35歳以降、5歳ごとに求人数が半減する現実…中途採用している企業が決して明かさない「45歳の断崖絶壁」とは

2025年4月25日(金)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SunnyVMD

転職するベストなタイミングはあるのか。ミドル世代専門転職コンサルタントの黒田真行さんは「ホワイトカラーは、35歳を過ぎると転職のハードルが一気に高くなり始める。その後、5歳ごとに求人数は半減すると考えたほうがいい」という——。

※本稿は、黒田真行『いつでも会社を辞められる自分になる』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/SunnyVMD
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■35歳から5歳ごとに「求人数は半減」する


今の労働市場は、これまで経験したことのない状況に直面していること、特にホワイトカラーの労働環境が劇的に変わりつつあると言いましたが、まず、知っておいてほしいことは、「ホワイトカラーは、35歳を過ぎると転職のハードルが一気に高くなり始める」ということです。


端的に言うと、どの年齢層でも転職を考える人の数は大きく変わらないのに、35歳を超えると、求人の数だけが一方的に減っていくことがその要因となっています。


35歳から40歳、40歳から45歳、45歳から50歳、50歳から55歳、55歳から60歳と、5歳ごとに求人数は半減すると考えたほうがいいでしょう。


一方で転職希望者数においては5歳ごとの変化はさほど大きくありません。その結果、35歳以降は5歳ごとに倍々ゲームで転職の難易度が上がっていく、ということになります。


私は多くのミドルの転職希望者にお会いしてきましたが、この事実を知っている人は多くありません。たとえば35歳の時に一度転職したことがある人は、45歳になっても、10年前と同じ意識で転職市場に出てきてしまったりすることが頻発するのです。


すると、書類選考を通過しない、とか、面接までたどりつけた場合でも相手の反応が芳しくなく「あれ、前のときと違うぞ」「内定獲得にまで進むことができない」などということになりかねない。


■キャリアを見直すべきは「37歳」「42歳」「47歳」


一方で、ごく一部の人が経験した成功体験に基づくポジティブな情報だけは独り歩きしています。「50歳でこんな夢のような転職ができました」といったニュースに「自分もそうなるかもしれない」と勘違いしてしまうのです。


しかし、もちろん実際にはそんなことはありません。40〜50代の転職はかなりの狭き門。その絶対的事実を冷静に認識しておく必要があります。


今は年齢や性別を条件にした求人募集は法律上禁止されています。しかし、年齢制限ができなくなっているからといって、35歳以上の総合職が必ずしも若手や一定分野のスペシャリストと同じような扱いで採用されるわけではありません。採用を決めるのは、あくまで求人を出している企業です。


一方、日本では労働力人口の減少が全体的に凄まじい速さで進行しています。実際に人手不足のニュースが流れる頻度は増しており、「これだけ人手不足なのだから、今後も転職は大丈夫だろう」などと思ってしまう人も増えています。


スペシャリスト採用などの流れで、かつて言われた「35歳転職限界説」は確かに崩れていますが、だからといって35歳以上の中高年が採用されやすくなっているというわけではありません。


■「35歳の壁」の次は「45歳の断崖絶壁」が訪れる


多くの企業では、年齢が上がれば上がるほど役職が上がり、人数が減ってくるというピラミッド構造があります。社長を頂点に役員、事業部長から部長、と人数が増え、一番下が一般社員です。中途採用で求められることが多いのは、この現場の第一線のプレイヤーです。


このプレイヤーを束ねるマネジャーが多くの場合、30代後半です。だから、一般社員として採用するなら35歳くらいまでがいい、という企業が大半を占めます。したがって、管理職ではなく、プレイヤーとして転職する場合には、35歳は一つの壁になります。これが「35歳の壁」です。


そして、40歳を超えてくると、「35歳の壁」以上のさらに激しい断崖、断層と言ってもいい壁が出現します。35歳から40歳にかけて、求人が半減するからです。そして45歳以降、崖の角度はさらに厳しくなります。「45歳の断崖絶壁」です。


