補助金を撤回(TBS)
 1)「費用拡大で非現実的」との判断。

●4.ホンダ、シビックHVの国内生産を米国に移管へ、トランプ関税に対応(ロイター)
●5.エーザイの認知生薬レカネマブ、EUが「厳しい」条件付きで承認(ロイター)
●6.日銀が保有する国債とETF、4/11時点で▲2兆円の評価損=上條・審議役(ロイター)
 1)国債の評価損▲27兆円、上場投資信託(ETF)含み益+25兆円で差引▲2兆円の損。

●7.シカゴ投機筋の円買い越しは過去最高、逆回転遠のく=FXストラテジー(moneyworld)
●8.スーパーのコメ平均価格5キロ、4,214円、14週連続の値上がり、前年比で2倍(NHK)
●9.日本の総人口▲89万人減と過去最大、14年連続減、2024年10月の人口推計(共同通信)
 1)日本人のみの人口は、1億2,029万人。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
 ・2801 キッコーマン    業績堅調
 ・4301 アミューズ     業績好調
 ・4502 武田薬品      業績好調

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