相場展望4月24日号 米国株: トランプ関税の被害国1位は、なんと「米国」、中国は2位 中国や世界各国は、二転三転するトランプ氏の足元を見て対抗 日本株: 日経平均は米国株供に上昇しているが、足元の悪化は変わらず トランプ氏の日本への口撃スタンスは強まりこそあれ、弱まらず
2025年4月24日(木)16時33分 財経新聞
●1.NYダウの推移
1)4/21、NYダウ▲971ドル安、38,170ドル
2)4/22、NYダウ+1,016ドル高、39,186ドル
3)4/23、NYダウ+419ドル高、39,606ドル
【前回は】相場展望4月21日号 米国株: トランプ氏が大統領就任以降、NYダウは今なお下落途上 (1)関税で世界貿易と経済に次ぎ、(2)金融(3)司法も不安定化 日本株: 3月期決算発表シーズンイン、関税に影響されない分野に注目
●2.米国株:トランプ関税の被害国1位は、なんと「米国」、中国は2位 中国はじめ世界各国は、二転三転するトランプ氏の足元を見て対抗
1)トランプ関税の最大の被害国は、なんと「米国」である
・世界の成長率は、トランプ関税の影響を受け下方修正=IMF(国際通貨基金)
2025年 2026年 (ロイター)
1月時点 4月時点 下落幅 1月時点 4月時点 下落幅
米国 +2.7% +1.8% ▲0.9% +2.1% +1.7% ▲0.4%
中国 +4.6% +4.0% ▲0.6% +4.5% +4.0% ▲0.5%
EU圏 +1.0% +0.8% ▲0.2% +1.2% +1.0% ▲0.2%
日本 +1.1% +0.6% ▲0.5% +0.8% +0.6% ▲0.2%
世界 +3.3% +2.8% ▲0.5% +3.3% +3.0% ▲0.3%
・トランプ関税のマイナス影響1位は米国であり、2位は中国となっている。このIMF予測の結果は意外であった。
・米国は、関税がブーメランとなって物価上昇に見舞われ、米国経済が後退するとして、トランプ関税の最大の被害国になるとIMFは予測した。
・トランプ米国大統領は、自身の政策が米国の成長を蝕んでしまうようである。
2)パウエルFRB議長へのトランプ圧力で「金融ショック」が再浮上する懸念が増大
・ニクソン大統領の「政治的圧力にFRB議長が屈した」とき、深刻なスタグフレーション(物価高&景気後退)に見舞われたことがあった。
・トランプ関税で、特に中国との貿易戦争で米国は物価高や物不足に見舞われる可能性がある。カナダ、メキシコ、日本、韓国などへの高関税を課すことが追い打ちをかける。加えて、米国債は下落(利回りは上昇)、米国株が下落、ドル安が進展する可能性が増す。つまり、投資家の「米国離れ」が進む。
・結果、財政の赤字&政府財政の赤字という「双子の巨大赤字」の穴埋めをしてきた「投資家の資金」が流入しなくなるため「米国の破綻」が身近になる。
・1970年代にニクソン大統領が犯した失敗を、大きく上回る失敗をトランプ米国大統領は起こそうとしている。
・トランプ大統領のパウエルFRB議長の「解任劇」は、それだけでは済まない事態の悪化拡大に直結している。「米国ファースト」ではなく「米国ワースト・ファースト」と言われかねない。
3)トランプ氏のFRBへの圧力は悪手
・トランプ氏は自身のSNSへの投稿で、
・「金利が自身の想定通りに低下すれば、インフレは事実上存在しない」としたうえで、パウエルFRB議長に対して「今すぐ金利を引下げなければ経済は減速する可能性がある」と非難を繰り返した。
