オンラインカジノ強制遮断を検討、「通信の秘密」巡る問題課題…有識者会議が初会合

2025年4月23日(水)22時48分 読売新聞

初会合が行われた「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」(23日午後、東京都千代田区で)=須藤菜々子撮影

 総務省は23日、違法なオンラインカジノ利用の抑止策を検討する有識者会議の初会合を開いた。カジノサイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」の実施に向けた検討が柱になる。閲覧自体をできなくするブロッキングへの期待は高いが、実施には「通信の秘密」を巡る問題などのハードルを越える必要がある。(経済部 小林泰明、小野卓哉)

 初会合で、会議メンバーの鎮目征樹しずめもとき・学習院大教授は「オンラインカジノという大変な病理に対処するため、ブロッキングは重要な選択肢たり得る」と述べた。山口寿一・読売新聞グループ本社社長は「海外には賭博対策に特化した機関を設け、ブロッキングを行っている国もある。日本も対策が急務だ」と強調した。

 有識者会議は、ブロッキングに関する新たな制度整備も含めて検討を進める。抑止手段としては最も強力だが、実現は容易ではない。最大の課題は、憲法などが定める通信の秘密との関係だ。ブロッキングを実施するには通信会社が全ての利用者の通信先を確認する必要があるが、これは通信の秘密に抵触する行為になるためだ。

 政府は2018年、漫画を無断掲載する「漫画村」など海賊版サイトのブロッキングを目指して制度整備を検討したが、通信の秘密を巡って反対の声が上がり、頓挫した。国内で唯一、実施されている児童ポルノサイトのブロッキングは、通信の秘密への影響も十分に考慮した上で、児童の重大な被害を防ぐため、例外的に実施している。

 会議は今夏にも中間の論点整理をまとめる。座長の曽我部真裕・京大教授は「ブロッキングに関する議論としては児童ポルノ、海賊版に続く第3ラウンドになる。これまでの蓄積の上で議論ができる」と意欲を見せた。

経験者6割が依存症自覚

 オンラインカジノは依存症リスクが高く、一刻も早い対策が急がれるが、主なサイトの拠点は海外にあり、運営者の摘発は困難だ。(社会部 村上喬亮)

 有識者会議の初会合で警察庁が示した資料によると、オンラインカジノの経験者は約337万人と推計される。経験者の約6割は、依存症の自覚があった。

 ギャンブル依存症の治療を行う国立病院機構「久里浜医療センター」の松崎尊信・精神科診療部長によると、オンラインで賭博をする人は若年層の割合が高く、1回当たりの賭け金や借金は、競馬場に通う依存者らより多い傾向にある。

 松崎氏は「ゲーム感覚でのめり込み、依存症になるまでの時間が速い。スマートフォンから簡単にアクセスできるため、生活から切り離して治療するのも難しい」と指摘する。

 警察庁の分析では、日本語に対応する上位40サイトはいずれも、カジノの合法国・地域に拠点が置かれていた。現地では処罰対象とならず、捜査協力を得るのは困難だ。

 国内から海外サイトへの賭け金総額は年1兆2423億円と推計され、警察は、賭け金の決済を代行して手数料を得ている「決済代行業者」の摘発を強化している。「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)が参入し、カジノを舞台に資金洗浄(マネーロンダリング)をしている疑いもある。

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