そして45歳で管理職になっているように見えても実質的には部下を持たず、担当部長という名のプレイヤーとして仕事をしている人も少なくありません。45歳以上になると、ポジションが少ないだけではなく、この層自体を減らしたい、リストラしたいという流れを持つ企業が多いのです。


写真=iStock.com/paprikaworks
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■若手と違い、長期戦になりやすい


ただでさえ、年齢が上がれば、たとえ管理職でもポジションは減っていくので、転職の難易度は上がっていきますが、45歳以上になると、さらにそこにリストラの引き算の論理が働いてきて、転職はますます難しくなるのです。これが45歳の断崖絶壁、というわけです。


とはいえ、労働力人口の減少によって、40代・50代での転職成功者は徐々に増えてはいますが、組織の年齢ピラミッドは基本的に変わっていないので、この傾向は根本的に大きく変化していません。


40歳、45歳、そしてその次は50歳と5歳ごとに転職の難易度が上がることを考えると、それらの節目の遅くとも3年前、つまり、37歳、42歳、47歳というタイミングから準備を始めておくことをお勧めします。ミドルの転職は長期戦となりやすく、書類選考で落とされるケースも多いです。余裕を持って自分の市場価値や相場観を磨いていく時間が必要なのです。


■30代を襲う“JTCの病”の正体


とりわけ危険な環境は、こうした現実や自分のキャリアについてしっかり意識したり、考えたりせず「いつの間にか35歳を迎えてしまっていた」というパターンです。



黒田真行『いつでも会社を辞められる自分になる』(サンマーク出版)

会社での生活にいったん慣れてしまって、周囲からも必要とされるようになると、その日常は、手放せなくなるほど居心地が良いものになっていきます。冷静に考えれば、間違いなく自分の会社がかかわるビジネスが斜陽に向かっていることが頭ではわかっていても、その場にどっぷりと身を置いてしまえば、ずっとそこに浸っていたいという気持ちが生まれてしまいがちです。


ましてや、会社や業界によっては、かつて華やかな時代があり、その栄光を知っている先輩たちに可愛がられていたりすると、すっかりそちら側のバイアスに引っ張られてしまう。自分は斜陽に向かっていることに気づいているのに、その意識は日々の仕事の中でどんどん薄らいでいく。


実際、JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーの略)と呼ばれる日本の伝統的な企業が属するような業界の中には、今なおインターネットの世界は怪しい、などと思っている人たちすらもいるのです。「そんな怪しい世界の企業に移っていくなんて、未来が心配ではないのか」。そんなイメージを若いうちから植え付けられていたりする。


■“先輩”は逃げ切れるが、自分はどうか?


とある大手新聞社に勤める30代前半の記者の方から転職相談を受けた時の話です。その人のスキルが活かせる転職先の候補企業として、あるインターネット企業の名前を挙げてみたところ、「インターネットの世界って怪しいですよね」と真顔で言われて驚いたことがあります。


ご本人は手にスマホを持って、ChatGPTで情報を検索し、食べログを使ってランチに行く店を探し、二次元コードで決済をしながらアマゾンでしょっちゅう買い物をしているのにもかかわらず、イメージだけは40代や50代の職場の先輩たちの意見に同調してしまっている。


その人に影響を与えた先輩方はなんとか逃げ切れるのかもしれません。しかし、いま30代前半の人はあと20年、30年と同じ業界で過ごして逃げ切るのは簡単なことではないでしょう。そのことに35歳までに気づけなければ、転職の難易度は一気に高まってしまうのです。


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黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役
1965年兵庫県生まれ、関西大学法学部卒業。1988年、リクルート入社。以降、30年以上転職サービスの企画・開発の業務に関わり、「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」HRプラットフォーム事業部部長、「リクルートメディカルキャリア」取締役などを歴任。2014年、リクルートを退職し、ミドル・シニア世代に特化した転職支援と、企業向け採用支援を手掛けるルーセントドアーズを設立。30年以上にわたって「人と仕事」が出会う転職市場に関わり続け、独立後は特に数多くのミドル世代のキャリア相談を受けている。著書に『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)、『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)など。
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(転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役 黒田 真行)

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