・つまるところ、「金利を即時に引下げなければ、米国経済は景気後退する」として、パウエルFRB議長に対して「早期の利下げを改めて要求」した。
・トランプ氏の言い分への疑問
・トランプ氏は「エネルギーや食料品は大幅に下落し、ほとんどの物価も下落傾向にある」と主張したが、本当か?トランプ関税が巻き起こす高インフレの波はまもなく襲ってくる。ニューヨークで中国からの輸入センベイはすでに+40%値上がりした。今まで1袋 4.99ドル⇒現在6.99ドル
・高関税で物価が上昇する本番は目の前に来ているのに、なぜ利下げができるのか。米国は中国から安価な食料品を大量に輸入しており、低所得層にとって必需品となっている。その中国からの輸入品にトランプ関税145%を掛けられ、高価となった品々が輸入され、米国民の生活に出回るのである。
・ウォルマートとターゲットの2社の輸入品の半分以上が中国製が占める。ホームデポとロウズも中国から輸入している。中国以外の国からの代替品輸入が取って代わるのも時間がかかる。インフレ(物価上昇)は待ったなしである。そういったこの時期に「利下げ要求」するのはナンセンスで、トランプ都合であろう。
・むしろ、1/20大統領就任以降のトランプ政策がまづかったために生じた、米国景気後退を糊塗するための「利下げ要求」なら理解できる。
4)FRBによる高金利政策で、インフレも収まりつつあった米国経済
・ところが、トランプ高関税で高インフレに再加速する可能性が大。
5)トランプ2期政権が引き起こした悪夢
・マスク氏を筆頭にした政府効率化省(DOGE)による
・大量の政府職員の解雇
・政府支出の削減
などで、消費支出が削減したため起きたために起きた、米国景気後退である。
・トランプ関税が引き起こした「米国売り」が勃発した。
・輸入物価高騰による米国の高インフレ
・米国経済と世界経済の悪化
・需要減の見通しで原油価格は4/21、大幅安
・「米国売り」が加速
・米国の国債売りで、長期金利が上昇
・ドル売り
・米国株安
・トランプ氏のFRB議長への利下げ要求で4/21、NYダウは一時▲1,300ドル超下落した。
6)トランプ・ショックへ、富裕層の身構えと脱米国加速中
・米国主要企業CEOによる自社株売りが1〜3月に急増。
・米国の頭脳である科学者などが、欧州へ脱出を強めている。
・特にフランスは積極的に受け入れを活発化。
・米国富裕層マネーが脱米国で、スイス銀行などへ流出。
・米国を嫌って世界の観光客が3月から大幅減少。
・米国の観光収入は米国GDPの2.5%を占め、雇用者数は1,500万人。このため、観光収入の減少が米国経済に与えるマイナス効果も大きい。
7)トランプ氏の「取引(ディール)」は、ヤクザの喧嘩レベル
・トランプ氏の「取引」はフロリダの邸宅取得案件に凝縮されている。
・トランプ氏はフロリダのパームビーチに別荘を持つことを望み、物件を探していた。そして、2,000万ドルで売りに出されたこともあるマー・ア・ラゴを1,500万ドルで購入することを持ち掛けたが、拒否された。トランプは反発し、「売らなければマー・ア・ラゴのフロリダ湾の眺望を阻止するため海岸沿いに長い建物を建てる。そうなれば価値は大幅に低くなる」と脅した。1985年12月にトランプが提示した800万ドルの購入額を受け入れさせた。
・トランプ氏は「取引」つまり「駆け引き」で決めることを好む。それは市場価格の上限と下限の間で決める、ということではない。相場観ではなく、彼の言う「取引」は、あくまで「駆け引き」がすべてなのだ。
・ヤクザの取引のように、先ずは「相手の顔を強烈にビンタ」して、相手に脳震盪起こして「ひるむ」のを見てから次の手を出す。相手が手強そうだと見れば、早々に妥協する。相手が弱そうだと見れば、さらに突っ込み優位な立場を形成する。
・強いと見た中国には、最初に関税を145%まで上げて大きなビンタを食らわした。中国も報復措置を繰り出して125%まで報復関税を引上げた。その中国がこれ以上の報復を止めると言い出した。喧嘩の応酬から手を引いた中国。その間、中国は世界各国に声をかけ、仲間づくりを行った。
・EU、東南アジア(ベトナム、タイ、マレーシア、カンボジア等)と友好推進をするなど、米国包囲網の構築して反撃の機会を狙ってきた。
・日本の石破首相にも親書を送り「保護主義に抵抗することの重要性」を訴ええるなど、攻めに転じてきている。
・米国は世界各国に高関税で喧嘩を売っており、仲間が少なくなった。取引の場から中国が降りると、米国は中国の出方をうかがってきた。トランプ氏は「対中国関税の『大幅引下げ』を示唆」して「取引の継続」を誘ってきた。中国が優位にたった瞬間である。今後、米国は中国と「取引」を継続するために、バーを下げてすり寄ってくる。中国はそれを待っていたのだ。中国には4,000年の歴史があるが、米国には200年しかない。「喧嘩(取引)」の仕方は中国の方が厚みがある。
●3.カナダ製自動車への関税25%を引上げる可能性について、トランプ氏が言及 (ロイター)
●4.米国財務長官、米国・中国対立が長く続かない見方(読売新聞)
1)トランプ氏「交渉で強硬な態度を取り続けない」と語る。
●5.米国、英国に自動車関税10%⇒2.5%に引下げ要求へ=WSJ(ロイター)
●6.関税によるインフレを長期化させないのがFRBの債務=ミネアポリス連銀総裁(ブルームバーグ)
●7.米国・中国対立の軟化に期待で4/22、NYダウは+1,016ドル高(時事通信)
1)ベンセント米国財務長官が非公開の会合で、貿易戦争を巡る米国・中国の緊張関係が近く和らぐとの認識を示したとの報道を手掛かりに、ハイテク株などに買いが集まった。
●8.トランプ氏は4/22、米国FRB議長を「解任せず」、改めて利下げ要求(時事通信)
●9.米国テスラ、1〜3月期決算は▲71%減益、マスク氏への反発で不買響く(時事通信)
●10.ハーバード大学、助成金凍結などで圧力強めるトランプ政権を憲法違反で提訴(日テレ)
●11.トランプ氏、早期利下げを再要求、米国経済減速の可能性高いと警告(ロイター)
●12.米国チャイナタウンをトランプ関税が直撃、中国製品軒並み値上がり(ロイター)
●13.米国連邦地裁、消費者金融保護局(CFPB)の大量解雇を差し止め(ロイター)
1)CFPBは4/17、人員全体の90%に相当する1,400〜1,500人の職員を解雇した。
2)解雇の条件を設定するように求めた裁判所の命令に、トランプ政権が違反したことに強い懸念を表明した。
●14.トランプ大統領の支持率が56%⇒42%に急落、就任から80日で歴代最低を記録(ロイター)
1)オバマ、バイデン政権との初期比較でも最下位。
2)否定的評価は52%にも達した。
3)トランプ政権の関税政策により(1)株価が急落し、(2)経済回復に対する有権者の信頼が失われたことを示唆した。
●15.ボーイングの中国納入予定機、米国生産拠点に4/19戻る、トランプ関税影響か(ロイター)
■II.中国株式市場
j.
1.上海総合指数の推移
1)4/21、上海総合+14高、3,291
2)4/22、上海総合+8高、3,299
3)4/23、上海総合▲3安、3,296
●2.米国が対中国関税を50〜65%で検討=報道(読売新聞)
1)トランプ大統領は、中国の追加関税に「累計145%には達しない、大幅に下がるだろう」と述べていた。
●3.ベトナム、違法な迂回輸出の取り締まり強化、米国の対中国批判を意識(NHK)
●4.米国通商当局、東南アジア経由の中国太陽電池に最高3,500%の高関税を課す(ロイター)
1)米国の業界団体は、中国の太陽光パネルメーカーが不当な補助金を得て製造コスト以下の価格で東南アジア諸国から米国に製品を輸出していると訴えていた。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)4/21、日経平均▲450円安、34,279円
2)4/22、日経平均▲59円安、34,220円
3)4/23、日経平均+648円高、34,868円
●2.日本株:日経平均は米国株に追随して上昇しているが、足元の悪化は変わらず トランプ氏の日本への口撃スタンスは強まりこそあれ、弱まっていない
1)円相場は4/21、パウエルFRB議長の「解任」リスクを警戒し、ドル売り・円買い
・円相場の推移
4/17 142.67円/ドル
4/22 140.36 :一時139円台後半まで円高
2)円相場: 日本・米国との金利差が拡大も円安にならず、鎖がほどけ、円高が進展
トランプ氏の「FRB議長の解任否定」「中国への関税高すぎ」で円安へ
・トランプ氏によるFRBへの金利引下げ圧力が、投資家のドル離れを呼んで米国債の売りが加速し「ドル安・円高」が進展している。日本・米国の金利差で為替が説明できなくなっているほど、米国売りが進んでいる。
・その後のトランプ氏は発言を訂正し、(1)FRB議長解任否定(2)中国関税過ぎと述べ円相場は4/23 143.45円(米国時間)まで円安に反転した。米国株も反転し急騰した。
3)日本もトランプ関税の被害が大きい国である
・日本の成長率は、トランプ関税の影響を受け下方修正=IMF(国際通貨基金)T
2025年 2026年 (ロイター)
1月時点 4月時点 下落幅 1月時点 4月時点 下落幅
米国 +2.7% +1.8% ▲0.9% +2.1% +1.7% ▲0.4%
中国 +4.6% +4.0% ▲0.6% +4.5% +4.0% ▲0.5%
日本 +1.1% +0.6% ▲0.5% +0.8% +0.6% ▲0.2%
世界 +3.3% +2.8% ▲0.5% +3.3% +3.0% ▲0.3%
・日本も、輸出への依存が大きいため、トランプ関税の被害が思ったより大きい。
4)日経平均はトランプ氏の軟化発言で株高となった米国株に追従してるが、注意
・トランプ氏が軟化したのは(1)FRB議長解任否定(2)中国関税引下げだけである。
・日本に対する高関税の引下げについて一言も述べていない。
・自動車関税25%
・鉄鋼・アルミ関税25%
・相互関税24%(ただし、基本関税に上乗せ関税14%は他国と同じ90日間の一時停止)
・つまり、日本株は、米国株の急騰の要因となった恩恵は受けていないにも関わらず株価上昇している。ここに日経平均の弱点が潜んでいることに注目したい。
・テクニカル分析では、警戒を示唆している。
・騰落レシオ(6日)が4/23、206と高水準にある。
・ストキャスティクスも4/23、FASTが84・SLOWが82と高い。
・好材料としては今週から始まる3月期決算の発表がある。しかし、トランプ関税への読みづらさから2025年見通しは控え目な数値が予想されるため注意したい。
●3.コカ・コーラ日本、飲料の95%、コーヒーは20〜30円値上げ、10/1から(食品新聞)
●4.マツダ、希望退職者500人募集、米国関税などで事業環境が不透明に(ロイター)
●5.財務省、全国景気判断据え置き「米国政策で下振れリスクが高まる」(NHK)
●6.証券大手の野村、豪金融「マッコーリー」の米国資産運用3社を2,500億円で買収(NHK)
1)野村は、資産運用収益に占める海外割合を今の3割⇒6割に拡大するねらい。
●7.コメの店頭価格、15週連続で値上がり、5kg平均4,217円(読売新聞)
●8.1ドル139円台、円高進み7ヵ月ぶり、米国大統領がFRBに利下げ要求で(NHK)
●9.円相場4/21、140円台に突入(TBS)
1)トランプ大統領が「非関税障壁」に「為替操作」を挙げたことで円安是正要求との見方が出て円買いが進む。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・8801 三井不動産 業績好調
・9602 東宝 業績回復期待
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